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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第318話:細工は流々

「別に送ってくれなくてもいいんだが」

「遠慮しなくていいよ。サイナスさんは灰の民のVIPだからね」

「オレのことお供って言ってたじゃないか」

「そーだったっけ? 素直になれない乙女心がつい邪険にしてしまう」

「姐御の場合、どっちが素直な発言なんだかわからねえ」


 アハハと笑い合う。

 黒の民黄の民の用を終え、サイナスさんとともに灰の民の村へ帰る途中だ。


「異常なほど展開が早い。驚いたよ」

「フェイさんだもんねえ。できる男はああいうもんだわ」


 新醸造ラボの建築打ち合わせのために、フェイさんが二人の黄の民を連れ、ピンクマンとサフランとともにが黒の民の村へ行った。

 フェイさんが四日もかからんって言ったくらいだ。

 きっとあっという間に建つだろ。

 酢の増産は問題あるまい。


「建築もカラーズ横断の取り引きの一種なのかい?」

「そーすべきだね。得意なところへ任せた方が早いと思うんだよ」

「黒の民の大工が困るんじゃないか?」

「どこそこの民に限定するんじゃなくてさ。各色の民を募って大工集団を作って、建築を依頼するって形にできればいいねえ。あ、独占して吹っかけるようになると困るから、工夫はしなきゃいけないか」


 クララが言う。


「ユー様はそういうこと考えてる時、すごく楽しそうです」

「おゼゼの話もおいしいものの話もラブい話も楽しいねえ」

「オールラウンダーね」

「おおう、『オールラウンダー』は二つ名として格好いい気がする!」


 二つ名はその人の印象を決定付ける大きな役割を果たすものだ。

 すっごい心配してたんだが、どうやらあたしは『残念スレイヤー』とか『欲深スレイヤー』とかは言われてないみたい。

 よかったよかった。


「ラブい話といやあ、あのボンはどうなったんでやすかね?」

「アレクか。どうしてるのかな? サイナスさん知ってる?」

「商人がカラーズに来た会談の次の日だったかな。一度デスさんに連れられて、塔の村へ行ってたよ。君の陰謀がどうなってるかは知らない」

「陰謀ゆーな」


 プレゼント、ちゃんとエルに渡せただろうか。

 皇女リリーが馴染んでるかどうかも気になるし、一度塔の村に行ってみないといけないな。


「着いたね。じゃああたし達も帰るよ」

「ああ、ありがとう」


 サイナスさんと別れ、転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「これ、ショーとしてお金取れると思わない?」

「資格十分でやすぜ」

「アイシンクソー、トゥー」

「えへへー」


 何の話かというとクララの包丁捌きのことだ。

 本の世界で八トンのコブタマンを狩り、その内三トンを肉にしているのだが、技の熟練度の高いこと。

 神技と言っても褒め足りないレベルなのだ。

 こっちはこっちで骨スープ作ったりゴミ処分したりしてるのに、お肉が積み上がってくスピードの方が早いってどういうこと?


「ゴッドハンドね」

「まさに神の手」

「レベルが上がってることも関係してると思いやすぜ」

「だよねえ」

「えへへー」


 照れながらも全くスピードが落ちない。

 正確無比とはこのことか。


「もう骨スープは余熱でいいですよ。ダシが染み出ると思います。海の王国行きましょうか」

「精霊様の仰せである。者ども、海の王国へまいるぞ」

「あっしらも精霊なんでやすが」


 ハハッ、精霊様が一杯。


          ◇

 

 フイィィーンシュパパパッ。

 海の王国に来た時のお約束と言えばこれだ。


「グオングオングオングオングオングオーン!」

「この銅鑼、素晴らしい音が出るなあ。心に染みるわ」


 これが身近な感動というものか。

 女王が転げ出てくる。


「肉事かっ!」

「肉事だぞーっ!」

「いやっほう!」


 女王、こんなキャラだったっけかな?

 例によって例のごとく、あとから衛兵が集まってきた。


「これ、調理場へ運んでたもれ」

「「「はっ!」」」


 衛兵達が運ぶコブタを満足そうに見つめる女王。


「して、今日は食事していくかの?」

「ごめんね、今日は買い物に来たんだ。商店街うろつこうと思って。塔の村との取り引きは順調?」

「おお、毎日魚を出荷しておるぞ。しかし人口が少ないのは残念じゃの」

「塔の村は今後どんどん人口増えていく予定だからね。期待してていいよ」

「うむ、そうか」


 よし、まず塔の村とは友好関係を築けているな。

 レイノスと交易が始まれば最高だが。


「魚買ってくよ。明日レイノスでまよねえずっていう調味料作りの講習会があってさ、魚フライがピッタリだと思うんだ」

「レイノスに紹介してくれるのかの?」

「その第一歩になるといいな」


 港町であるレイノスには魚を食べてる人もいる。

 でも魚人に対する差別があるので、一足飛びに受け入れられるのは難しいと思う。

 が、明日魚フライまよねえずがけの評判が良ければ試験的に売ってもいい。


「じゃあ買い物させてもらうね」

「うむ、しっかりお金を落としていってたもれ」


 女王は商売人だなあ。

 実にちゃんとしてる。

 五番回廊の先の商店街へ。


          ◇


「こういう揚げ方だとシンプルに塩がおいしいねえ」

「そうですねえ」


 串焼きの揚げ魚をいただきながら、商店街を練り歩く。


「干しフルコンブ一〇枚ちょーだい」

「はいよ、毎度っ、陛下の御友人さん」

「これメッチャおいしいよねえ」

「最高級品だからな。普通のコンブの三倍は旨み成分が含まれているんだ」


 ほう、とゆーことは、普通のコンブもこれの三分の一程度には旨みを感じるということか。

 有益な情報だな。


「ありがとう」


 魚も買っていかないとな。

 クララが魚を見ている。


「この前のアジでいいですよね」

「うん、おいしかった。あれなら皆喜んで食いつく」

「何匹買っていけば足りるでしょうか?」


 どれくらいの規模の講習会か聞かなかったな。

 でもレイノスで販売してる酢の量から考えると……。


「一〇〇尾で」

「おっとすまねえ。今アジは三〇尾しかないな」

「そーかー。じゃアジの他に揚げてデリシャスな魚ってどれかな? お勧め教えてよ」

「今の時期だとシイラなんかどうだい? 赤身魚だが美味いぜ」

「でかーい!」


 余裕で長さ一ヒロ以上ある。

 これなら一尾で試食用には十分だわ。


「ありがとう。じゃこれと、あと小魚バラバラでいいから一〇〇尾ちょうだい」

「揚げ物用だな? あいよっ、毎度っ!」

「よし、仕入れ終了。帰ろうか」


 細工は流々、仕上げを御覧じろ。

 明日のまよねえず講習会が楽しみだ。

 転移の玉を起動し帰宅する。

まよねえずが受け入れられるのも嬉しいが、魚フライが受け入れられるともっと嬉しい。

戦時の食料として有力だからだ。

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