表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/64

残響

 凪と教主が去った後、広間には信者たちの動揺した声だけが響いていた。結城は、その隙を見逃さず、呉羽と神楽に視線で合図を送った。三人は、信者たちの間を縫うようにして駆け抜け、地下から地上へと続く階段を駆け上がった。


 呉羽の部屋へと戻った彼らは、息を整える間もなく、事態の整理を始めた。


「結城、神楽、君たちの能力は僕が考えていたより遥かに強力だ。今回の作戦が成功したのは、僕の波動を打ち込む隙を君たちが作ったからだ。僕の波動は、あの巨石の霊的波動を完全に消滅させた」


 呉羽はそう言うと、タブレットを操作し、結城と神楽を真っ直ぐに見つめた。


「…フッ、この劇的な展開、この絶望的な状況を打破した僕らの力……。これを完璧に定義せずにいられるか! 僕の魂が、僕の知識が、それを求めている!」


 呉羽はそう叫ぶと、タブレットにそれぞれの能力名を映し出した。


「結城の能力は、霊的な力を受けた瞬間、君の肉体はまるで次元の異なる法則に則っているかのように、その干渉そのものを無効化していた。それは、この世界の『ことわり』から現象を『解』き放ち、無に還す力……。故に、『理法解離リホウカイリ』と名付けよう!」


 結城は、あまりにも壮大な名前に少し引き気味で、困惑したような顔で答えた。


「お、おう……ありがとう……?」


「そして、神楽の能力は、霊的な残滓ザンシを観測する力だ。これはサイコメトリーにも近い。ただ触れただけで、その場所に刻まれた記憶や感情を読み取る第六感のようなものだ。故に、『残影観測ザンエイカンソク』と名付けよう!」


 呉羽の言葉に、神楽は静かに頷いた。それまで二人の会話を黙って聞いていた結城は、ふと、教主の声に感じた違和感を思い出していた。どこかで聞いたことがあるような、しかし、全く思い出せない。


「…呉羽。教主の声、解析できないか?」


 結城の問いに、呉羽は首を振る。


「教主の声は、特定の周波数帯を意図的に歪ませている。解析を試みたが、データが断片的で、特定には至らなかった」


 謎は深まるばかりだった。


「…教主の声、海の底から響いてくるような、大きな音だった」


 神楽が静かに口を開く。


 呉羽はタブレットの解析画面を見つめる。儀式は阻止したが、「もうすぐ成就する」という教主の言葉が引っかかっていた。


「おかしいな。儀式は機能停止したはずなのに……いや、待て」


 呉羽はハッと顔を上げ、別の解析画面を呼び出した。


「街の波動を観測していたデータだ。儀式が止まったにもかかわらず、特定の場所で波動の急上昇が観測されている。この急上昇している波動…以前に『影』の出現と同時に観測された波形と酷似している。これは、儀式の目的が達成されたことの兆候だ…!」


 呉羽は、タブレットを操作し、波動が急上昇している場所の地図を画面に映し出す。


「この場所は…アーク・プラザだ。…『影』の出現と同時に観測された波動が最も強く観測されている場所だ…!」


 結城は息をのんだ。


 結城たちの胸に、拭いきれない疑念と、聞き覚えのある声への不気味な感覚が残る。それは、彼らの戦いが、まだ何も終わっていないことを告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ