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第391話:『大器晩成』ヤバくね?

 エルマが聞いてくる。


「お姉さまは大変なクエストを請けていらっしゃるのですねえ。今話に出てきたイシュトバーンさんとはどういった方なのですか?」

「クソジジイだ。知らねえ方がいい」

「スケベジジイだよ。近寄らない方がいい」


 ピンクマンが噴き出し、エルマに説明する。


「ドーラ随一の大商人だ。一〇年ほど前に引退し、レイノスに屋敷を構えて隠棲しているが、今でも大きな影響力がある」

「ダンさんとお姉さまはそんなすごい方と知り合いなのですか?」

「好きで知り合ったわけじゃねえ」

「おもろい爺ちゃんではあるんだよ」


 近寄るなってのは本心ではあるけれども、機会があったらエルマにも紹介したいけどな。

 あ、そーいやエルマのことをイシュトバーンさんに少し話してあるわ。

 これはエルマがイシュトバーンさんに関わるフラグかな?


「さて、もう少し稼いでいこうか」

「たくさん稼いでいくの間違いだろ」


 アハハと笑いながら再び人形系パラダイスへ。


          ◇


「結局、魔境のこのトレーニングエリアに出現する人形系レア魔物はブロークンドール、クレイジーパペット、デカダンス、ウィッカーマン、未知の赤い人形系レアの五種ということか」

「うん。バラエティに富んでるねえ」


 せっせとブロークンドール、クレイジーパペット、デカダンスを狩りながら魔宝玉を稼いでいく。

 この人数だとウィッカーマンは逃げちゃうから、今日は見逃してやってる。

 藍珠と透輝珠を必ず落とすクレイジーパペットが一番効率がいいけど、逃げることもある。

 黄金皇珠以上の魔宝玉が欲しいあたし達にすれば、デカダンスを積極的に倒したいな。

 逃げないし安全だし経験値も高いし。


「ユーラシアは魔境は完全に一回りしてるのか?」

「何をもって一回りって言うかは微妙だな。大雑把に一回りはしてるけど、辺縁部はあんまり見てないよ。特に北辺東の探索はいい加減、ベースキャンプから南も行ったことないな。魔宝玉クエストが終わったら、もうちょっときめ細かく調べたいけどね」

「魔境の女だな」

「二つ名として格好いいかな? やった、クレイジーパペット三体だ。儲かるやつ!」


 軽口を叩きながら薙ぎ払い!

 あ、一匹も逃げなかった。

 ラッキー。 


「リフレッシュ! そろそろ戻ろうか。エルマ大丈夫?」

「全く問題ないです!」


 慣れない魔境で、しかも午前中から探索しっぱなしなのに案外体力あるな。

 ひょっとして『大器晩成』ってステータスの伸びも大きいのだろうか?

 真っ直ぐベースキャンプを目指して南進する。


「どの辺が魔境の女かって、こんな何もねえ場所なのに全然迷わねえところだよな」


 ダンが呆れる。


「迷いはしないな」

「魔境探索が精神的に疲れるというのは、方角を見失う恐怖もあるからだと思う」


 そんな恐怖ないわ。

 迷ったら転移の玉があるじゃないか。

 迷ったことないけど。


「色々思い出があるからかな。ここでこの香辛料が取れた、あそこであの素材が取れたって」

「満喫しているのですねえ」

「うん、楽しいよ。特に素材はすごくいろんなものが取れるから、エルマも装備が揃ったら来るといい。もう多分次にでも魔境行きの石板が出るんじゃないかな?」


 今日は『豊穣祈念』がメインで『実りある経験』をあまり使ってないが、それでもダンとピンクマンのレベルは六五を超え、エルマのレベルは四七となっている。

 もうエルマが一人で魔境に来ても、一体のオーガやケルベロス相手に苦戦することはないだろ。


「イビルドラゴンだ。ささっと倒すけど注意はしててね」

「「「了解」」」


 翡翠珠と一粒万倍珠ゲット。

 やったね、レアドロップだ。

 アトムが『逆鱗』二枚を毟ってくる。


「イビルドラゴンは『逆鱗』を二枚持つのか?」

「三枚のこともあったよ」

「ほう?」


 ピンクマンは学術的なところに興味持つなあ。

 ベースキャンプに向かってさらに南進。


          ◇


「ただいまー」

「皆さん、お帰りなさいませ。お疲れでしょう」


 オニオンさんがハーブティーを淹れてくれた。


「ペコロスさん、気が利くじゃねえか」

「おいしいです。ありがとうございます」


 時期的に随分風が冷たくなってきている。

 温かいハーブティーはホッとするなあ。


「オニオンさん、エルマは『大器晩成』の固有能力持ちなんだよ。どんなスキル覚えてるか知りたくない?」

「ほう、『大器晩成』とは数多くスキルを覚えるというレア能力ですね?」

「そうそう。『マジックポイント自動回復二%』も持ってるから、ひょっとすると両方持つがために習得するスキルもあるかもだけど」

「なるほど。エルマさん、教えていただけますか」


 ダンもピンクマンも興味津々だ。

 あたしもエルマがどんなん覚えるのか知りたいんだよな。


「はい、ええと覚えた順に『強撃』『反撃の防御』『薙ぎ払い』『経穴砕き』『煙玉』『ソフトブロッカー』『クイックケア』『閃光撃』『五月雨連撃』『霞の囮』『勇者の旋律』『アクアリカバー』『火の連続衝』『氷の連続衝』『雷の連続衝』『風の連続衝』『土の連続衝』『ドレインアタック』です」

「すげえな」


 ダンが素直に感心している。

 パッと聞いただけでも使えるスキルが多くね?

 知らないスキルもいくつかあるな。


「『ソフトブロッカー』『閃光撃』『霞の囮』『アクアリカバー』『ドレインアタック』の五つは知らないなー。解説のオニオンさん、よろしくお願いしまーす」

「『ソフトブロッカー』は味方全員の防御力と回避率を上げる魔法。『閃光撃』は『強撃』に正の速度補正がついたようなバトルスキルです。先制で強攻撃を叩き込むものですね。『霞の囮』は自分の狙われ率を大幅に上げ、さらに回避率と防御力も上げるバトルスキル。『アクアリカバー』は全体回復・魔法防御アップの魔法。『ドレインアタック』は攻撃を叩き込むと同時にヒットポイントを吸い取るバトルスキルです」

「……つまり単体強攻撃、全体攻撃、盾技防御技と、前衛に必要なスキルを一通り揃えてる上、支援も回復もできるってこと? 素の習得スキルだけで?」

「そうなりますね」


 ヤバくね?

 レベルアップが遅いデメリットはあっても、『ポンコツトーイ』装備してるから関係ないし。

 『勇者の旋律』はペペさんのオリジナルじゃないって言ってたけど、ここであのロマンスキルが出てくるとは。

楽しかったなー。

それにしても『大器晩成』はすごい。

成長が遅い欠点を有するだけはある。

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