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港町異聞録 ―幼馴染と怪異に振り回される日々―  作者: あったくん
第三章 『繰り返される日々』
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孤軍奮闘

「どうした、結城?急に立ち止まって。」


 呉羽の言葉に、結城は背筋に走る悪寒を振り払うように、必死に言葉を継いだ。

「呉羽、聞いてくれ。今、時間が巻き戻った。さっきからずっと同じことの繰り返しなんだ!」


 結城の尋常ではない様子に、呉羽は眉をひそめた。

「結城、突然何を言ってるんだ?」


 その横で、神楽が心配そうな顔で結城を覗き込む。

「…結城、大丈夫…?…顔色が悪い…」


 結城は神楽の優しい声に安堵を覚えつつも、次の瞬間には絶望を覚えた。彼女も、この異常に気づいていない。


 次の瞬間、BGMが、一瞬ノイズを挟んで途切れた。結城の目の前で、すべての時間が一瞬で元に戻る。光景が、音が、人々の動きが、巻き戻されたかのようにリセットされる。


「結城くん!これ、絶対可愛いよ!」


 桜が同じ笑顔で、同じシェラカップを手に取る。その無邪気な声と表情に、結城は吐き気がするほどの違和感を覚えた。


(クソッ!やっぱりループしてる!どうすれば…!もう一度説明するか?)


 結城は焦燥感を募らせ、再び呉羽に同じ言葉を繰り返す。

「呉羽、頼む、俺の話を聞いてくれ!時間が、また巻き戻ったんだ!」


 しかし、呉羽の反応は変わらない。彼はただ、結城を値踏みするような視線を向けるだけだ。

「だから、何を言ってるんだ?さっきから同じことばかり…」


 呉羽は困惑の色を濃くしていく。その隣では、桜と神楽が不安げに顔を見合わせている。自分だけがこの異常な世界に閉じ込められている。結城は、この孤独な状況を全身で受け止めるしかなかった。


(誰もループのことに気付いていない…俺一人でなんとかするしかないのか…)


 三度目のループが始まった。


「結城くん!これ、絶対可愛いよ!」


 また同じセリフ。桜の笑顔が、もはや結城の精神を削る凶器のように感じられた。


(もう、説明はいい…どうせ聞いてもらえない…!)


 結城は呉羽たちに背を向け、商店街の出口に向かって走り出した。

「おい、どこ行くんだ!」


 結城の後ろから呉羽の声が聞こえたが、振り返る余裕はない。早くこの場所から抜け出さなければ、永遠に同じ時間が繰り返される。

 しかし、商店街の出口に差し掛かった瞬間、足元から強烈な違和感が湧き上がる。まるで空間が歪むかのように視界が揺らぎ、次の瞬間、結城は再び元の位置に戻っていた。


 四度目のループ。五度目のループ。六度目のループ。


 ループを繰り返すたび、結城は様々な試みを試した。商店街の中心にある時計を動かそうとしたり、八百屋の店主の呼びかけに違う返事をしようとしたり。しかし、どんな行動も、ループの終わりにはすべて元の状態に戻ってしまった。このループは、自分たちをこの場所に閉じ込めるための、巧妙な檻なのだ。


 そして、十度目のループ。


「結城くん!これ、絶対可愛いよ!」


 同じ声、同じ笑顔。結城は、同じ時間が繰り返される絶望と疲労を感じながら、仲間たちの反応に注目する。


(商店街の店主や通行人は完全に同じ動きを繰り返すが、仲間たちの行動にはごくわずかなズレが生じている……)


 特に、呉羽は結城の不可解な言動に何か法則を見出そうとしているようだった。


 結城は、巻き戻る世界に抗うように、わずかな未来を必死に手繰り寄せていった。

お付き合いいただきありがとうございました!


この怪異譚が少しでも心に残ったなら、ブックマークや評価ボタンをポチッと押していただけると嬉しいです。


皆さんの応援が、主人公たちの物語を動かす原動力になります。


次回もまた、港町でお会いしましょう。

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