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決意

 結城は呉羽からの電話を受け、桜の家へと駆けつけた。

 夜が明けたばかりの神社の鳥居をくぐると、早朝のひっそりとした空気に、昨夜の激しい争いの痕が生々しく残っている。


 社務所の中に入ると、警察官が数名、物々しい雰囲気で現場検証を行っていた。

 隅の方には、腕には包帯が巻かれ、憔悴しきった様子の宮司が座り込んでいた。


「宮司さん!」

 結城が駆け寄ると、宮司はゆっくりと顔を上げた。


「大丈夫ですか?一体何が……。桜は……桜は無事なんですか?」

 結城は言葉を詰まらせながらも桜の安否を確認した。


 宮司はかすかに頷き、

「ああ、桜は無事だ。」


 その言葉に、結城は安堵のため息を漏らした。


 結城は宮司の隣に腰を下ろし、続く言葉を待った。宮司は重い口を開いた。掠れた声で、昨夜の出来事を語り始めた。


「昨夜、黒い装束を纏った男が現れた。その男は、真っ直ぐに本殿の奥を目指していた……代々この神社が守り続けてきた、神器を狙ってな。」


 宮司は深々と息を吐いた。その顔には、深い悔恨の色が濃く浮かんでいた。長きにわたり守り抜いてきたものを、自分の代で失ってしまった重みが、彼を深く苛んでいるようだった。


「わしは秘術を尽くして抵抗した。結界を張り、あらゆる手を尽くしたつもりだった。だが……その男の力は、想像を絶するほど強大だった。わしの術など、赤子の手をひねるように破られ、なすすべがなかったのだ。」


「そして、最も恐れていた事態が起きた。目の前で、神器が奪われてしまったのだ……!」


 悔しさと絶望が混じった声が、社務所に響いた。


「あの男は、わしを組み伏せた時、こう言ったのだ……『ワタツミの目覚めも、な』と。」

 宮司の言葉が、結城の脳裏に鋭く響く。

 謎の男による昨夜の襲撃により奪われた神器、そしてその男の目的。あまりにも情報が乏しく、果たしてそれが何を意味するのか、結城にはまだ知る術がなかった。


 宮司の話を聞き終えた結城は、自然と拳を握りしめていた。大切な桜が巻き込まれ、宮司が傷つき、神社の宝が奪われた。

 自分が無力なのは承知の上で、ただこのまま傍観者のままでいることなど、結城にはできなかった。


「宮司さん、その男のことで他に何か手掛かりはないんですか?特徴でも、言葉でも、何でもいいんです。」

 結城の問いに、宮司は力なく首を横に振った。

「それが……何も。ただ、私を組み伏せた後、本殿の最奥を……神器があった場所を見て、満足げに呟いていたよ。『これで、最後のピースが揃う』と……。」


「最後のピース……?」

 結城は思わず、その不穏な言葉を繰り返した。

 まるで、これまで起こった出来事が計画の一部であるかのように聞こえる。そして、その計画が今、最後の段階へと進もうとしている。

「最後のピース」。その言葉を聞いた瞬間、結城は強い胸騒ぎをおぼえた。桜の意識不明、神社の襲撃……もしこれら全てが、とてつもない悪い事態への序章だとしたら?一体、何が起ころうとしているのか、結城の心が焦燥に駆られる。


 その日を境に、結城はただの傍観者でいることをやめた。自分に何ができるかはわからない。

 それでも、この状況をただ見ているだけではいけない行動を起こすべきだ、と。

 呉羽や神楽とともに、せめて事件解決の糸口となる情報だけでも集めようと決意する。

 平穏だった日々は、もう遠い過去になりつつあった。

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