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波動

 広間の中央で、結城と男の激しい攻防が続いていた。冷徹な水の刃をかわしながら、反撃の機会を伺う。男の攻撃は勢いを増しており、結城の身体を掠めて小さな傷を負わせていく。


 結城は、男の冷徹で淀みのない攻撃の隙間を必死に探っていた。しかし、男の動きは一切の無駄がなく、反撃の糸口が見つからない。一瞬でも気を抜けば、致命的な一撃を受けるだろう。結城は、身体の全神経を研ぎ澄まし、次の動きを予測することに集中した。


「結城、今だ!」


 呉羽の合図と同時に、結城は男が放った水の刃を避けつつ、一気に間合いを詰めた。男の顔に一瞬の動揺が走る。そのわずかな隙を逃さず、結城は渾身の力を込めた一撃を腹部に叩き込んだ。


「ぐはっ!」


 男は、結城の拳の衝撃に怯んだ。その隙を狙って、呉羽が放った逆位相の波動が、男の背後にある巨石に正確にぶつかる。


 巨石から発せられていた強烈な霊的エネルギーが完全に消滅した。

 広間には、静寂が訪れていた。巨石から放たれる不気味な光は消え、信者たちは動揺し、詠唱も止まっている。


 その時、広間の奥から、深いフード付きのローブを纏った一人の人物がゆっくりと歩み出てきた。


「ご苦労であった、凪」


 その声はどこからともなく聞こえ、性別を特定できない、しかし冷たい響きを持っていた。結城は、その声に妙な違和感を覚える。そしてなぜか、どこかで聞いたことがあるような、そんな気がした。


 凪は、その人物の姿を見ると、ゆっくりと立ち上がった。


「教主…」


 凪は、結城を鋭い視線で睨みつける。


「今は退くのだ、凪」


 教主の声が再び響く。


「もうすぐ成就する。無駄な戦いは不要。全ては計画通りに運んでいる」


 凪は、不敵な笑みを浮かべると、結城に背を向けた。


 凪は、広間の奥へと消えていく。結城は、その背中を見送りながら、目深にフードを垂らした教主の姿を呆然と見つめることしかできなかった。

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