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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第96話:依頼主は精霊

「君は納得して灰の民の代表として掃討戦に出席してくれたじゃないか」

「そりゃそーだけどさー。冒険者として納得できないタダ働きは気分が悪いのっ! どうにかしてよ!」


 デス爺が去った今、灰の民の新族長となったサイナスさん相手にカンカンガクガク。

 そう、大事な用とは乙女のハートに多大な負担をかけたことに対する責任、早い話が慰謝料をぶんどること。

 『アトラスの冒険者』として参加したならもらえたはずの報酬が、灰の民として参加したがためにもらえなかったのだ。

 何て可哀そうなあたし。

 補償してもらわなければならん。


 サイナスさんだってもちろん昨日の事情は知ってるのだが、さりとて無い袖は振れぬわけで。

 いや、賢いあたしもその辺の機微はよーくわかる。

 けれどもヘタレのサイナスさんがどうオトシマエつけるつもりかなーと、興味を持ったのでゴネてみたのだ。

 金銭的な損失をエンターテインメントで取り返す精神だ。


「わかったわかった、これをやろう」

「あれっ? マジで何かくれるのか。全然期待してなかったのに」

「昨日のユーラシアの働きは格別だったからな。文句を言いたくなる気持ちはよくわかる」


 やけに物わかりがいいな。

 戸棚をゴソゴソ、何か出してきたぞ?

 クララが言う。


「あっ、これはレア素材『ささら雲母』ですよ」

「思ったよりいいものが出てきたぞ? くれるの?」

「ああ。よく働いてくれてありがとう。また頼むな」


 ゴネてみるもんだ。

 金額的には大したことないのかもしれないけど、新しいレア素材はアルアさんのところで強力なパワーカードと引き換えられるようになるかもしれないからな。

 楽しみが増えたぞ。


「こっちこそありがとう! 許す!」


 サイナスさんが真剣な顔になる。


「そのレア素材は村が逼迫したとき用の貯えの一つだ。受け取ったからには、村のために協力してもらう」

「何なん、後出しはズルくない?」


 サイナスさんが手を振る。


「いや、大したことじゃない。今回の掃討作戦の後処理についてね。カラーズの他の村へ話し合いに行かなきゃいけないんだけど、君について来て欲しいんだ」

「あたしが? どうして?」

「精霊使いユーラシアの大活躍は他の村でも評判になってるからさ。顔が利いて交渉しやすいだろう?」


 スーパーヒロインの手が必要なのだと言われると悪い気はしない。

 普段訪れる用などない他の村に、堂々と立ち入れるのは面白そうでもある。

 でもあたしも暇ではないしな?


「じゃ、黄と黒の民の村へ行く時に付き合う」

「十分だ。一番面倒なところだからね」


 サイナスさんも満足げだ。

 黄の民のモヒカン男フェイさんと黒の民のドレス少女サフランと知り合いになったところだしな。

 サイナスさんのお供で堂々と他色の民の村を訪問できるなら、あたしにとってもメリットだ。


「で、いつ行くのかな?」

「具体的な日付が決まってるわけじゃないんで、君に合わせるよ。この先一〇日間くらいで都合のいい日を二日教えてくれ」

「えーと……」


 石板クエストの配給復活はいつになるんだろうな?

 ちょっと見当がつかないので、雑事は早めに終わらせておきたいが……。


「黄が明日、黒が明後日でどう?」

「オーケー。では明日明後日の午前中に来てくれ。

「ん、わかった」


 黒の村行きが明後日となれば、明日の夜はバエちゃんとこで焼き肉だな。

 まよねえずの詳しいレシピ教えてもらおーっと。


          ◇


 転移の玉を起動して帰宅、さらにチュートリアルルームに飛び、バエちゃんに明日夜の来訪を告げた。


「お肉をたくさん持ってくるからね。あ、それからまよねえずのレシピと作り方教えて欲しいんだ」

「うん、わかった。用意しておくわ」


 バエちゃんが嬉しそうに続ける。


「昨日、魔物の掃討戦があったでしょ? 鬼神のような戦いぶりだったって聞いたよ?」

「一五歳の可憐な女子に『鬼神のような』って形容はどうなんだ。いや、働いたのは確かだけど、聞くも涙語るも涙のエピソードが付属してるの。聞いてる?」

「何それ、知らない」

「明日、楽しみにしてて」

「ええ」


 転移の玉を起動して帰宅、うちの子達に声をかける。


「ギルド行くぞーっ!」

「ユー様、御飯の用意どうしときましょう?」

「今日はいらないよー」

「「「?」」」


 不思議そうな顔をしているうちの子達を連れ、転送魔法陣の方へ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「おお、ユーラシアさん。身体は問題ないかい?」

「全然大丈夫だよ。それよりポロックさんが『チャーミング』って褒めてくれないと物足りない」

「ハハッ。元気なようだね。よかったよかった」


 中に入るとすぐ、依頼受付所のおっぱいさんに呼び止められた。


「昨日の分配金の件は申し訳ありません。私どもの力が足りず、ユーラシアさんに迷惑をかけてしまいました」

「それはもういいんだよ。お、ギルドの職員さん達のせいじゃないから」


 危うく『おっぱいさんのせいじゃない』と言ってしまうところだった。

 今更だけど、おっぱいさんの名前知らないな?


「せめてものお詫びとしましてですね。デカダンスのドロップアイテムでありました魔宝玉『透輝珠』はユーラシアさんに差し上げるということに決定いたしましたので、ぜひお受け取り下さい」

「いいの? ありがとう!」


 透輝珠を受け取った。

 これは初めて見る魔宝玉だな。

 透明で中にきらきら光るものが含まれていてとても綺麗だ。

 結構高価なんだろうな。

 今おゼゼがほとんどないから嬉しい。


 おっぱいさんが話を続ける。


「もう一つ要件が。ぜひユーラシアさんに請けていただきたい依頼があるのです」

「請ける人指定の依頼ってのもあるんだ?」

「実績のある冒険者にはたまにあるんですよ」


 実績のある冒険者か。

 メッチャこそばゆいなあ。

 あたしは『アトラスの冒険者』歴まだ二八日なのに。


「ただこの案件は特殊でして。依頼主が精霊なんです」


 精霊か、ならあたしが請けるべきだな。

 精霊は人間嫌いなのに、よくギルドに依頼しようなんて考えたもんだ。


「精霊が依頼してくることもあるんだね」

「いえ、当ドリフターズギルド始まって以来のことです。この方なんですが」


 おっぱいさんが後ろの案山子を指差した。

 え? 自律タイプじゃなくて依り代タイプの精霊なんだ?

 予想外にも程がある。

 どうやってギルドまで来たんだろ?

依り代タイプの精霊とは、依り代となる物体に憑いている精霊のことです。

人間嫌いなのは変わらないので、割と気付かれません。

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