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港町異聞録 ―幼馴染と怪異に振り回される日々―  作者: あったくん
第一章 『日常から非日常へ』
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ショッピングモール

 角鹿つぬがでの生活は、思っていたよりも早く結城の日常に溶け込んでいった。転校から数日が経ち、新しいクラスにも少しずつ慣れ、担任の先生やクラスメイトとの会話も増えてきた。放課後は、すぐに部活へと向かう幼馴染の桜や神楽、呉羽とは別行動になることが多かったが、それでも休みの時間や昼食は共に過ごし、積もる話に花を咲かせた。


 ある土曜日の朝、結城はベッドでゴロゴロしながらスマホを眺めていると、メッセージ着信を知らせる通知音が鳴った。画面を見ると「桜」。

 メッセージを開く。桜からのお誘いだった。

「結城ー、今日、時間ある? アクプラ行かない? 新しいカフェができたんだよ!」

 アクプラことアークプラザは、リニア開通に合わせて拡張された大型ショッピングモールだ。昔の結城が知っている小さな商店街の面影はほとんどない。すぐに「行く!」と返信し、結城は少し出かける気分になった。


 家からさほど遠くない場所にあるアクプラへ、二人は歩いて向かう。巨大なガラス張りの建物が目の前にそびえ立つ。モダンで洗練されたデザインは、地方都市のショッピングモールというよりも、都会の複合施設のようだ。

 待ち合わせ場所に着くと、すでに桜が笑顔で手を振っていた。

「結城、久しぶりのアクプラだね! 結構変わったでしょ?」

「ああ、全然違うな。前はこんなに大きくなかっただろ?」

 二人は連れ立ってアクプラの中へ。広々としたフロアには、アパレルショップや雑貨店、飲食店などがずらりと並び、多くの家族連れや若者で賑わっていた。

 桜がSNSで話題になっていたというカフェを見つけ、二人はそこで休憩することにした。窓から光が差し込む明るい空間で、結城はアイスコーヒーを、桜は可愛らしいラテアートが施されたアイスカフェラテを注文した。


 他愛ない会話で盛り上がっていた時、桜が少し顔を近づけて、ひそひそと話しかけてきた。

「そういえばね、結城。最近、ちょっと変な噂があってね…」

 桜はそう言うと、持っていたスマホを取り出し、画面を結城の方に向けた。

「え? 何これ…?」

 結城が画面を覗き込むと、そこに写っていたのは、明らかに不鮮明な、しかし人の形をした「影」のようなものだった。ぼやけていて、顔や手足は判別できないが、確かに何かを写し取っている。まるで、昔見た心霊写真のようだ。

「心霊写真みたいじゃないか?」結城は思わずそう口にした。

「でしょ? 私も初めて見た時びっくりしたんだ。この画像、最近、角鹿の学生の間で結構出回ってるんだって」

 桜は続けて説明した。

「なんかね、アクプラの周辺で撮られたとか、夜中に変なものが映るとか、色々な噂が飛び交ってて…。でも、どこで撮られたのかも、本当にいるのかも、誰も知らないんだけど」

 桜は少し不安そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。結城は画像をまじまじと見つめた。ただの悪質なイタズラだろうか? しかし、その影には妙な生々しさがあった。

「ふうん……」

 結城は曖昧に返事をしながらも、その不気味な写真が頭の片隅に引っかかった。しかし、それ以上にアクプラでのショッピングは楽しく、いつしか影のことは意識の外へと追いやられていた。二人はその後も店を見て回り、あれこれと話に花を咲かせ、ともに充実した時間を過ごした。


 桜と別れ、夕暮れの街をひとり歩く。空はオレンジ色に染まり、潮風がひんやりと頬を撫でる。

 賑やかな一日を振り返り、新しい環境での生活が充実していることに満足感を覚える結城。ふと、桜が見せたスマホの画面に写っていた「影」のようなものが、脳裏をよぎった。それはまるで、暗がりの道の片隅からこちらを見ているかのような、不気味な存在感を放っていた。

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