やっぱりこれが一番だよね「金魚ビール」
金魚人は日本のビール工場を見学していた。そして独自に作った「金魚ビール」を世界に広めたいと考えた。
そこで宣伝してもらおうと選んだのが、なろうラジオ大賞5の企画だった。
ここで採り上げてもらえれば「金魚ビール」の宣伝になるかもしれないからだ。
パーソナリティのお二人が楽しそうに飲む様を想像して金魚ビールの文章を書き上げていく。
「仕事終わりに飲む、金魚ビール。これが最高なんですよ」
「金魚ビールがなんの事か分らないだって? 金魚ビールはね、美味しいんです」
「金魚ビールを飲むと翌日も元気出るんです」
「金魚ビール最高、えっしつこい? 金魚ビールアピールし過ぎでしたね」
「でもね金魚ビールが旨いから宣伝してます」
「金魚ビール金魚ビール金魚ビール! 金魚ビールでおどれちゃいますよ〜っと」
「金魚ビールの効果わかったでしょう。金魚ビールは魔法のお薬なんですよ」
「金魚ビールは神!!」
金魚人は金魚ビールを飲みながら、これならいける、そう思った。
それを見ていたビール工場のアドバイザーがボソッと呟く。
「金魚ビールがどういうものかは置いておいて、一応日本ではお酒の販売には許可証がいるんだよ」
金魚ビールを売る事に酔っているであろう金魚人に、ビール工場のおじさんは丁寧に教えてくれた。
「あとね、金魚割りって金魚が飲めるくらいの濃度のお酒の飲み方や、唐辛子やシソの葉なんかを入れて金魚鉢に見立てる飲み方があるんだ」
おじさんは熱心に教わる金魚人の熱意に押され色々と省略していた事に気がついた。
「金魚ビールってなんか塩っぱいよね? 塩水浴で金魚は回復するけど人間はしないと思うぞ」
金魚人はカルチャーショックで崩れ落ちる。
「そもそも金魚人って何だい。金魚は淡水魚なのに、金魚人は海水も泳げるのかね」
ビール工場のおじさんの舌鋒は止まらない。陸に上がった魚に対して容赦なしだ。先程までビールを囲んでワイワイやっていたのが嘘のよう。
自分のビール工場に酔っていたおじさんは、金魚ビールの回復力によって酔いが冷めてしまったのだ。
金魚ビールの回復力は人間にも通用さしたではないか。でも、金魚人にはわかっていた。
おじさんは金魚ビールを飲んで、ライバルと認めたのだと。
こうして金魚人の野望は、脆くも崩れ去った。美味しいビールが飲みたい。美味しいビールと言えば「金魚ビール」と言われるまで、金魚人の挑戦は続くのであった。
「――――――いや、マジで何者?!」
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
「たまご」「金魚人」と、ラジオ大賞企画内でのみのキャラが出来上がってしまいました。
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