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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第34話:知恵熱が出そーだわ

「お帰り、かなり粘ってたじゃないか。ここいらの魔物も十分倒せるようだね?」

「うん、頑張った。レベルも上がったんだよ」

「かかかっ、そりゃあよかった。素材を換金していくかい?」

「お願いしまーす」


 おお、結構な金額になった。

 もっともスライム爺さんのところで素材を買ったから、財布はほぼ空に近い状態だったけど。

 交換ポイントは一〇二か。


「よしよし、『逃げ足サンダル』と交換してくださーい」

「あいよ」


 『逃げ足サンダル』のパワーカードを手に入れた。

 パワーカードは一人一回で七枚まで起動できる。

 七枚の装備枠を埋めるのはまだまだだけど、少しずつでもカードが増えていくのは嬉しいなあ。

 残り交換ポイントは五二となる。


「アタシのクエストは完了だね。これを渡しておくよ」


 何だろ、紙?

 あ、パワーカードの交換レート表か。


「あー待て待て。今アンタらから受け取った素材で製作できるカードはここまでだ」


 アルアさんが交換レート表にチェックをつけていく。

 

 <五〇ポイント>

 『逃げ足サンダル』敏捷性+一五%、回避率+五%、スキル:『煙玉』


 <一〇〇ポイント>

 『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%

 『シールド』防御力+二五%、回避率+七%

 『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効

 『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%


 <一二〇ポイント>

 『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』


 既に持っている三種のカードの他、知らない三種のカードがラインナップされている。

 中でも目を引くのが『サイドワインダー』だ。

 『スラッシュ』と同じく斬撃の攻撃属性と攻撃力上昇効果があるのに加え、装備時にバトルスキル『薙ぎ払い』が使えるのだ。


「何これ、『スラッシュ』の完全上位版じゃないの?」

「いや、『サイドワインダー』の攻撃力上昇効果は、『スラッシュ』より小さいんだよ。ボス戦のような攻撃力重視の場面なら『スラッシュ』が上さね」


 なるほど、使い分けが重要か。

 クララにこそっと聞いてみる。


「ねえクララ、『薙ぎ払い』ってどんなスキルなの?」

「ノーコストの全体攻撃スキルですよ。ただし、個々のダメージは通常攻撃よりも少し低くなり、クリティカルも出ません」


 いや、ノーコストの全体攻撃スキルってだけで十分強い。

 でも今のあたしらの戦い方は、『ハヤブサ斬り』と『マジックボム』がメインだ。

 これを『薙ぎ払い』に変えると、与える総ダメージは多くなっても最初の一ターンで倒せる魔物が減って、却って食らうダメージ多くなっちゃうのか?

 そもそも魔物の数の多い群れとなんか戦わないし。


「うーん、難しいな?」

「考え始めると面白いだろう?」

「知恵熱が出そーだわ」

「例えば攻撃力の高い前衛メンバーに攻撃力・敏捷性アップと『サイドワインダー』を固めて装備させ、先制で全体大ダメージなんてこともできるよ。ザコ魔物相手ならね」

「むーん?」

「後衛の魔法による火力も計算に入れるなら、交換コストの安い『逃げ足サンダル』を全員に装備させることを優先させてもいい。先制ワンターンキルできる魔物のみを相手にして、回復魔法陣でマジックポイントを回復させるというのを繰り返すのが効率がいいかもしれない」

「ええっ? ちょっと待って! 頭ぷしゅーってなっちゃう」

「かかかっ、よく悩むことさね。新しい素材を手に入れたら新しいカードを製作可能になるよ。どんどん持っておいで」


 パワーカードは頭を使う装備品だなあ。

 あたしは思っていた疑問を口にした。


「あたし達しかパワーカードの使い手がいないということは、カードを買う人もいないんじゃない?」

「心配するでないよ。好事家や研究者が買ってくれるさね。レイノスではお守りに身につける人もいる」

「へー」


 あたしとクララもお守り代わりにしていたことを思い出した。

 単なる神頼み品より確実に利があるもんな。

 でもパワーカードは贔屓目なしに軽くて便利だと思うけどなあ?

 もっと装備品として普及してもいいのに。


 アルアさんがため息を吐く。


「アタシらにとっちゃあ、何より素材の調達が難問なんだ。パワーカード製作は素材をバカ食いするからね。素材を市場で仕入れてたんじゃ、とてもやっていけやしない。しかし買い取り価格、つまり市場の売値のほぼ半額で仕入れることができるなら十分儲けが出る。だからポイント制でお得感を演出する、なんてことして冒険者を優遇してるのさ。今じゃアンタらしか当てがないがね」


 しわの奥の柔和な目があたしを見つめる。


「よーくわかったよ。どんどん素材持ってくるね」

「期待してるよ」


 高価な素材を持ってき過ぎてパンクなんてことはないのかな?

 いや、高価な素材を使ったカードは、当然高く売れるか。


 ん? クララどーした。

 クララが小声であたしに囁く。

 ……それが気になるんだ?

 アルアさんに聞いてみる。


「この交換レート表に書いてないパワーカードは、どういう扱いになるのかな? 例えばあたし達は『エルフのマント』というカードを持っていて、この中に記載されていないんだけど」

「アタシが知っていて作れるパワーカードは、渡した表にあるものが全てだね。それ以外のカードは、アタシ以外の誰かが作ったオリジナルか、あるいはとうに製法が失われてしまった過去のものだろう」

「……ということは、パワーカードは他にもある?」

「あるね。アタシの婆様がパワーカードの創始者ロブロ師の直弟子でさ。発想のおっかしなカードばかり作ってた。アタシゃロブロ師の理論からなるパワーカードは、かなり忠実に受け継いでるつもりさね。それでも婆様のカードは何がどうなってるのか、理屈がまるでわからないねえ」

「ふーん、ますますパワーカードは面白いねえ」

「面白いときたか。アンタは大物だねえ」

「うん、よく言われる」


 かかかと、アルアさんは今日一番の大声で笑った。


「じゃあ今日は帰りまーす。アルアさん、さようなら。コルム兄もさよなら」

「おう、またおいでよ」


 二人の笑顔に見送られて転移の玉を起動した。


『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』


 またレベルが上がって全員八になった。

 クエスト完了後毎回レベル上がってるけど、ボーナス経験値ってかなり大きいんだろうか?

アルアさんの婆様はアリアさんと言います。

ユーラシアの時代に製法の伝わっていないアリアさん作のパワーカードも、本作にはいくつか登場します。

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― 新着の感想 ―
ロールプレイングゲームの様に主人公たちの様にLevelUpしている物語、ストレスなく読み進めます。
[良い点] パワーカード、色々な組み合わせをすることで戦術の幅が広がっていくのがとても面白いです。 これから色々なカードが出てくるのかと思うと、わくわくします。
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