第59話:パワーカード『癒し穂』
――――――――――一九日目。
フイィィーンシュパパパッ。
「アルアさーん、おっはよー」
「はいよ、アンタはいつも元気だね」
翌日、日課を終えてアルアさん家へ来た。
「あたしはオールウェイズ元気だな。素材の換金お願いしまーす」
「随分な量だね。ん? レア素材『クラムボン』があるじゃないか」
「昨日のクエストで報酬としてもらったんだ」
素材を交換すると、交換ポイントは三〇四になった。
ふつーのパワーカードは大体一〇〇ポイントで一枚と引き換えられるから、三枚分のポイントと考えていい。
「交換レート表だよ」
レア素材もあったし、どんなカードと交換できるようになったか楽しみだ。
どれどれ、今交換できるのは、と。
<五〇ポイント>
『逃げ足サンダル』敏捷性+一五%、回避率+五%、スキル:『煙玉』
<一〇〇ポイント>
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『ボトムアッパー』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+七%
『ルアー』狙われ率+五〇%、防御力+一五%、魔法防御+一五%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
『火の杖』魔法力+一五%、スキル:『プチファイア』
『マジシャンシール』魔法力+二〇%、MP再生三%
『シンプルガード』防御力+二五%、クリティカル無効
『鷹の目』命中率+五〇%、攻撃力+一〇%、敏捷性+五%
<一二〇ポイント>
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
<一五〇ポイント、一枚限り>
『癒し穂』魔法力+二五%、スキル:『些細な癒し』
新たに交換できるようになったパワーカードは、『火の杖』『マジシャンシール』『シンプルガード』『癒し穂』『鷹の目』と五枚もある。
その内『癒し穂』と『鷹の目』は初めて見るカードだ。
「ユー様、この『癒し穂』いいですね」
『癒し穂』は魔法力の補正が非常に大きい。
それだけじゃなく、装備時に使用できる魔法『些細な癒し』がかなり高性能なのだ。
戦闘中のみだけど、何とマジックポイントを使用することなく全体回復できる。
もちろん回復幅はリカバーより小さいらしいけれども。
あたしの持ちスキル『雑魚は往ね』と相性がいいのも素晴らしい。
『雑魚は往ね』は溜め技だけにパーティー全員に行動機会がある。
『雑魚は往ね』が発動する前に『些細な癒し』で全体回復が可能になりそうなのだ。
『癒し穂』を持っていれば、あたしが昨日覚えた全体回復魔法『リフレッシュ』と合わせて、回復手段は万全に近くなる。
「アルアさん、この『癒し穂』は結構な上物だね。これってひょっとしてレア素材『クラムボン』があったから?」
「ああ、そうだよ。ちなみにレア素材の交換対象になるカードは一枚限定だよ」
「……とゆーことは『癒し穂』は一枚限り?」
「だね。どうする? 交換していくかね?」
「『癒し穂』だけ交換してもらいまーす」
なるほど、製作にレア素材を使うパワーカードのポイントでの交換は一枚限りか。
まあアルアさんも商売だから仕方あるまい。
レア素材はなかなか手に入らないだろうしな。
それくらいの制限があった方が面白いとゆーものだ。
『癒し穂』はクララに装備させた。
残り交換ポイントは一五四となる。
「まだ交換できやすぜ」
「わかってるけど、もう一つピンと来んのだもん」
「『スナイプ』どうでやすか? 洞窟コウモリ対策に必要かと思いやすが」
「お肉と言えばあたしが何でも聞くと思うな。いや、遠距離攻撃が可能になる『スナイプ』はいいカードで、いずれ必要だとは思うんだけどさ。今はまだ敏捷性の関係で洞窟コウモリ逃げちゃうじゃん。先手取れるようになったら交換しようよ。確実にお肉を狩れるからね」
「ああ、姐御はそういう考えでやしたか。納得しやした」
後衛陣の守りが薄いままで、物理攻撃系のカードを充実させるのも何だしな。
クエストの関係で特定のパワーカードが欲しくなるかもしれないし、一枚は交換できる余地を残しておくことにした。
アルアさん家の外で、試闘と小遣い稼ぎを兼ねて少々魔物を倒していく。
昨日、帰宅時のクエスト完了ボーナスによるレベル上昇で、あたしは『マジックアロー』と『リフレッシュ』の二つの魔法を覚えた。
『マジックアロー』は単体対象の無属性攻撃魔法で、飛行魔物に対して強いという特性がある。
クララによると、魔法力の高い発気術所持者が覚えるというけど、あんまり使いではないかな。
もう一つの『リフレッシュ』、ハッキリ言ってこいつはすごい。
『些細な癒し』とは逆に非戦闘時にしか使えないという縛りがあるが、『ヒール』くらいの消費マジックポイントで、パーティー全員のヒットポイントを最大値まで回復できる。
『雑魚は往ね』に続き、これまたクララが驚いたくらいの超レアなスキルだ。
ちなみにこの『リフレッシュ』は、習得条件が全くの謎だそうな。
まあ姐御だからなあとアトムが呟き、クララとダンテが納得していた。
よせやい、照れるじゃないか。
その他アトムが『迷信拘束』を、ダンテが『スパーク』を覚えている。
『迷信拘束』は全体攻撃バトルスキルで、麻痺と混乱を付加させる特徴がある。
『スパーク』は全体雷魔法攻撃、安定して使えるだろう。
『透明拘束』もそうだけど、アトムは変な技覚えるよなあ。
おそらく『魔力操作』の固有能力を持ってるんですよ、とクララが言ってた。
そーいやアトムとダンテの固有能力知らないや。
いつか調べてもらお。
「さて、そろそろ切り上げてギルド行こうか。何か面白いことある気がするなー」
「そうでやすか?」
「ボス自身がインタレスティングなエレメントね」
「おいおい、あたしを面白女神みたいに」
微妙な顔すんな。
あんまり褒められてないのかな?
あんた達だって面白いことは好きだろーが。
『迷信拘束』の麻痺・混乱付加確率が、割と高いことが分かったのは収穫だった。
もっともうちのパーティーはあたしの『雑魚は往ね』が主力攻撃になるので、あまり使わなさそうなスキルではある。
回復魔法陣を使ってから、転移石碑を用いてギルドへ向かう。
『癒し穂』はダンテに装備させる手も確かにある。
でも敏捷性とスキルの発動順の関係で、ダンテ→アトム→クララ→華麗な主人公のあたし『雑魚は往ね』の攻撃順になる。
魔物の攻撃を食らってから『些細な癒し』が発動するのがいいから、クララに『癒し穂』を装備させているのだ。
うーん、ストラテジック!




