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港町異聞録 ―幼馴染と怪異に振り回される日々―  作者: あったくん
第三章 『繰り返される日々』
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花火

 ドォォン!


 空気を震わせる轟音とともに、夜空に巨大な光の花が咲き乱れた。赤、青、黄色、緑、瞬く間に夜の帳が色鮮やかな光の洪水に染まり、砂浜を埋め尽くした観客たちから、どよめきにも似た歓声が沸き起こる。この御食津の松原で開催される「とうろう流しと大花火大会」は、毎年およそ一万発の花火が打ち上げられる、街全体を祝福しているかのような賑わいを見せていた。


 海岸の波打ち際には、無数の色とりどりの灯籠がゆらゆらと揺らめきながら、沖へと流れていく。風に煽られる小さな炎が、水面に幻想的な光の帯を描き出し、夜の海を静かに照らしていた。


 結城たちは、波打ち際に近い砂浜にレジャーシートを広げ、夜空を見上げていた。凛のホログラムも、結城の隣で花火の光を反射させながら、はしゃいでいる。


 夜空に、金色の柳が枝垂れるような金色千輪が咲き誇り、観客からは「おおー!」というため息のような歓声が上がった。


「うわぁ、すっごいきれい!」

「…ん。…きれい」


 桜が目を輝かせてはしゃぐ。その純粋な笑顔が、結城の胸を温かくした。騒動で傷ついた街が、こんなにも早く笑顔を取り戻したことに、彼は言いようのない安堵を感じていた。


(この平和な日常を、俺は守りたい)


 花火の光に照らされた桜や神楽、呉羽の横顔を見つめながら、結城は心の中で静かに決意を新たにした。


 続けて、鮮やかな七色の光を放つ虹色牡丹が夜空を彩り、観客の視線を釘付けにする。


 突如、空から大きな火の粉が降ってきた。

 花火の燃えカスにしては不自然に大きく、熱を帯びたまま結城の顔に一直線に向かう。

 誰もが当たると確信したその瞬間――


 火の粉は、まるで何かに弾かれたかのように軌道を逸れた。

 音もなく熱を失い、近くの砂に落ちて消える。

 反射的に身を引いた観客たちは、不思議そうに顔を見合わせた。


「……あり得ないな」


 呉羽が静かに呟いた。だが、当の結城は全く気にしていない様子だ。彼は火の粉の落ちた場所を指差し、不思議そうに首を傾げた。


「運が良かったな。何にぶつかったんだろ?」


 彼の言葉に、呉羽は眉をひそめた。運が良い?いや、あれは物理法則から逸脱した、明らかに異常な現象だ。呉羽は、結城の周りで起こる不可解な出来事が、ただの偶然ではないことを確信していた。


 凛のホログラムが心配そうに揺れる。


「マスター……。今の『運がいい』って、なんだか怖いですぅ……」


 結城は、なぜそんなに心配するのか分からないと首を傾げた。

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