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第384話:ウシの糞とウマの糞とヤギの糞

「将来は固有能力を生かして鑑定士をやってみたいんですよ」


 うちの子達とサイナスさん、アレク、そして赤の民の『鑑定』能力持ちビルカとともに白の民の村へ足を運ぶ。

 輸送隊員に適した白の民を探すためだ。


「だろうと思った。輸送隊員になりたいのもレイノスの事情を知りたいから?」

「はい」


 うん、カラーズだと鑑定士の需要はほぼないもんな。

 人口の多いレイノスを目指すのは当然。


「うーん、なかなか難しいんだぞ?」

「難しい、ですか?」

「鑑定士はあんまり評判よくないんだよねえ」

「どうしてでしょうか?」

「インチキとぼったくりが多いみたいなんだ」


 適当なことを言う占い師まがいの者が多いらしいのだ。

 かといって確実な能力者は、『強欲魔女』マルーさんのように、ぼったくりで毛嫌いされている者もいる。

 確実な『鑑定』能力持ちで、鑑定士として食べていける者はどれほどいるのか?


「そうなんですか……」

「いや、一人でやろうとすると、信用がないから難しいってだけだよ。レイノスでカラーズの産物の直販ショップ始めたら、その一角で鑑定士コーナーやってもいい。青の民セレシア族長が今度店を始めるから、頼む手もあるね。要するに誰かの委託で鑑定士業を行っておりますって感じにすれば、一人でやってるより怪しげじゃないでしょ?」

「なるほど!」

「だから今は信用を得る下積み期間だと思って協力してよ。ビルカの鑑定は確実だぜって評価が多くの人の中に確立されれば、商売にできるからね」

「はい!」

「輸送隊やってる内にいい伝手ができるかもしれないしね。あたしの実際会ったことのある人では、固有能力の強弱がわかる、発現してない能力の個数まで見えるって人がいるよ。もっと力のある人になると、発現してない能力が何なのか、発現させる条件までわかるなんて人もいるらしい」

「すごい人がいるんですねえ」


 ビルカが驚いている。

 あたしもドーラ一の鑑定士であろうマルーさんには会ってみたいのだが、機会がないのだ。

 交渉の手札がない内に会いに行くと、マウント取られそうな気がするしな。


「あんたもレベル上がると能力育つかもしれないよ。楽しみだねえ」

「はい!」


 白の民の村の門が見えてくる。


「白の民の門は広くて気持ちがいいねえ」

「そうだな。族長宅は正面突き当たりだよ」


 ああ、わかりやすいいい場所にあるんだな。

 真っ直ぐ進んで……。


「ぜんたーい止まれ!」

「な、何です?」

「いや、地面に違和感が……あ、落とし穴だ」

「「「落とし穴?」」」


 皆が驚く。


「ユー姉よくわかったね?」

「そりゃあたしは天才美少女冒険者だから」

「何だってこんなところに落とし穴なんか……」


 サイナスさんが首を傾げるが、あたしの疑問はそこじゃない。


「アレクどう思う?」

「何が? 落とし穴を掘った犯人の目的?」

「落とし穴に仕込んであるの、ウシの糞かな? ウマの糞かな?」

「ハイレベル過ぎる!」


 高度だったか、ってのは置いといて。


「見つけた!」


 井戸の裏に隠れていた怪しげな男を捕まえる。


「何すんだ! おめえら誰だ! この村のもんじゃねえな!」

「うん、白の民の村に来たのは初めてだよ」


 なりは大きいが子供だった。

 アレクより頭一つくらい背が高い。

 茶色と黒の斑が入ったような短髪が特徴的だな。

 ギャアギャア騒ぎ立てるのはスルーしてビルカと話す。


「この子良さげじゃない?」

「はい。『自然抵抗』の固有能力持ちです」

「嫌だなあ、こんなのと被ってるよ」


 『自然抵抗』は、沈黙・麻痺・睡眠の三つの状態異常にある程度の耐性があるというもの。

 あたしも『自然抵抗』持ちなのだ。

 落とし穴っ子が叫ぶ。


「質問に答えろ! おめえら何もんだ!」

「誘拐犯だよ。生きのいい悪い子をさらっていくんだ」

「な、何だと!」


 サイナスさんとアレクが笑いを堪えてる。

 あたしこういうの大好きだなあ。

 エンターテインメントの幕開けだ。


「君の質問に答えたから、あたしの質問にも答えなさい」

「何だ!」

「あんたがこの落とし穴を作ったんだよね?」

「そうだ!」

「この落とし穴に仕掛けてあるのはウシの糞? ウマの糞?」

「ウシの糞とウマの糞とヤギの糞のミックスだ!」

「ほう、なかなかやるね。考えてた以上にクオリティが高かった」


 堪えきれなくなったサイナスさんとアレクが笑い出す。


「もういいだろう。族長宅に行こう」

「この子持っていっていい?」

「お好きなように」

「やったあ!」


 落とし穴っ子を頭の上に持ち上げて進もうとすると、暴れてまたギャアギャア言いやがる。


「何すんだ、この怪力女が!」

「ハッハッハッ、クソガキだねえ」

「まったく。ユー姉が可愛く見えるよ」

「え? あたしは比較論じゃなくて絶対論で可愛いでしょ」

「やかましい、離せ! このオカチメンコが!」


 クソガキにもほどがあるだろ。


「……あたしにオカチメンコって言い放ったのはあんたが初めてだなあ。記念にミックス糞の穴にダイブする権利をプレゼントしよう」

「よせ、やめろ!」

「頭からがいい? 顔からがいい?」

「ユー姉、選択肢が狭過ぎる」


 サイナスさんが苦笑する。


「先に用をすまそう。糞まみれになった後、つきまとわれたんじゃかなわん」

「それもそーだな」


 サイナスさんの意見に従い、クソガキを担いだまま白の族長宅へ。


「こんにちはー」

「はい、いや、これはこれは大勢で」

「灰の民サイナスです。御無沙汰しておりました」

「や、サイナス殿でしたか。どうぞこちらへ」


 大きな広間に通される。

 白の族長はいかにも人格者という感じの白髪の老人だ。

 ルカという名らしい。


「今日、交易の輸送隊の人員選抜があったのですが、道中の安全のために固有能力を持つ者を選ぼうということになっているんですよ。ところが白の民から候補者として来ていた者達の中に、固有能力持ちがいなくてですね……」

「なるほど、固有能力持ちを出せということですな?」

「で、この子、もらっていっていいかなあ?」


 クソガキを担ぎ上げてるあたしを、超常現象でも見るような目で眺めるルカ族長。

 これがハンドパワーです(うそ)。

 レベルカンスト女子の常識なのだ。


「……あなたが精霊使いユーラシアですな?」

「そーです」

「お、おめーが精霊使いなのか」

「見ればわかるでしょ」


 精霊が三人もついて来てるだろーが。

サブタイトルがひどい。

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