反撃
「波動を無効化する瞬間を狙って、怪異に突っ込め!」
呉羽の叫びに、結城は怪異へと駆け出した。背後には神楽と呉羽がいる。彼は、自分が盾となり、この窮地を切り開くという強い意志を胸に抱いていた。
怪異の触手が、再び結城たちを襲う。彼は怯まず、放たれた波動を真正面から受け止めた。本能が危険を告げるが、肌に触れるはずだった衝撃は、まるで幻のように消え失せた。
「今だ、りんたん! 逆相の演算を開始しろ!」
呉羽はタブレットを操作しながら叫ぶ。ホログラムの凛が真剣な表情に変わった。
「承知しましたですぅ! 結城さんの能力が作り出す、波動の『無効化領域』を観測しますですぅ!」
凛は、観測ユニットから得られるデータを瞬時に解析していく。怪異の波動が結城に触れた瞬間、その波動は霧散し、あたりに奇妙な静寂が訪れる。そのわずかな時間こそが、呉羽が言う「無効化領域」だった。
「マスター! 演算完了ですぅ! 観測ユニットの出力を最大にしますですぅ!」
凛の声と同時に、観測ユニットから青白い波動が発せられた。それは、怪異の波動とは正反対の、澄んでいながらも強烈なエネルギーだった。
青白い波動は、結城の体を通り抜け、霧散した怪異の波動と衝突する。夜の松原を揺るがすほどの轟音が響き渡り、凄まじい衝撃波が三人を襲った。
「ぐああああああ!」
怪異は、自らの攻撃が逆に作用したことに苦悶の声をあげ、身をよじらせる。触手の動きが止まり、巨大な影がテレビの砂嵐のように乱れ始めた。
「今しかない!」
結城は怪異の本体へと、渾身の一撃を叩き込んだ。
「お前を、神楽にも呉羽にも触れさせはしない!」
彼の拳は、怪異の不安定な影を突き抜け、その奥にある『何か』を捉えた。
「あああああ!」
怪異は断末魔の叫びをあげると、光の粒子となって消滅した。
御食津の松原に、再び静寂が戻る。荒れ果てた砂浜には、先ほどの戦いの痕跡だけが残されていた。
「やったな、結城……」
呉羽はタブレットを抱え、安堵の息を漏らす。神楽は、安堵から膝から崩れ落ちた。恐怖と疲労で、立っていることすらままならない。
結城は、ゆっくりと自分の胸に手を当てた。




