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港町異聞録  作者: あったくん
第一章 『日常から非日常へ』
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我が家

 駅を出た結城は、うっすらと汗ばむ初夏の陽気の中、見慣れた駅前の風景に目を細めた。新しくなった駅舎の向こうには、リニア開通で活気づく観光客の姿が多く見受けられる。昔と変わらない賑わいを見せる商店街を抜け、祖父母の家までは歩いて数分。


「ここら辺は昔とぜんぜん変わってないな」


 結城の足は、迷うことなく、幼い頃から慣れ親しんだその家路をたどっていた。


 祖父母の家は、古くからの木造建築ながら手入れが行き届いており、庭には季節の花が彩りを添えている。玄関を開けると、優しい笑顔を浮かべた祖母が温かく出迎えてくれた。


「結城、おかえりなさい。長旅お疲れ様だったね」


「ただいま、ばあちゃん。じいちゃんも!」


 居間へと通されると、すでにテーブルには祖母が用意してくれたらしい、結城の好物である欧州軒のソースカツ丼が並んでいた。新聞を読んでいた祖父が顔を上げ、結城に目を向けた。


「おう、結城か。またお前と一緒に暮らせて、じいちゃんは嬉しいぞ」


「うん、俺もだよ、じいちゃん」


「おぉ!これは欧州軒のソースカツ丼!ばあちゃん、俺の好物覚えてくれてたんだ!」


 結城はそう言いながら、待ちきれない様子で箸を取った。祖父も新聞を横に置いて、結城の向かいに座る。


「相変わらず、浩介たちは忙しいんだな」


「うん、父さんと母さん、いつも仕事が忙しいから。海外でのプロジェクトがしばらく続くみたいで。俺もまだ高校入ったばっかりだし、一人でいるよりはこっちの方が安心だって」


 結城は温かい味噌汁を一口すする。急な海外赴任が決まった両親から、結城がかつて住んでいたこの角鹿で高校生活を送るよう提案されたのは、つい数週間前のことだった。一度は離れた故郷に戻ることへの戸惑いはあったが、幼少期を過ごした場所、そして何より幼馴染たちがいることを思えば、不安よりも期待の方が大きかった。

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