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港町異聞録 ―幼馴染と怪異に振り回される日々―  作者: あったくん
第三章 『繰り返される日々』
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特対課 I

「せんぱ〜い、ちょっと待ってくださいよ〜」


 大きなリュックを背負った井口いのくち 大輔だいすけは、クールな表情を崩さない長身の女性、五幡いつはた せんの後を慌てて追いかける。北陸リニアの終点、角鹿駅のホームに降り立った二人は、内閣情報調査室の「特異現象対策課(通称・特対課)」の調査官だ。特対課は、民間では対応困難な超常・特異現象の監視と解析を任務とする国家機関で、今回はワタツミとアビスの事件の現地調査に派遣されていた。


 情けない声で叫ぶ部下を一瞥もせず、五幡は淡々と改札へ向かう。まるで夏の熱気さえ無関係のように、彼女の足取りは静かで一定だった。


「井口、走るな。任務中は落ち着いて行動しろ」


「いや、分かってますって。でも、五幡さんの歩くペースが速すぎるんすよ。こっちは機材もあるんすから…」


 息を切らし、汗で額を濡らしながら訴える井口に、五幡は変わらぬ落ち着きで答える。


「無駄な動作は、効率を低下させるだけだ」


 駅前の通りに出ると、真夏の熱気が肌を刺すように襲ってきた。井口はリュックを前に抱え込み、額の汗を拭きながら、タブレット端末を取り出して地図アプリを確認する。

 一方の五幡は、周囲の人や建物を観察し、歩みを止めることも焦ることもない。


「えっと、松原っすね。しかし広いな…どこから調査したらいいんすかね…」


 井口が地図を眺めながら頭を悩ませていると、ちょうどコンビニから出てきた一人の少年と鉢合わせる。


「あ、すみません!」


 慌てて声をかけると、少年は少し困ったように笑った。


「こちらこそ、すみません!僕たち、他所から来た者なんですけど、この御食津の松原って、どこに行けば一番効率よく回れますか?」


 少年はタブレットの画面を覗き込み、親切に道順を教えてくれた。


「ああ、松原なら、この道を真っ直ぐ行って、信号を右に曲がると、一番広い通りに出ますよ。海沿いを歩けば、全体が見渡せるはずです」


 結城の快活な声に、井口は安堵の表情を浮かべる。


「ありがとうございます!助かりました!」


「いえいえ、お気をつけて」


 少年は軽く手を挙げ、去っていく。五幡と井口は、彼に礼を言って別れると、本来の任務へと向かった。五幡は淡々と街の風景を観察し、井口はタブレットで既存の異変データをチェックし続けるのだった。

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