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かき喰へば  作者: 合羽 洋式
第一章 火種
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第一章 二 取引





 「―――俺を助けるって、…もしかして、俺を雇ってもらえるんですか!?」


 「ええ、そうだとも。お前さんには私のもとで働いてもらいたいと思っているよ」


 諦観の漂う先程までのやりとりから一転して、問題ないとばかりに得意げな顔で切り出す伊那岐に対し、浦須は内心の驚きを隠すことができないでいた。


 ーーーどういうことだろうか?


 今までの話の流れの中で浦須を手元に置いておく積極的な理由があるようには思えない。現在の浦須は言わば『厄介者』だ。周辺一帯に発言力がある権力者といざこざを起こしたお陰でめでたく覚えも悪く、財物はおろかその日を生きる糧も頼りにする身寄りもない浮浪者同然の男。まともな者ならそんな厄介者と関わり合いになることは避けるはずだ。まして、損得勘定に敏感でなければいけない商人ならなおのことだ。


 もし仮に、伊那岐が浦須の身の上話に同情していたとして、それだけを理由にこの厄介者を手元に置いておくことがあり得ないことくらいは、商売の世界に疎い浦須にでもわかる。


 だからこそ、驚きと諦めと、一抹の期待が混じった浦須の心からの問いが肯定された理由がわからない。


 「おや?怪訝そうな顔だねぇ?…まあ、無理もないかね。お前さん――浦須くんの立場は自分でもわかってる通りに悪い。特にまずいのは意竺さんの怒りを買っていること。意竺さんの目が届く限り、浦須くん自身、何かされるかもしれないし、それを庇った誰かにも迷惑が掛かってしまう。…浦須くんとしてもそれは避けたいところだよねぇ?」


 自身が置かれている立場の悪さを指摘された浦須は黙って頷くことしかできなかった。――全くのその通り。ぐうの音も出ないとはこのことだ。

 すると、伊那岐は浦須の首肯を見て取るや、軽く目を閉じた後で、


 「だったら、目の届かないところに行けばいいのさ。ーー少し外に出てみようか。こっちへおいで」


 そう言って、座っていた姿勢から立ち上がると、浦須の横を抜けて部屋の外へ歩いていった。伊奈岐の言葉に浦須はそれの意図するところを掴めないでいたが、先を行く伊奈岐に置いていかれてはなるまいと、纏まり切らない頭を振り、早足で伊奈岐を追う。廊下を抜け、途中ですれ違った伊奈岐の店の従業員と思しき者達に目礼しつつ、建物の外ーーー伊奈岐商会の玄関前で待つ伊奈岐の隣に並んだ。


 すると、伊奈岐は隣の浦須にわかるように東の方に指を向けた。彼女の指差す先に見えるのは、近くの山々の連なりからは少し離れた、小高い丘とも呼べそうな程の小さな山だった。


 「ほら、あそこに小さな山が見えるだろう?あの山の土地を私が所有していてねぇ。そこで農園をやってるんだよ。あそこなら人目もあまりないし、意竺さんが近づくこともほとんどないと思うよ」


 「………!」


 伊那岐による提案は浦須にとっては青天の霹靂だった。

 もちろん、浦須とて領外に出ることを考えなかったわけではない。

 屋敷を追い出されてから数刻、新たに雇い主を見つけようと何軒か廻ったところで自分が置かれている状況の悪さに理解が及び、意竺の目が届かない場所、つまり、領外に出ることを思いついた、が、考え始めたところですぐにあきらめていた。――行く宛がないのだ。

 浦須の足であれば、隣の領まで歩いて辿り着くことは十分可能だ。ただし、それは浦須が『普段通り』の体力であればの話だ。寝食も儘ならない状況で徒に体力を消耗するのは避けたいところだ。

 また、夜盗に襲われる危険もある。街道が整備されたことで以前に比べれば夜盗に遭遇したという話は聞かなくなっているが、それでも遭遇する可能性が全くなくなったわけではない。着の身着のままの現状では護身もまともにできないだろう。それに、それらを乗り越えて隣の領に辿り着いたとしても、そこで再び路頭に迷わない保証はどこにもない。意竺の影響力を考えてみれば、隣の領まで行けば万事解決などと楽観視することはとてもできない。


 ―――ならば、伊那岐の提案はどうか。


 彼女の言う小山はここから二、三里離れたところにあり、街道からは外れている。野花が咲いていたり、山菜やきのこが一応採れたりするらしいが、それも近くにある他の山々と比べれば貧相なもので、山菜やきのこがそこよりも多く採れる場所は他にあるし、綺麗な花がたくさん咲いている場所も他にある。見晴らしの良い高い山ならその小山の近くにある。かと言って、全く誰も寄り付かないわけでもなく、時折訪れる者もあるため、山賊が住みついている噂もない。

 つまり、この小山は利用者の多い街道から程よく距離が離れていて、特に用がない者は立ち寄ることもなく、用がある者も少数で人目が少なく、賊の住処である可能性も低い、浦須にとってはあらゆる意味で『安全』な場所だ。


 ―――しかし、それなら…


 「なんで最初は断ったんですか?そこなら俺が見つかることもほとんどないんじゃ…」


 「勘違いをしてもらっちゃ困るさ、浦須くん。私の農園に居れば意竺さんに見つかることはほとんどない。でも、『ほとんど』さ。見つからない確証はないし、見つかれば商売に悪影響が出るかもしれない。そんな商売に悪影響を及ぼしかねない不安材料を同情心だけで、しかも何の見返りも要求せずに手元に置いとくほど商売人は甘くはないねぇ」


 提案を吟味する中で生まれた違和感から浦須は伊那岐を追及しようとするが、少し表情を厳しくした伊那岐の『当たり前の話』を前に矛先を収める外なかった。


 早い話、浦須は浮かれてしまっていたのだ。


 不意に訪れた自身を取り巻く環境の変化ーーそれも悪化の一途を辿るばかりの変化により浦須の心身は少なからず疲弊していた。八方塞がり、打つ手なしの状況に頭を抱え、不安や焦燥感が心を蝕み、空腹や睡眠不足に起因して体力が少しずつ、でも着実に低下していく実感を覚え、さらに心が閉塞していく。

 そんな中で自身にとって都合の良い情報がもたらされ、浦須は内心救われた気になった。絶望感すら感じ始めていた状況から光明が確かに見えた気がしたのだ。

 しかし、そうやって一度良い目を見るとすぐにまた良い目を見ようと考えてしまうように、ご都合主義的な考えが浦須の心に慢心の色を足し、つい先程まで抱いていた自身の立場の危うさに対する懸念を塗り潰していった。

 それは、ひとえに浦須の『傲慢』に他ならない。


 「ーーーーー」


 ーーと、そこで自省を始めかけた浦須の頭の中にふと引っかかるものがあった。


 ーーー伊奈岐は何と言っていたか…


 彼女は「見返りがあれば手元に置く」と言っていた。この場合の『見返り』とは何を指しているのか。浦須が差し出せる伊奈岐にとって価値があるものとは何なのか。


 伊奈岐は浦須の表情の変化を見取ると、満足げに頬を歪めて言った。


 「そうさ、これは取引だよ。私なら浦須くんを助けることができる。でも、お前さんが助かる道を選ぶなら、お前さんが私にとって有益なことを示すか、商売に差し障る危険を冒してでもお前さんを手元に置いて置くだけの価値があるものを差し出さなければいけない」


 笑みを深めた伊奈岐の言葉に浦須は自分の心の内が推し量られている感覚を抱き、思わず身構えた。伊奈岐には浦須を害する意図も動機もないどころか、むしろ浦須を助ける提案をしている。だと言うのに、伊奈岐に対して警戒心が働いているのは、自分自身の心の機微が読み取られたことばかりではない。

 商売人が発する『取引』の文言、そしてそこに伊奈岐の商売人としての経験・矜恃・才覚・価値観などが加わることで相手を圧し、より優位に立つ商売人の在り様を伊奈岐は体現している。それ故に浦須はお互いの立ち位置が如何に離れたところにあるのかをまざまざと見せつけられ、ただ身構えることしかできないでいたのだ。


 「そんなに肩肘張らなくてもいいさ。取引といっても、お前さんに働き口を与えること、あとは…そう、おむすびの礼をするつもりでいてくれればいいのさ。商売で大事なのはお互いが得をすること。どちらか一方だけが得をするんじゃあいけないねぇ?」


 思っていた以上に浦須の警戒心を高めてしまっていることに伊奈岐は苦笑しながら、先程の浦須を突き放した言葉を少しだけ柔らかく言い換えた。


 「…すいません、失礼な態度をとってしまって。空腹で死にかけてるところを助けてもらって、それだけでもたいへんな恩があるのに、その上でこの先俺が生きていく道を用意することまで提案してもらって…。俺が差し出せるものなら何でも差し出して恩返しをしたいですけど、俺なんかが何をやってもとても返し切れそうにないですよ」


 語調を和らげた伊奈岐に浦須は僅かに肩の力を抜いて非礼を詫びた。同時に『持たざる』自分の無力さに肩が落ちた。

 恩の大きさを考えれば考える程、自分ができることが如何に限られているか気づかされる。

 これまで意竺の屋敷の中か、せいぜいその周辺というごく限られた狭い世界の中でしか生きてこなかった現状一文無しの浦須。

 それに引き換え、商家として成功し、欲しいものがあれば自らが培ってきた財力や人脈、交渉術をもって手にする事ができる伊奈岐。比較にさえなっていない浦須が、伊奈岐に対してできることなど実際あるのだろうか。


 すると、伊奈岐は先程浮かべた苦笑のまま、「それなら」と続けて、


 「お前さんは一度私にお礼をしてくれようとしたじゃないか」


 伊奈岐の言葉に浦須はハッとする。彼女が自分に求めているもの、それが何なのかわかった気がした。

 伊奈岐が浦須を助ける見返りに要求するもの、それは、


「ーーーお母上の形見、その種を私に譲ってくれないかい?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 意竺の屋敷で働き始めてからしばらくのこと、浦須は主人の意竺から将棋を教わることがあった。骨董ほど熱を上げている訳ではないが、意竺は将棋を差すのも好んでいるようで屋敷に訪れた客人や取引相手と差したり、浦須を含む使用人たちに将棋を教えて相手をさせることがあった。

 そんな風に主人の相手を務めて何度目かの頃、あっけなく詰まされて負けた浦須に向けて意竺は徐に話し始めた。


 『ーーーいいですか。戦術や戦法以前に君はそれぞれの駒の価値や特性がわかっていないようです。これは将棋でも商売でもなんでもそうですが、その物の本質的な価値を誰よりも早く、誰よりも多く、誰よりも正しく知る者が勝利も成功も収めるものなんですよ』


 意竺と何度か差す中で浦須は基本的な駒の動かし方や簡単な陣形を組むことくらいならできるようになっていた。だが意竺が言及しているのはその先だ。

 各駒に求められる動きや働きは戦局や場面に応じて様々変わっていくわけだが、駒それぞれの本質的な価値を把握していなければ、たまたま良い手を打つことができはしても、その局面毎、盤面が切り替わる都度に最適な手を打ち続けることは土台無理な話だろう。もっとも『勝負手』というものがあるように、相手に勝つためには相手の裏をかいたり、意表を突くような勝敗を決するための一手が必要なわけで、ただ単に最適手を打ってさえいればいいということでもないが、勝負手にせよ、最適手にせよ駒の真価を知らなければ思うようには打てない上、それよりも多くの凡手や悪手を拾われて負かされるのがオチだ。

 実際、意竺と差しているときは終盤に差し掛かるにつれ、駒を打つ場所がだんだんとなくなり、自分の意思ではない相手の思惑によって限定された場所に打たされているような感覚に沈みながらいつも敗着していた。


 『商人・伊奈岐』と対峙している現在、浦須が抱く感覚はその時の感覚に近い。

 伊奈岐の提案は、現在の浦須にとってある意味理想的に過ぎる。

 周辺一帯の権力者である意竺の不興を買い、誰一人として手を貸す者がいない中で差し伸べられた手は、このまま密やかに誰彼に構われることなく干からびて消えるしかなかった身に、一命を繋ぎ止める食い扶持を与えただけでなく、意竺の目から遠ざかるための隠れ蓑まで提供しようとしてくれている。さらには、表向きにこそ出来ないものの、浦須にとっては後ろ盾ができることになる。何の力もない、頼りにする者もない現在の浦須にとって、伊奈岐という後ろ盾ができることの意義は非常に大きいといえる。

 しかし一方で、そんな浦須の生死でさえ実質的に握っている伊奈岐が浦須を生かすことに代わって要求しているのは母の形見の奇妙な植物の種である。まともな見方、かどうかは置いておくとして、浦須からすれば大した代償も払わずにほとんど丸儲けしてしまうような条件に思える。

 もちろん浦須にとってこの種は亡くなった母が残した遺産であり、かけがえの無い『形見』には違いない。ただ一方で浦須以外の他人から見れば『ただの奇妙な植物の種』でしかなく、実際、浦須自身でさえも母の形見でなければ、とうに手放していたかもしれないくらいには、手持ち無沙汰にしていたのだ。

 伊奈岐にとっては浦須の一命の価値など大したものではないのかもしれないが、それにしても交換条件として適正であるとは到底思えない。


 ーーーそう、それが『ただの奇妙な植物の種』でしかなければだ。


 「…この種のこと、何か知ってるんですか?」


 意竺との対局の中で培われた敗着の感覚が浦須に疑心を齎していた。一見すれば浦須にとってこれ以上ないくらい好条件の取引。だがそれは天秤の片側に乗っているものが、外見が少し変わっているだけのただの植物の種であった場合の話だ。この種の本質的な価値を伊奈岐が知っていて、それが浦須の一命と秤にかけてもなお伊奈岐の側に傾くものだとしたらどうか。形見の種が持つ本質的な価値を知らなかったが故に、本来浦須が得るはずだった何らかの恩恵が得られず、挙げ句の果てにかけがえのない母の形見を結果として丸損で手放すことになるのではないか。


 「……いや、でもなぁ…」


 疑心に駆られる浦須だが、一方で相手は自分の生き死にが掛かっているかもしれない取引に対する返答を求めているのに、こちらからも別の投げ掛けをするのは流石に無礼が過ぎていたか。あるいは自分がこの取引に興味を示していない、もしくは真剣に向き合っていないと思われる可能性もあるが、それは避けるべきではないか。


 浦須の頭の中で疑心と反省の堂々巡りが繰り返されていると、


 「おや?『それだけでいいのか』とは訊かないんだねぇ」


 質問に質問を重ねる形になった浦須に、しかし伊奈岐は気分を害するでもなく、少し意外そうに片眉を上げるに留まった。「そこまでお前さんもお人好しじゃないか」とひとりごちている伊奈岐の様子には浦須に対する悪感情は見受けられない。


 「…はい。元主人の教え、ですかね」


 伊奈岐の顔色を窺いながらの浦須は気もそぞろに答えた。良くも悪くも、意竺に負かされ続けた結果が浦須に疑う心を持たせ、この種の価値に対する問いを生んだといえる。普段から誰彼の言う事を鵜呑みにして騙されやすい自覚のある浦須にとっては僥倖ともいうべき経験則を元主人は与えていたのやも知れない。


 「…いや流石にない。将棋を差す相手が欲しかっただけでしょ」


 意竺には先見の明があると一瞬評価しそうになったが、先見の明がある者が怒りに身を任せて使用人を叩き出すなどする筈がない。即座に否定だ。

 ……それはさておき、この種のことを聞いたのはなにも疑心のみでのことではない。むしろ、もっと純粋に、


 「知りたかったんです。この種のこと。母が遺したこの種がどんなものなのか。どうして俺の元に届けさせたのか。それが分かれば母に何があったのか、分かる気がするんです。そうすれば、俺は…」


 「お母上のことを許せるかもしれない、かい?」


 「……許せるかどうかはわかりません。でも、何も知らない今は許すことも許さないこともどっちもできないと思うから」


 言葉尻を引き継いだ伊奈岐に浦須は少し黙考してから答えた。


 母の『死』には謎が多い。


 浦須は母が死ぬところを直接見ていないどころか、母の遺体すら確認していない。だと言うのに母が死んだことになっているのは、母と別れてから過ぎ去った十余年の歳月と母の最期について何か知っているはずの意竺の証言によるものだ。


 『ーーー君の母は死んだ。それは間違いないですよ』


 母の最期について尋ねたとき、意竺はいつもこう返してきた。浦須が何度尋ねようと、意竺の答えが変わることはなかった。具体性もなければ、明確な根拠もない。ただ、言い切りの形で伝えられるのは、何か隠し事があったとしてもそれを浦須に伝えるつもりがないからだろう。浦須に対してひた隠しにする理由については検討もつかないし、理解もできないが、そうして意竺が浦須に伝える意思を見せない以上、母の最期について知るためには意竺とは別の情報源をあてにする必要がある。

 そこで重要な鍵を握っているのがこの珍妙な種である。黒っぽい焦げ茶色の表面に、赤い模様が浮かび上がる異様な見た目をしたこの種を、母は忘れ形見としてどうして浦須に遺していったのか。母の最期に何があったのか。意竺が口を閉ざす理由は。そして、


 「―――母さんはなぜ死ななければならなかったのか」


 浦須の中で渦巻く、これら疑問の数々にこの種が関与している確証があるわけではない。ないが、浦須は直感として、この種について知ることこそ母の『死』の真相に近づくことができると半ば確信めいたものを抱いている。

 故に、この異様な見た目をした種を見た途端、目の色を変えた眼前の女商人に対して、種のことを問い質さないという選択肢は有り得ない。


 「お願いします!この種のこと教えてください!…それで、これを渡すかどうかはその後に決めさせてください…!お願いします!」


 姿勢を正し、強く目を見開いた浦須は直後、勢いよく頭を下げて、伊奈岐に懇願した。


 ーーーあまりに不躾な要求をしている。


 自覚はある。あるどころか、こんな事しか言えない自分自身の不甲斐なさや羞恥に悶え死んでしまいそうだ。だが、この種のことについて知る最初で最期かもしれない機会を逃すわけにはいかない。恥や自責の念に心を挫かれ、踏み止まってしまえば、これまでもこれからも母のことさえ知らない無知な自分のままだ。ーー愚かで哀れな子どものままではいけないのだ。


 「ーーーこいつは、遠く異国で産まれた果実の種」


 頭を下げたままの浦須に伊奈岐は軽く一息ついてから、溢すように呟く。

 そして、心なしか続く言葉に力を込めて、


 「ーーー名を『願い柿』。そう呼ばれているものだよ」




 


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