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襲撃

 その日の午後、結城は桜の自宅を兼ねた晴明神社の社務所を訪れていた。

 インターホンを鳴らすと、奥から顔なじみの宮司が姿を見せた。

 桜の父親である彼は、結城が幼い頃から変わらない、穏やかな笑みを浮かべている。


「結城くん、いらっしゃい。桜のお見舞いかい?わざわざありがとうね。」

 宮司は少し疲れた顔をしていたが、結城を温かく迎え入れた。

「いえ、桜のことが心配で……何か、変わったことはありませんか?」

 結城は、言葉を選びながら尋ねた。


「うん、相変わらず眠ったままだが、容態は落ち着いている。大丈夫、桜は強い子だから、きっと目を覚ますさ。結城くんも、あまり心配しすぎないでおくれ。」

 宮司はそう言って、結城の肩をポンと叩いた。

 その言葉には、結城を安心させようとする優しさと、自身の不安を押し殺すような気丈さが滲んでいた。結城は、幼い頃に桜とこの庭で遊んだ記憶、桜の父がいつも優しく見守ってくれていた日々を思い出し、胸が締め付けられた。


 他愛ない昔話に花を咲かせ、結城は宮司の元を辞した。

 宮司は最後まで笑顔で見送ってくれたが、その背中には、大切な娘のことで深く沈む心が垣間見えた。




 その夜、晴明神社の境内は、いいしれぬ不穏な空気に覆われていた。

「見つけたぞ。」

 冷徹な声が響き渡る。黒い装束を纏った黒沢凪が、音もなく鳥居を潜り抜けていた。

 彼の目的は、この神社に祀られている、強力な霊的資源たる神器だった。


「何者だ!」

 寝間着姿の宮司が飛び出してきた。彼の顔には怒りと警戒の色が浮かんでいる。

「この神聖な場所に、何の用だ!」

「邪魔をするな、宮司。これは、我々の悲願達成に必要なものだ。」

 黒沢凪は感情のない声で言い放つと、右手を掲げる。

 地面から水が吹き出し、瞬く間に鋭利な槍へと形を変え、宮司へと襲いかかってくる。


「くっ……!」

 宮司は素早く手印を結び、懐から数枚の符を取り出し、空間に五芒星を切る。その場に淡い光の結界が展開され、水の槍を防ぐ。

 彼は代々この神社を守ってきた陰陽師の一族であり、その身には古の秘術が宿っていた。

「五行相剋!」

 宮司が呪を唱えると、水の槍は霧散し、数体の紙の式神を呼び出し、黒沢凪へと飛びかからせた。


 しかし、黒沢凪は動じない。彼は水の障壁を瞬時に作り出し、飛びかかってきた式神を弾き飛ばした。

「無駄だ。貴様の力などで私を止めることはできない。ワタツミの目覚めも、な。」

 黒沢凪は一歩踏み出すと、硬質化した水でできた刃を生成し、宮司に斬りかかった。

 宮司は辛うじて避けるが、その腕に浅からぬ傷を負った。


「ぐっ……!」

 体勢を崩した宮司の隙を、黒沢凪は見逃さなかった。彼は宮司を地面に組み伏せると、本殿の最奥へと視線を向けた。

「これで、最後のピースが揃う。」

 黒沢凪は満足げに呟いた。


「待て!その神器は……!」

 宮司は悔しげに手を伸ばすが、力なく倒れ伏す。

 黒沢凪は闇の中へと消えていった。


 翌朝、結城のスマートフォンに、呉羽からの緊急連絡が入った。

「結城!桜の家が襲撃された!宮司さんが怪我を負って……!」

 血相を変えた呉羽の声に、結城は言葉を失う。

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