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剣術指南(4)

朝起きると、テレビをつける。

ニュースにチャンネルを合わせ、見ていると母が横に来て、一緒にテレビを見はじめる。

お姉さんのことが気になるため、少しでも情報が欲しいのだ。

僕だって、おばさんの事や美月お姉ちゃんの事が気になってる。

母の顔をのぞき込む。

いつも笑顔で「おはよう一刀」と声を掛けるのに、いつもの一声がない。

やはり、昨日の一件が尾を引いている、当たり前のことだ。

寝てからもすぐに起きてしまったのだろう、目の下にクマがあり、顔が青ざめてる。

「寝たほうがいいよ、少しでも体力をつけとかないと、お腹の子にも心配かけちゃうよ」

「そうね、一刀」

「僕がニュースを見といてなんか解ったら、教えるから」

「ありがとう一刀、心配かけて」

「いいから、早く寝て、早く」

背中を押して寝室につれていく。

「じゃあ、寝るから、なんかあったらお願いね。あと、お父さんから連絡あったら、起こしてね」

「わかったから、早く寝てね」

寝室のドアが閉まる。

父さんも、もう少し話してもいいと思うのだけど。

ケガがないとか、生死に危険はないとかより、どこに避難しているから安心の方がまだ教えてほしいと思う。

昼頃、父から電話が来た。

「一刀か今、お母さんは、どうしてる」

「うん、今寝かしつけたところ」

「起きたら、義姉さんは自衛隊の方で保護し基地内に避難しているからと伝えほしい。起きてくるまでは、寝かしておくんだぞ、起きてきたら今、電話があったって言えばいいから」

「そうだね」

母のことが本当に大切なのが分かる。

「あと、美月お姉ちゃんのことは、何か解った?」

「すまんな、一刀。それはまだ言うことが出来ないんだ」

『そうなんだ・・・・・・・少しも話せない?」

「すまない」

「わがままいってごめんなさい」

「じゃあ電話切るからな、お母さんを頼む」

電話が切れる。

「美月・・・・・おねえちゃんどこに行ったの?」

夜の6時を過ぎるころ、寝室から母が出てくる。

「どう、お父さんから、電話あった?」

慌てないよう心を落ち着けようと息を整える。

「お母さんが起きてくる10分位前に電話があったよ。伯母さんたちは、自衛隊の基地内で保護されいるから、安心してだって」

「そうなのね、無事に保護されているのなら、義兄さんもいるし、お父さんもいるから、安心ね」

頬からから一滴の涙が落ちると、すぐに服で涙を拭う。

息子に心配をかけまいと必死さが見て取れる。

心配されないようには笑顔で接しようと一刀は一生懸命に笑う努力をする。

「美月ちゃんのことは、なんか言っていた?」

俺は、首を横に振る。

「どうしてこんなことになったのかしらね、まるで、神隠しにあったみたい」

「神隠し?」

「昔の人は、人がいきなり行方不明になったりすると、そんな言い方をしたのよ」

怪訝な顔をしながら、

「あらこんな時間、すぐにご飯を作るから、お風呂を沸かしてちょうだい、お父さんも帰ってくる時間だし」

「先に入って体を洗って、沸くの待っててもいい?」

少しでも早くお風呂をあがり、情報がほしい。

今のところは、ニュースまたは、父からの情報しかないのだけど、伯父さんや伯母さんからの連絡もあるかもしれない。

「体を冷やさないように、体を洗っても、お風呂が沸いてないうちは、シャワーを浴びているなら入ってもいいわよ」

お風呂場へ向かう一刀を見て、少し大きな声で母が声を掛ける。

「入ってる間に、電話があったら僕にも教えてね」

「はいはい」

脱衣場で素早く服を脱ぎ、シャワーを浴びる。

頭と体を洗い終わるころ、お風呂の沸いたお知らせがメロディと共に鳴り響く。

「♪~~お風呂が沸きました」

お風呂に飛び込み、お湯の中にもぐりこみながら、考え出す。

お母さん言っていた神隠し、何とか調べる方法はないのかな?

転移や転生についても、調べる方法があれば、何かがわかるかもしれない。

心も頭が痛い、‥‥美月お姉ちゃん・・

お風呂でボーーーとしていると、父がお風呂に入ってきた。

「一刀、のぼせてないか、顔が真っ赤だぞ」

「のぼせたかも」

「早く出て、水分補給してこい」

「うん」

ヨタヨタしながら、お風呂から出る。

「一刀ほら、ゆっくりと飲みなさい」

台所で夕飯の準備をしていた母が麦茶をコップに入れ駆け寄る。

「ほら、向こうのソファーベットに寝なさい、頭を冷やしてあげるから」

麦茶を飲ませつつ、母はソファーベットまで連れて来てくれた。

一刀を寝かしつけると、氷水に浸し絞ったタオルをそっと頭に置く。

夕飯を食べずそのまま寝に入った一刀は、不思議な夢を見ることになる。

光の壁のある小さな部屋。

部屋のサイズとしては6畳間位の大きさだ。

辺りを見回すが、扉らしきものはないのだが、部屋の隅でシクシクと泣き声がする.

かすかに光る小さな光の方栄光にも、体が動かない。

手をグー、パーと動かすと手は動く、首も左右に動かすと首も動く。

しかし、体は動かない。

どうにかして泣き声のするほうに、泣いている訳を聞こうとするがそこで目が覚めた。



目覚めると・・・・

母に抱き着かれたままで目が覚める。

抱き着かれたまま「お母さん、お母さん」必死に体を動かし母を起こそうとすると、ソファーベットの横に立つ父に気が付く。

「一刀が心配で夜中にベットから出てこっちに、お母さんは来たんだ、もう少し、寝かせてやれ」

もう少し寝かせてやれということは、この身動き出来ない状態・・・・まるで、麻痺毒

「一刀・・ス~ス~ス~いっ・・とう、だいじょうぶだから」

寝言?しょうがない、僕も、もう少し寝よう。




少し寝ようとは思っていたが、母に起こされる。

「早く起きなさい、一刀」



・・・・・・・・・・・・どの口が言っている。


「お母さんより早く起きてたけど、放してくれなかったのに」

笑いながら母は、

「あら、何言っているの?そんなごまかし方をいつ覚えたの?お父さんに教わった?」


いったい何したんだお父さん。

そんなごまかしとは?

「本当に早く起きていたんだ。お母さんに抱きつかれてたから」



「そうね、すごい気持ちのいい抱き心地だったわ、今日の夜も・・」

母の横で父は立ちつくしていた。

「いっ・・と・・・・・う」

我に気が付き慌てて言い直す。

「一刀、剣術の件なのだが、こんな状態になってしまっただろう。だから、勇おじさんと話したんだけど

自衛隊の基地内で習わないか?そうすれば、剣術の他に、柔道、空手、※①徒手格闘、※②銃剣道なども教われる」

※①徒手格闘とは、自衛隊員の軍隊格闘の一種、

※②銃剣道とは、小銃を模した木刀の先に、タンポと呼ばれるゴム製のカバーが付いている木刀で剣道のように戦う。もちろんのこと、シナイより硬い木刀の先に申し訳ないくらいのゴムカバーで、突かれるため痛さは、非ではない。どちらかと言うと槍術を剣道にしたような、ぶじゅつの一つ。主に自衛隊の格闘技で、警察、海保では、聞いたことがない。


少し悩む一刀。


「始めは、美月ちゃんに教わることになっていたのは解るが、美月ちゃんが帰ってきたとき、一刀が強くなっていたら、驚かれるぞ」

美月の行方はまだ解らない・・それでも元気付けようとしている父が目の前にいた。


「やってみる、美月お姉ちゃんが帰ってきたら、どんなことがあっても美月お姉ちゃんを守れるようになるよう頑張る。あと、調べたいことがあるんだけど、過去のことや、伝承、伝説なんか勉強したいのだけど、どっかいいとこない?」


稽古はするだろうと考えていた父だったが、勉強したいなど言うとは思っておらず、驚いていた。

考え込む父、資料館は、※③自衛隊の基地内にもある、あとは、市立や県立の図書館等で調べることはできる。

パソコンで調べることも出きる。

※③陸上自衛隊富士学校では、開校祭のとき、資料館は開かれ、中を見学することが可能。

  又、資料館前の広場には、昔の戦車等も置かれている。


「まずは、パソコンでも調べられるぞ、図書館だったら、昔の新聞記事なども調べられるし、基地内で練習するなら、資料館の見学も出来るかもしれない」

「それじゃあ、おかあさんが、パソコンの使い方を教えてあげる」

話に入れずにいた母は、これはチャンスと話に入ってきた。

父は、パソコンを持っているのだが、電子系より機械系の方が得意な為、パソコンが苦手だ。

母の割り込みは、天使の囁きのように聞こえているはず。

「はぁぁぁ助かった、パソコンしていると、頭から湯気が出る」

声が出てるってと心の中で新喜劇張りのツッコミをいれる。


「あと、おじさんの道場裏の山にある祠の近くは行くなよ、祠内から、有毒ガスが出ているために自衛隊で封鎖しているからな」

「祠なんてあったんだ?」

「お父さんも知らないんだけど、なんかあったらしい」

「じゃあ何が祀られていたかもわからないんだね」

「それこそ、図書館で、この町の伝承を調べればわかるんじゃないか?」

関心がない父、関心があるのは、最愛の妻と子供だけなのである。

「お母さん、明日は図書館につれて行ってね」

「わかったわ、今日から、自衛隊の基地内で稽古してもらうのね」

やる気満々の一刀。

「帰ってきたらご飯を食べて、お風呂も入って早く寝ること」

「わかったけど、少し調べたいことや、ニュースで美月・・・」

話している途中で話をさえぎられる。

寝なくちゃ図書館にもつれて行ってもらえそうもない。

「じゃあ、稽古にいってきます。」

「いってらっしゃい」

「おいおい、じゃあ、車を出すから、車に乗ってろ。早くついても、仕事が終わるまで伯母さんと基地内でも見学してろ」

一刀が車庫に向かうのを確認した父は、母を抱き寄せ、唇を寄せ、キスをねだっている。

頬を軽く叩く母は、父の頬にに軽くキスをした。

「行ってらっしゃい、気を付けて」

「ああ、行ってきます」

こうして自衛隊の基地に向かうのだった。

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