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第360話:一三歳組のレベル上げ

 ピンクマンがレベルアップによってエルマの習得したスキルに感心している。

 

「ほう、実用的なスキルだな。『大器晩成』の習得スキルには興味がある」

「先が楽しみだねえ」


 『大器晩成』はレア固有能力のようだから、どんなスキルを覚えていくかということもあまり知られていないんだろうな。

 さっきのテストモンスターとの試闘を見てると、エルマが冒険者に向いてないことは確かだ。

 でも『強撃』を覚えたのなら、普通にやっていけるかもしれないな。



 アレクも報告してくる。

 嬉しそうだね。


「ユー姉、ボクも魔法覚えたよ」

「魔法系だったんだ。よかったねえ」

「ええと、『プチファイア』と『プチアイス』と『プチサンダー』」

「え?」


 変な魔法を覚えてるな。

 とゆーか『プチファイア』とか『プチアイス』って、ナチュラルに習得できる魔法なんだ?


「『小魔法』の固有能力だろうな」

「『小魔法』?」


 ノーコストの魔法をどんどん覚えていく固有能力らしい。

 ピンクマンが言うには、レアってほどではないが通常の属性魔法系能力よりうんと珍しいんだって。


「レベルが上がれば回復魔法『些細な癒し』も覚えると思う」

「悪くないな」


 『些細な癒し』が使える魔法であることは知っている。

 冒険者だと強敵と対するのに強い魔法が欲しくなる。

 でもアレクみたいな魔法の研究者にとっては、いろんな系統のノーコスト魔法覚えていくというのは、打って付けの能力なんじゃないかな。


「さて、どんどん行くよ!」


 今日はアレクとエルマ一三歳組のレベル上げが目的だ。

 ザコを倒しながら進む。

 クレイジーパペットがいるけど、ちょっとまだあの『フレイム』には耐えられないな。

 さらに中のドラゴン帯へ歩を進めると……いたいた。


「人形系の魔物?」

「そうそう。デカダンスだよ。あれ掃討戦の時の大ボスね」

「大きい……」


 エルマが抑揚のない声を出す。

 ピンクマンが気の毒そうな顔をしている。

 大方ユーラシアの非常識に当てられて可哀そうにとでも思ってるんだろう。

 非常識じゃないわ。

 まったく失礼な。

 

「あいつを探してたんだ。メッチャ経験値が多いから、レベル上げに最適でさ」

「ちょっとユー姉、大丈夫なの?」


 アレクも珍しく焦ったような声を出すけど、心配ないとゆーのに。


「デカダンスは敏捷性がないから、安全に倒せるんだよね。あたしは敬意を込めて『真経験値君』って呼んでる」

「何故だろう、敬意が微塵も感じられない」


 多分気のせいだよ。

 レッツファイッ!


 ダンテの実りある経験! あたしの通常攻撃! はい、オーケー。


「お姉さま、すごいです! たくさんスキル覚えました!」

「ボクも!」

「新しいスキル覚えると、強くなったの実感できるよねえ」


 これでアレクのレベルは二〇をゆうに越えてるはず。

 その後もう一体デカダンスを倒した。


「さて、最後にドラゴン倒して帰ろうか」

「「わあい、ドラゴンだ!」」

「おっ、テンション高いね。お姉さん張り切っちゃうぞー!」

「……」


 一三歳組はテンション上がってるけど、ピンクマンは無口だ。

 色々悟ったんだろう。


 それにしても、アレクのこのテンションは珍しいな。

 アレクは精神年齢が高いし、同年代の友達がいないからかもしれない。

 エルマと知り合えたことがいい影響を及ぼしてくれるといいな。


「はい注意! ドラゴンはさすがに強いです。一ターンで倒すけど、その前にドラゴンの攻撃が一回あります。攻撃があんた達に向く可能性もあるよ。でも今のレベルなら耐えられるから全力で防御して。わかったね?」

「「はーい!」」


 サンダードラゴンだ。

 おあつらえ向き。

 レッツファイッ!


 ダンテの実りある経験! アトムの挑発ハミング! 攻撃を強力に引きつける。サンダードラゴンの雷撃! アトムが受ける。あたしの雑魚は往ね! ウィーウィン!


「リフレッシュ! アトム、『逆鱗』剥がしてきて。さあ、二人のレベルをチェックしようか」


 エルマが二六、アレクが三二か。

 こんなもんだろ。


「帰還しまーす」

「「はーい!」」


          ◇


「ただいまー」


 急ぎベースキャンプに戻ってきた。


「お帰りなさいませ。お早いですね」

「うん、うちのパーティーのレベリングも効率を極めてきた気がする」


 これもラルフ君の犠牲があってのことだ。

 あの時は焦がしてごめんね。

 さてと。


「エルマ、これあげる」


 アレクが装備していた『ポンコツトーイ』を渡す。


「お姉さま、これは?」

「うちのパーティーで使っている装備品パワーカードの一種、『ポンコツトーイ』だよ。これを装備してれば魔物倒した時の獲得経験値が割増しされるから、あんたの成長が遅いという欠点はなくなる」


 エルマの顔がぱあっと明るくなる。


「チュートリアルルームに戻って、バエちゃんにカードの初期装備品もらってね。普通の武器防具より軽い分エルマに向いてるから。で、もう一度テストモンスターと戦って、感覚を掴んできなさい。ビックリするほど簡単に勝てるよ」

「はい!」

「二、三クエストを完了すると、ドリフターズギルドという冒険者の集まる場に行けるよ。ギルドまで来ればいろんな人に会えて、エルマの世界は必ず広がる。自分の道はじっくり決めればいい。次はギルドで会おう!」

「わかりました。ありがとうございました!」


 転移の玉を起動し、エルマが去る。


「ピンクマンにはこれあげる。今日の手間賃とでも思って」

「別にいらんのだが。……これは?」


 この前掘り出し物屋から買った『プチウインド』のスキルスクロールだ。

 今やチュートリアルルームで売ってるので、価値は減じたが。

 ピンクマンも買ったかもしれないな。


「サフランに」

「……ユーラシアは攻撃魔法が必要と見るのか?」

「必要じゃないに越したことはないけど」

「わかった。感謝する。さらばだ」


 ピンクマンも転移の玉を起動し、ホームへ飛ぶ。

 ピンクマンは帝国との戦いになることを知っている。 

 彼の言う『必要』とは、サフランが戦闘に巻き込まれる可能性を指しての言葉だったに違いない。


 しかしあたしの意味する『必要』はちと違う。

 ピンクマンがエルマといたところを、黒の民の誰かに見られていた可能性を考えていたのだ。

 サフランが知ったら悲しがるだろうしなー。

 でもピンクマンからプレゼントもらえば機嫌直すだろ。

 細かくフォローを入れるあたし偉い。

エルマは何にも気付いてないだろうけど、ピンクマンサフランを含めた三角関係は、傍から見てると面白いのだニヤニヤ。

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