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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第355話:悩みどころ

 コルム兄がエルに言う。


「レア素材の『逆鱗』と『巨人樫の幹』を持参ということなら、プラス一五〇〇ゴールドで作製するよ。それでいいかい?」

「ええ、お願いします」

「ではどのタイプのパワーカードを製作するか、次の三つから選んでくれ」


 一:通常攻撃に【衝波】属性が付き、さらに攻撃力+二〇%

 二:衝波属性の単体強攻撃のスキルが付き、さらに攻撃力+二〇%

 三:衝波属性の全体に五〇ダメージずつ与えるスキルが付き、さらに攻撃力+二〇%


「……え?」


 エルが戸惑っている。

 実によくわかる。

 あたしも全部欲しいって思ったもんな。

 そーだ、あたしもコルム兄に聞きたいことがあるんだった。


「コルム兄、これ三のやつだと、『攻撃力+二〇%』の代わりに『防御力+二〇%』とか『魔法力+二〇%』のアレンジ効く?」

「ああ。ユーラシアが言った程度の変更なら、製作期間を延ばすことなく可能だよ」


 やはりか。

 あたしもどういうカードが製作可能なのか、ちょっとわかってきたぞ。

 防御力や魔法力を上げられるなら、三は後衛が装備してもいいカードだな。

 人を選ばなくなるのは利点の一つだ。


「だってよ。さあエル、どうする?」


 考えながらエルが聞いてくる。


「……ユーラシアの装備している『アンリミテッド』は一だよな?」

「うん。大変気に入っております」

「ユーラシアはどういう理由で『アンリミテッド』を選択したんだい?」


 聞きたくはなるだろうな。

 ウィッカーマンみたいな超強い人形系を想定すると、前衛でも盾役よりエースアタッカーに装備させたくなるカードだからだ。

 レア素材を必要とするため手に入れづらいことを考えると、ふつーの武器系のパワーカード以上に万人向けではない。


「物理アタッカーにとっては最も応用範囲が広いからだな。うちではあたしが装備してるんだけど、あたしは武器属性を乗せられるスキルの『ハヤブサ斬り』系や『薙ぎ払い』のスキルを使えるんだよ。弱い人形系がズラッと並んだ時でも強い人形系を相手にする時でも、バッチリ効果を発揮できるから」

「なるほど、理由はあるんだな」


 普通なら一の『アンリミテッド』が一番使いやすいと思う。

 でもエルのパーティーの役どころって、あたしは知らないんだよな?

 チャグはスピードアタッカーか。

 コケシはヒーラーだろうけど、自分でも殴りにいきそう。

 エルとちょんまげは魔法メインなのか物理メインなのかすらわからん。


「単体強敵に対する衝波系スキルが欲しいなら二だろうね。三ならそもそも前衛が装備する必要さえない」

「ヒットポイント五〇以上の人形系レア魔物っているのかい?」

「あたしが遭遇した限りで二種類いる。でもそいつらデタラメにヒットポイント多いし、ダメージ与えるとすぐ逃げるから多分倒せないぞ?」

「魔物の図鑑にはもう一種載っていますよ。ヒットポイントが六〇~七〇ですから、『アンリミテッド』を装備していれば問題なく倒すことができます」

「ふうん……ユーラシアはそのデタラメにヒットポイントの多い人形系も倒せているんだろう?」

「あたしらはこういうカード持ってるから」


 行動回数一回追加の『あやかし鏡』、会心率+八五%の『前向きギャンブラー』、コピー攻撃を可能にする『刷り込みの白』を見せる。


「さっき言ってたデタラメ君の内一種は、これで『ハヤブサ斬り』系スキル使って八連続攻撃してその内七回クリティカルでようやく勝てるくらい。もう一種はこれでも勝てなくて、逃げられないところに追い込んでやっと勝てるくらい」


 コルム兄が呟く。


「『刷り込みの白』というカードは、オレも全く知らないカードだ」

「もらいものなんだ。この世にこれ一枚だろうって話。アルアさんも知らないカードだって言ってたよ」


 アルアさん曰く、お遊びで実験的に作ったものじゃなく、何かの目的があって作られたカードだとのこと。

 パワーカードにも歴史と執念を感じるなあ。

 エルが頷く。


「なるほどね。一を製作願います」


 うむ、通常攻撃で普通の人形系レアなら一撃だから、前衛に装備させればとりあえず役に立つ。

 『薙ぎ払い』を使えればさらにいいしな。

 今後得られるカードやスキルによっては、ウィッカーマンを倒せる可能性もある。


「了解だ。明日朝には渡せるよ」

「エルは午後にダンジョン潜るんだっけ?」

「午後というか、最近は早めにお昼を取って塔へ行くパターンが多いな。食堂の混む時間を避けているんだ」


 人嫌いの精霊に配慮してるのか。

 エルのお仕事まで時間があるので、ちょっと立ち話だ。


「いーなー。あたしら予定入っちゃうから、空き時間にクエストって感じ」

「今日は何しに来たんだい」

「レイノスで大仕事が終わったから、こっちの皆の顔見に来たの。今日、向こうは雨ってこともある」

「ああ、塔の探索に雨は関係ないしな」


 ダンジョン以外のクエストは雨だと厳しい、ということに気付いたようだ。


「レイカやリリーも午後なんだ?」

「レイカは午後が多いけど、時間は比較的バラバラだな。リリーは毎日昼近くまで寝てる」

「なるほど」


 性格出てるな。

 レイカは気分の盛り上がった時に塔へ行くんだろう。

 リリーはお嬢だから、朝から齷齪しないのかな。

 単に寝坊なだけなのかもしれないが。


「アレクがこっちに来てるって聞いたんだけど?」

「ハゲのところにいると思うが」


 エルはデス爺に対して意外と当たりがキツいんだよな。

 どーしてだろ?


「アレクはエルのこと好きなんだってよ?」


 はい、ぶっちゃけました。

 もたもたしてると話が展開しそうにないので。

 あれ、エルさん照れるでも慌てるでもありませんね?


「どう思う?」

「どうもこうも。慕われるのは嬉しいけど、ボクはこの世界の人間じゃないから。おまけに彼はまだ子供じゃないか」

「世界は関係なくない? 誰も気にしてる人いないし」

「ボクが気にし過ぎなのかな……」


 エルがゴーグルを外しても普通に暮らせる日が訪れるのかはわからないが。


「子供ってとこだけが問題なの? 他に誰か好きな人がいるとか?」


 コケシ、チャグ、ちょんまげが一斉に視線を向けてくる。

 えっ、エルのラブ話?

 聞かざるを得ないじゃないか。


「面白くなりそうだからアレク呼んでくる! 食堂行ってて」

「えっ? ちょっと待って!」

「待たない!」

ラブい話は心の清涼剤。

おゼゼの話は心の活力剤。

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