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地下

 海母教会の裏手。深夜の闇に紛れ、結城、神楽、呉羽の三人は身を潜めていた。


 呉羽がタブレットの画面を結城と神楽に見せながら、淡々と言った。


「解析の結果、波動の発生源は建物の真下で間違いない。しかし、地下への入り口に関するデータが一切取得できない」


 その言葉を聞き、結城は言葉にできない焦燥感を覚えていた。呉羽が黙ってタブレットの画面に視線を落とす中、神楽は静かに壁を見つめる。


(怖い…この力を使ったら、また何かが私の中に流れ込んでくる。でも…みんなを助けるためなら、私がやるしかない!)


 神楽は一歩前に出た。ゆっくりと壁に手を触れると、彼女の体は硬直し、頭の中に直接響く無数の声に表情が苦痛に歪んだ。


「大丈夫か!」


 結城は慌てて声をかけた。神楽はかろうじて頷き、壁から手を離した。


「大丈夫…。ここに…過去に、大勢の人が、強い思いを持って出入りした…のが視えた。」


 呉羽は扉に近づき、その構造を冷静に分析した。


「岩盤をくり抜いて作られた扉だが、動力や仕掛けは見当たらない。内部から施錠されている可能性が高い」


 呉羽の言葉を聞き、結城は神楽に視線を向けた。


「神楽、他に何か扉を開く方法は見えなかったか?」


 神楽は扉の中央にある窪みを指差した。結城がその窪みに力を込め、扉に触れると、扉に刻まれた模様が淡く光り始めた。古びた扉の隙間から、澱んだ冷気が流れ出してきた。


 結城が扉を押し開けると、中には薄暗い階段が地下へと続いていた。結城を先頭に、神楽、呉羽の順で慎重に進んでいく。


 階段を降りきると、そこは石畳の長い廊下だった。奥からは、低い唸るような声が聞こえてくる。


「何かの詠唱か…」


 呉羽が呟く。


 廊下の途中、結城は足を止めた。角の向こうから、複数の足音が近づいてくる。結城が人差し指を唇に当てて合図を送ると、三人は素早く壁に身を寄せた。足音は徐々に遠ざかり、やがて聞こえなくなった。


 安全を確認した結城が角を曲がると、目の前に巨大な石造りの広間が現れた。中央には青い光を放つ巨石があり、その周りを信者たちが囲んで詠唱している。彼らの声が、巨石から放たれる波動を増幅させているようだった。


 そして信者たちの向こうには、フードを深く被った人物が立っていた。結城は、その人物が放つ圧倒的な存在感から目を離すことが出来ずにいた。


「結城、あれを見てくれ」


 呉羽がタブレットを操作しながら言った。


「あの巨石が、超低周波の波動を発生させている発生源だ。このままでは街の怪異現象が、制御不能なレベルに達するかもしれない。この詠唱が止まれば、逆位相の波動をぶつけることで巨石の活動を一時的に停止させられる」


「どうする?」


 神楽が問いかける。結城は、即座に決断した。


「わかった。俺が信者たちを引きつける。呉羽は巨石に集中して、逆位相の波動をぶつけてくれ。神楽は呉羽の援護を頼む。何かあれば、俺がどうにかする」


 結城は、呉羽と神楽の覚悟を真っ直ぐに受け止め、力強く頷いた。


「よし。行くぞ」


 結城の言葉を合図に、三人は作戦を開始した。

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