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2話

 おっす、おらチートオリ主!

 なんちゃって、大好きなライトノベル『果ては遥かなラグナロク』の世界にTS転生した俺は、正直自分にとって都合が良すぎる展開に驚いていた。

 主人公アーサーには幼馴染がいない筈なのに、ステラというか俺は彼の幼馴染ポジションになっていた。

 それだけではない。

 魔法の適性はオールAで剣技の才能もある、才能の塊みたいな肉体を持っている俺は正しくチートオリ主!

 さらに美少女なのは標準装備で、道を歩けば多くの人が振り返るレベルの美貌を持っている。

 

 ああ、俺の人生は間違いなく安泰、薔薇色に染まっているだろう。

 何より主人公の幼馴染として原作を間近で目撃出来るというのが大きい。

 アーサー。

 俺も元は男だけど、男だからこそ彼のかっこよさには惚れていると言っても過言ではない。

 原作は美少女ハーレムものだが、それが納得出来るほど彼は格好いい。

 特に戦闘方法は浪漫たっぷり、二刀流なんてみんな大好きなのよ。


 そんな訳で、俺は幼馴染ポジションを利用して彼と仲良くなろうとした。

 仲良くなって第一の仲間になって旅について行こうという魂胆だった。

 彼はいずれ聖剣の担い手として魔王を討つ旅に出る。

 俺はチートオリ主として彼の旅のサポートが出来ればと、そのように思っていたのだったが。


「なんだ、お前」


 めっちゃ冷たくあしらわれたんだが?

 仲間にしてといきなりは言わない。

 ただ家がお隣であるという理由で友達になろうと言っただけだったのだが、しかしアーサー少年はぶっきらぼうに俺に対して「友達とか何言ってんの」と拒否してくるのだった。

 アレェ、俺って彼に嫌われる事したっけな?

 あ、うん。

 初対面の時テンション上がって叫んでしまったけど、いやでもそれだけで嫌われることなんてある?

 現在、アーサー少年は七歳。

 どうやら素直な歳ではないらしい。

 

 それならばと、彼の両親を陥落させてからその伝手で友達になるのはどうだろうと思っていたのだったが、しかしそれもまたアーサーに阻止される。

 何なら全て予知されるかのように気付けば目の前に彼がいて、そしてこんな感じのことを言うのだ。


「お前は俺のことなんか気にしないで、他のことに時間を使えよ勿体無い」


 えっとこれは……ツンデレか?

 そう思うと、全ての行動が愛おしく思えてくる。

 そうか、原作前の彼は素直になれないツンデレ少年だったかー。

 きっと将来、この日の事を思い出して身体を震わせる時が来るんだろうなー。

 だとすると、俄然愛おしくて彼に対する気持ちが強くなる。

 ああ、早くもっと仲良くなりたい!


 とはいえ、今の彼がぶっきらぼうで俺に対して「いや」と言葉でも行動でも壁を作っている事は間違いない。

 あまりにも強固で、しかしそれでも隙はある。

 例えば、彼はよく家を抜け出して稽古をしている。

 どうやらこの歳から身体を鍛えて戦闘出来るように訓練しているようで、その様はまるで既に歴戦の戦士のよう。

 凄いな、チートオリ主の俺もセンスの塊だが、彼はきっとそれ以上だ。

 そして、これが彼と俺とを繋ぐものとなるだろう。


 俺は水の入った瓶を持って、普段彼が訓練している村のはずれへと向かう。

 ここは一種の穴場スポットであり、実際彼を尾行して発見するまで俺も存在を知らなかった。

 そして俺は彼がいない事を確認し、そこへと行ってみる事にする。

 案の定彼はそこにいて、木剣を自由自在に操りまるで舞のような動きをしていた。

 凄いな、本当に達人みたいだ。

 そして一通り稽古が終わったタイミングを見計らい、俺は拍手をしてから彼へと近づく。

 ……びくりと身体を震わせ、そして俺がいる事に気づいた彼は忌々しげに舌打ちをする。


「またか……」


 それから俺の方を見、いつものようにぶっきらぼうな口調で「何だよ」と言葉を向けてくる。

 邪険とは言え全く口を利いてくれない訳ではない事にホッとしつつ、俺は「はい、これ」と水の入った瓶を差し出した。

 しかし彼はそれを見もせずにただ「……俺に付き纏うのは、止めろ」と言う。


「俺に付き合っても良いことないから、もっと有意義な事をするべきだ」

「私は君と仲良くなるだけで嬉しいよ?」

「……っ。そういうの、マジで止めろって!」


 泣きそうな顔で拒絶してくる彼に流石に申し訳なく思った俺は「ごめんね」と言い、せめてとばかりに持ってきた瓶を渡す。


「とりあえず、今回はいなくなる、けど。仲良くしたいって気持ちは変わらないから」

「……」

「それじゃあ、ね」


 俺は手を振り、踵を返す。

 ……後頭部に視線が突き刺さるのを感じながら彼から見えない場所まで移動して、それから改めて大きな溜息を吐くのだった。

 あー、なんか前途多難だぜ。

 子供の反抗期拗らせて友達にすらなれないとは、流石の俺も想定していなかった。

 とはいえ、彼も子供だ。

 大人びているとはいえ、美少女な俺のアタックにいずれ折れて友達になる事を受け入れてくれる時が来るだろう。

 俺はただ、その時を待てば良い。

 幸い、原作が始まるのはまだ先な訳だし、それまでに色々と好感度を稼いでいけば良いのだから。


 よーし、それならば俺も頑張るぞー!


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