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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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332/2453

第332話:クジラ船から

 ――――――――――七三日目。


 翌日、海の王国にやって来た。

 レイノスの魚取り引きに付き合わないと。

 特別揉めそーな雰囲気はないけどな。


「レイノスは人口が多いからね。まだ試験段階だけど、売れるようになればどーんと売れるよ」

「楽しみじゃのう」


 女王が商売人の表情でホクホクしてるよ。

 地上と海の王国とで交易が活発になると、海の珍しい物品も地上で手に入るようになるかもな。

 またレイノスの住民の亜人差別も緩和されるに違いない。

 ドーラの発展には各種亜人の協力が必要なんじゃないかと、あたしのカンが告げているのだ。

 今後が楽しみだなあ。


「昨日、レイノスで料理人集めて講習会やってさ。料理人には魚フライのおいしさをわかってもらえたんだ。で、明後日フェスやって、魚はこんなに美味いんだってのをいっぺんに広めるよ」

「何から何まですまんの」

「いいんだよ。友達じゃないか」


 地上にとっても海の王国にとっても利益であるしな。

 ウィンウィンってやつだ。

 魚人兵士から声がかかる。


「女王陛下、用意ができ申した」

「じゃ、行ってくる!」

「うむ、よろしゅう頼むぞ」


 女王に別れを告げ、兵士、漁師達とともにクジラ船に乗り込む。

 ハッチという名の口が閉まり、いざ出発だ。


「場所はわかるよね?」

「うむ、クジラ船を停泊できるところなど、他にないのでな」

「あ、やっぱそーなんだ」


 有名な場所みたい。

 でも海底の城って、塔の村から海岸出たとこの沖なんだよね?

 このクジラ船ってメチャクチャ速いんじゃない?


「クジラ船って速いよねえ」

「速いですぞ。一時間に三〇〇バークーンは進みますな」

「おっと、魚人の距離の単位はわかんないんだった」


 海の王国から岸まで二バークーンだったか?

 カラーズから塔の村まで強歩四日くらいの距離はあるはずだ。

 初めてクジラ船で海底城に連れて行ってもらった時、大して時間かからなかったしなー。

 クララの全速『フライ』並みのスピードかも。


「商取り引きに兵士さんがついて来るんだねえ」

「町人にはクジラ船を操縦できぬゆえ」


 いやこれどうやって操縦してるの?

 謎が多いな。


「もうすぐ到着です。徐々に減速し、浮上いたしますぞ」


 がぽっという音とともに揺れる。

 水面に出たのだろう。

 静止しハッチが開く。


「美少女精霊使い参上! おまたせー、あれ、ソル君じゃないか?」

「ユーラシアさん、クジラからですか?」

「うん。ま、いいや。商売商売。おーい、魚全部出して!」


 よーし、料理人さん達も皆来てるね。

 取り引き開始だ。

 魚人の商人は気のいい人が多いよ。


「じゃあ買っていってね」


 皆がワラワラと魚に群がり購入していく。


「……全体的に安いな」

「でも五ゴールドじゃ量はあまり出せないですよ」

「精霊使いさん、これはどうやっておろせばいいかな?」

「これ昨日講習会の時の、最初にフライにして試食した魚ね。シイラってやつ。クララ、手本見せてやって」


 クララが持参の包丁でゆっくり丁寧に捌く。


「わかった? あたしも魚に詳しいわけじゃないから、なるべくプロに聞いてね」


 あちこちで魚人の漁師さんや商人さんとのコミュニケーションが図られ始める。

 うんうん、いいことだね。

 話してみれば魚人だって良識ある普通の人だってことがわかるだろ。


「ところでラルフ君がヨハンさんに護衛しろって言われたのは想像つくけど、ソル君パーティーがいるのは何で?」

「いえ、師匠がいらっしゃらなかったので……」

「トラブルになると押さえられないからと、泣きつかれたんです」

「おー、ドラゴンスレイヤーは頼りになるねえ」

「ユーラシアさんだってドラゴンスレイヤーじゃないですか」

「そーだ、あたしも偉かった」


 ラルフ君が聞いてくる。


「どうして師匠は海から来たんです?」

「ん? 海の女王に話があったからだよ」

「で、本当は?」

「クジラから登場した方がドラマチックかなと思って」


 ラルフ君、そこにツッコむとはなかなかやるね。

 大分あたしというものを理解してきたようだ。

 アンが言う。


「ラルフが心配していたんだ。ユーラシアさんが来ないって」

「いや来るってば。海の王国とレイノスの食堂の店主の両方に面識あるの、あたししかいないし。今日の魚発注したのあたしだから、残れば買い取るし」

「ええ、今いないのは海から来る証拠だって、我達は言ってたんですけどね」


 セリカが頷いている。


「何だラルフ君、そんなに寂しかったのか。ごめんよ、気付いてやれなくて」

「どうして自分が可哀そうな子になってるんですか!」

「可哀そうな子だとは思ってないけど、寂しがりなのかなあと。パーティー皆で同じ布団で寝てるくらいだし」

「「「「同じ布団じゃありませんよ!」」」」


 アハハと笑い合う。

 冗談だとゆーのに。


「あ、魚全部売れたみたいだね。じゃあ明日の分の注文していって」

「木ノ葉亭です。サワラ五尾、シイラ一尾で」


 おお、魚の種類も覚えてるね。

 進歩が著しいわ。

 全ての店が注文を終える。


「さて、魚取れなかったケースを決めとこうか。もし注文した魚が取れなかった場合はどうする? キャンセルにしとく? それとも他のフライ向きの魚を同じ値段分だけ入れといてもらう?」


 全店が後者を選択しました。


「今後の取り引きの時間は今日くらいでいいのかな?」

「あ、もう二時間くらい早い方が都合がいいぜ」


 店側の皆が頷く。


「じゃあ明日から二時間早くお願いできる?」

「もちろんで」


 とりあえずいいかな?


「他何か要望があったら、今の内言っといてね」


 特にないようだ。

 今日初日だからな。

 またおいおい、あーしてくれこーしてくれってなるんだろうけど。


「本日はここまで。いい取り引きでした。ありがとうございました」

「「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」」


 無事終了。

 魚人達がクジラ船で帰ってゆく。

 めでたし!


「では、自分は皆さんを送っていきますので」

「御苦労様。ラルフ君達はフェスまでは護衛なの?」

「はい」

「明日からはあたし達来ないけど頑張れよ。商売上の揉め事は放っといていいから」

「え、放っとくのですか?」

「商人の戦場にわざわざ冒険者が出張るなよ」


 いらんことはしなくていいんだよ。

 余計に揉める元になるからね。

 いや、どっちかとゆーとあたしは揉め事は好物だけれども。

意表を突いてあたし登場!

とゆーやつは結構好み。

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― 新着の感想 ―
[一言] フライなのにアジが居ないだと サワラも美味しいけど シイラは東日本の住人には縁が薄い
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