剣術指南 (3)
朝日が、まぶしく目をさます。
ベットから時計に目をやる。
7時30分、慌ててベットから飛び降り、パジャマから私服に着替えようしていると「ご飯食べないの?」
と母が声を掛ける。
「今から食べる」
テーブルに着くと、「寝坊したのは、昨日の稽古が辛かったの?」心配そうに顔をのぞき込んでくる。
「そんなことないよ」
「本当に、辛いなら、やめてもいいのよ」
「本当に大丈夫だから、、、美月お姉ちゃんもいるし」
「美月お姉ちゃん?勇おじさんに教わってるわけじゃないの?」
「最初のうちは、姉弟子の美月お姉ちゃんに教わることになったの」
「一刀、美月お姉ちゃんは可愛い?」
「可愛いんじゃなくて、綺麗だよ」
「好きになっちゃったんだ」
悪戯しそうな顔を見せる母だったが、
「多分、好きなんだと思う」と答えながらパンをほおばる。
「一目ぼれなんだ、ママと一緒ね、パパのこと一目惚れだったのよ」と笑みを浮かべる。
ご飯を食べ終え、席を立とうとした時、「話があるの」と真剣な表情で母は話し始めた。
「一刀にも教えておくね、お母さんのおなかの中の子は、女の子らしいのよ、エコー言う検査があってね、それでわかるの。一刀も妹ができるのよ。でも、一刀がおなかにいるときは双子って言われていたけど、双子じゃなかったし、本当に生まれてくるまで楽しみね。お父さんには言ったこと内緒だから、約束ね」
記憶の片隅にある過去の自分の他に、一刀として生まれてくるはずの他の自分がいるかのような感覚がある。
本当に生まれてくるのは転生した自分だったのだろうか?
だれかを犠牲にして、転生したのではないか。
アニメや漫画の転生、転移ものは、何かしらの異能やチートを恩恵として貰っていることが多い。
自分が、読んでる漫画でも何かしらのチートをもらっている。
恩恵だろうが、チートだったのかは知らないが、神人と転生時の契約はした記憶も残っているが、誰かを犠牲にしての転生とは聞いていない。
今は、出来ることをするしかない。
夕方になるころ、母に美月お姉ちゃんに電話をしたいと話すと電話をかけてくれた。
「美月お姉ちゃん、明日、会いたいんだけど、学校休みだよね」
明日は、祝日の為、学校は休みのはず。
「一刀ごめんね、明日はちょっと無理なんだ。明後日じゃ無理?」
「明後日?明後日も休みだっけ?」
「休みじゃないけど、半日の授業だから」
「じゃあ、午後1時に勇おじさんの家に行くね」
「わかったけど、いきなりどうしたの?」
「いろいろ知りたいことがあるから、教えて欲しいんだ」
「何が知りたいのか解らないけど、私が知っていることなら・・・」
美月の話す声が時折暗くなる。
何かあったのだろうか、聞きたかったが答えてはくれなそうな雰囲気がある。
「ありがとう、美月お姉ちゃん」
その言葉しか出せない切ない気持ちになった。
次の日、勇おじさんの道場に行くと美月お姉ちゃんは留守で、勇おじさんが稽古をつけることになった。
俺は、スジが良いらしい。
間の取り方が、初心者ではなく達人の間のようだとのこと。
そりゃそうだ、過去の世界では、間の取り方で生死を分ける時もある。
転生しても、魂に刻んだであろう技は残っていた。
しかしながら、身体能力は、まだ子供、力も弱い、速さも遅い。
「今日の稽古は、終わりにしよう一刀」
「勇おじさん、ありがとうございました」
「一刀お前、力と速さを身に付けたら、剣豪 宮本武蔵と対決できるかもしれんな」と笑いつつ稽古場を出ようとする。
「うん、過去に、戦ったことがあるし、お互い全力で戦えたのか疑問が残る」と小声でつぶやく。
「あっ、なんか言ったか?一刀」
「ううん、何にも言ってないけど、そういえば今日、美月お姉ちゃんは友達と遊びに行ったの?」
「美月には、聞いてないのか、そうか、ならば答えることはできないな。答えは、時が来れば教えてもらえるかもしれないから、無理に聞いちゃだめだぞ」
「美月お姉ちゃんに頼られるようになりたい」
「そうだな、人には、人それぞれの役割がある、一刀と美月は、その役割に関係があるのであれば、これからの人生でお互いに支えあって生きていけばいい」
「なんか難しいことを言って、煙に巻くつもり?」
「そんなことはない、明日は美月とデートか?」
「やっぱし馬鹿にしてるでしょう」
「二人とも年は離れているが、おじさんにとって大事な子供なのだから、馬鹿にすることはない、茶化すことはあるかもしれんが」
一刀は、呆れたまま家に帰っていく。
次の日、午後になるや否や一刀は、勇おじさんの家に向かうが、美月の姿はない。
「美月お姉ちゃんいる~~」
大きな声で呼んでみるが反応がない。
2度3度と呼んではみるが、無しのつぶてである。
こんだけ呼んだにもかかわらず、おじさん夫婦や美月からの返事は帰ってこない。
1時、、2時、、3時、、4時、、5時、、
6時をまわり、母が迎えにやってきた。
「どうしたの、泣きべそかいて」
「美月お姉ちゃんに嫌われたのかな?」
「どうしてそんなこと言うの?」
「約束したのに、いつまでも来なかった」
「そんなはずはないわ美月ちゃんは、弟が出来たと喜んでいたもの」
「じゃあどうしていないの?」
「勇おじさんには会えた?」
「おじさんにも会えなかった」
母は少し考え「家に一旦かえりましょう」と優しく答えた。
家に着くなり母は、父に美月ちゃんと叔父夫婦の件を聞き出そう詰め寄る。
鬼がいる・・鬼が・・お・・に・・羅刹のごとく父の胸倉をつかむ母をみた。
「あなた、美月ちゃんと姉夫婦が家にいないのだけど知ってる?」
「し・・知るわ・・知るわけないだろう」
知っている顔をしている。
「知っているわよね」
母の問いに嘘がつけない父・・母に対し圧倒的弱者・・
「義兄夫婦のことは、知っているけど美月ちゃんのことは知らないぞ」
「ほ~ん~と~うに?」
母のこめかみには、血管が浮き出ている。
「本当に知らない、知らないって」
知っていることを話すよう促すのだが父は「国家機密だ」と答える。
泣きそうな顔で母を見つめる父の姿を見て、母に言葉を掛ける。
「ママ、しょうがないよ、国家機密なんだから」
「でもね一刀、夫婦の間には秘密は無しにするから、結婚してくれって言われたのに~~~」
母、大泣きで、父、大慌て・・ここからが大変で、離婚話や子供は私がとか、ふざけんな!
父も要約して話せることを小出しにして話せば良いのに、不器用すぎる。
しばらくすると、母が怖いのか、離婚の危機なのかはわからないが、少しだけ話すと言い
「実は、義姉さんには、避難してもらっている、だから義兄さんは、避難先にいるが美月ちゃんは行方が解らないと部隊から報告があった」と話し始めた。
おい!国家機密はどこ行った。
母の脅しに負ける国家機密とは、全然国家機密じゃない。
「これ位しか話せない・・すまん」
「姉さんは大丈夫なの?ケガ?病気?」
「病気でもケガでもないし、今は生死にかかわっているわけでもない」
「じゃあ無事なのね」
無事との言葉を聞いた母は、腰が抜けたように座りこむ。
すぐさま父は母を抱きかかえベットに寝かしつけた。
一体何が起こっているのだろうと不安を残し眠りにつく。
最初のうちは、1日2000文字と目標を立てていましたが、実現できずにいます。
親戚内での不幸、趣味の一つであるバイクの故障で諭吉様(今は、渋沢様)が天に召され、やる気スイッチ
がオフ状態になってしまいました。
飛び飛びな掲載になりますが、ポンコツな私を温かく見守ってください。
A.K.I