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第254話:儲けの方が重要だから

 フイィィーンシュパパパッ。

 世界樹破損についての意見を塔の村のデス爺に聞いてから、魔境にやって来た。


「オニオンさん、こんにちはー」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。どうしました? 今日はもう探索するには遅いですよ?」

「いや、今日は魔境を楽しむためじゃなくってさ。美少女精霊使いがオニオンさんの知恵を借りに来たんだよ」


 オニオンさんは魔境ガイドだ。

 彼ならば誰よりも魔境のことに詳しいはず。

 ぜひオニオンさんにも教えを乞いたい。


「笑えることになったんだ」

「笑えることですか。何でしょう?」

「ペペさんが世界樹折っちゃったらしいの」

「えっ?」


 あっ、眼鏡がずれたぞ。

 オニオンさんのそーゆー顔面白い。


「……ペペさん、ということは魔法で?」

「うん。ちょっと手元が狂ったって言ってた」


 オニオンさんが難しい顔をする。


「ペペさんの魔法だと、相当な損傷は間違いないでしょうねえ……」


 だろうなあ。

 世界樹が実際にどれほどの大きさかは知らんけど、ペペさんの魔法が実際にどれほどの威力かは知ってるから。


「実際どの程度の破壊なのかはまだ見てないからわかんない。明日見てくるよ」

「まずいことになりましたね」

「やっぱまずいんだ?」

「世界において魔力の大循環があるという仮説があるんですよ。魔力を吸い集めているところが魔境で、放出しているところが『永久鉱山』だという」


 おおう、オニオンさん博識!

 何かすごい仮説キタ!

 クララ連れてくればよかったな。


「魔力大循環仮説が正しいとすると、魔境と『永久鉱山』はそれぞれ異なる理由で魔力濃度が高い地域であるということになります。一方で世界樹の研究はほとんど進んでいないのですが、魔境に生えるという特性上、やはり魔力が関係するのではないかと」

「魔力を吸ってるから世界樹は高く大きくなる?」


 オニオンさんは頷く。


「という可能性が高いかと思われます。仮に世界樹が倒れたとするなら、蓄えられた莫大な魔力が放出され、一時的に非常に魔力濃度が高くなるのではないかと」

「するとどーなっちゃう?」

「ドーラは魔境がいくつかありますから、影響は限定的だと思います。最終的には魔境が魔力を吸うことで、均衡が戻ることになるのでしょうが」

「世界樹エリアがどうなるかとか、一時的にどんな変化が起きるかは予想しづらいってこと?」

「はい」

「うーん、やっぱり強い魔物がたくさん出現しちゃうのかなあ?」


 大体デス爺と似た見解だ。

 魔物が増殖していて駆除しなきゃならんとなれば面倒極まりない。

 あたしはバトルマニアじゃないしな。


「魔物の発生条件も変わるでしょうけど、素材もたくさん出現してるかもしれませんよ?」

「なるほど、そうかっ!」


 プラス要素もあり得るのか。

 楽しみになってきたなあ。


「冒険者が介入することで、どうにかできることってあるかな?」

「二つ考えられますね」

「何だろ?」

「魔力大循環仮説が正しいとすると、大量に放出された魔力は魔境に吸われ、いずれ魔力の濃度は世界樹倒壊前の恒常状態に戻るはずです」

「うんうん」

「その恒常状態が他に影響を及ぼさないことが望ましいです。つまり世界樹を修復できるか、あるいは第二の世界樹を確保できることがベスト」


 今までと同じ環境にできれば一番面倒がないってことだな?

 あたしも面倒は嫌いだ。 

 今までの世界樹が使えないなら、溢れた魔力が悪さしないよう新たな世界樹を植樹できればいいってことか。

 クララと相談だ。


「もう一つは何だろ?」

「目先の問題への対応ですね。魔力環境が乱れていることは間違いないと思います。たとえ凶悪な魔物が一時的に増えたとしても、魔力濃度が適正になれば生存できなくなるか、共食いするかでしょう。ならば魔境世界樹エリアから魔物を外部に出さないようにするのが肝要です」

「わかった。明日、ペペさんと折れた世界樹の様子見に行く約束してるんだ。たっくさん稼いでくるよ!」

「え? 状態を観察するか事態を解決するかの任務ですよね? ワタクシの言うこと聞いてました?」

「オニオンさんありがとう。じゃーねー」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 食後にうちの子達と作戦会議を行う。


「はーい注目。『前向きギャンブラー』なるパワーカードを手に入れました。足りないダメージ分を埋められる可能性のあるカードでーす」


 昨日のウィッカーマン戦では、ヒットポイントを半分程度まで減らすのがやっとだった。

 しかし与ダメージがほぼ倍になるクリティカルヒットを出せるなら、ダメージ期待値は全く異なってくる。


「攻撃力+一五%、会心率+八五%ね。ラッキーにクリティカルが固まればノックアウトできそうね」

「『あやかし鏡』の二回行動と『ハヤブサ斬り・零式』の二回攻撃で、あたしは一ターンで四回攻撃できるのが前提ね。『コピー』で複製できるのは行動と装備でしょ? つまり固有能力『獣性』の効果である会心率増加はそのまま加算されるから、アトムは四回クリティカルが期待できる。あたしに三回クリティカルが出れば勝てる可能性が高い!」

「おー倒せるんじゃねえか?」

「攻撃力+三〇%のパワーカード『スコルピオ』を手に入れ、他のカードと入れ替えれば、もう少し勝てる確率が上がりそうですねえ」

「『スコルピオ』って交換ポイント一五〇必要なんだっけ? 手に入れたら、ウィッカーマンと戦いに行こうか」

「「「了解!」」」


 楽しみだなー。


「で、明日の話だけど」


 まあ世界樹については行ってみないとわかんないしな?

 ただペペさんが泣きついてくるほどどうにもならないってのが、一番わからない。

 ペペさんはあんなんでもマスタークラス魔道士だぞ?

 よっぽど変な折れ方でもしてるんだろうか?


「なるべく戦闘を避けてとにかく世界樹のところまで行って、クララに見させるでいいんじゃねえか?」

「アイシンクソー、トゥー」

「よーし、目一杯素材を拾ってこよう」

「……アトムとダンテの発言に素材要素はありましたか?」

「うんうん、なかったね。クララは偉い」

「えへへー」


 フニャっとした笑顔を見せるクララ。


「おいクララ、誤魔化されてんぞ」

「とゆーわけで、ペペさんに背負わせるためにナップザック一つ多めに持ってくよ」


 有意義な議論だった。

 明日に備えてゆっくり寝よう。

儲かる気配が出てきました!

モチベーションは重要だよ。

そう思うでしょ?

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