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第242話:人を人外みたいに

 さて、もうちょっと状況を面白くしなければ。

 エンターテインメントを求めるあたしの使命。


「仮病はともかくお母さん、アンセリの二人はここに住んでも大丈夫なのかな?」

「もっちろんよお!」

「えっ?」

「いや、パーティーメンバーが一つ屋根の下に住むのは常識でしょ。活動しやすいもん。うちだってそうだし、ラルフ君とこなんか同じ布団で寝てるぞ?」

「「「「同じ布団じゃないです!」」」」


 ノってくればいいのに。

 ダンも続ける。


「まあ、すぐクエストに行けるから合理的だわな。アンセリはいいのか?」

「わたしはもちろん」

「宿を取らなくていいのはありがたいです」

「決まりじゃねえか」


 ダンが当然みたいな言い方して既定路線化した、お上手。

 あわわみたいな顔してるけどソル君、もう観念しなよ。

 外堀とは埋めるもの、エンタメとは追求するものなのだ。


「あたし達は帰りまーす。あとは一家水入らずでどーぞ」


 アンセリを置いてとっとと撤収!


「この村、何か変わったもの売ってるかなあ?」


 それには答えず、ピンクマンが聞いてくる。


「さっきのどうして仮病だとわかったんだ?」

「ソル君の母ちゃんのやつ? レベル上がったら、身体の中の魔力の流れが何となくわかるようになってきたんだよね。病気やケガで調子の悪い時って流れが滞ってるの。ソル君のお母さんは特別おかしいことなかったから」

「ふむ、魔法医の素養だな」


 魔法医ってそーゆーもんなのか。

 ダンが驚く。


「おいおい、診察力ってマジだったのかよ?」

「何となくだよ?」

「段々人間離れしてくるな」

「レベルアップとともに人間的に成長してるだけだわ。人を人外みたいにゆーな」

「何でちょっと嬉しそうなんだよ!」


 成長してる実感があるからね。

 やれることが増えるのは楽しい。


「今日は皆、ありがとうね。モテモテのあたしは帰るよ」

「おう、俺には魅力感じないのかよ?」

「ダンだっていいとこあるよ。一生オチ担当に不自由しないと思ってる」

「言い分がゲス過ぎてオチ担当に相応しいセリフが出てこねえ!」


 笑いの中、ピンクマンが聞いてくる。


「ユーラシアはこれからどうするんだ?」

「魔境!」


 もーラルフ君達ったら一言で凍りつくなよ。

 何かの魔法みたいだ。


「黄金皇珠以上の高級魔宝玉を集めて引き渡せっていうクエスト請けたんだ」

「黄金皇珠以上だって?」


 ピンクマン呆れてるけど、あたしはこのクエストを通してぼろ儲けしてやるのだ。

 じゃあさらば。

 転移の玉を起動して帰宅する。


『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』


 あれ? これもクエスト扱いなのか。

 レベルが六三になる。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー!」


 あたしの心のリゾート地魔境にやって来た。


「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。今日は?」

「うん、もうちょっと西奥の方を探索してから、中へ入ってレア魔物狩りかな。バリバリ稼ぐんだ」

「ハハハ、行ってらっしゃいませ」

「あ、回復してから行く」


 ここへ来る前、凄草用の黒妖石に魔力を移してきたのだ。

 魔境やアルアさん家など、回復魔法陣のある場所へ来る時はこのパターンがいいだろう。

 ちなみに黒妖石の最大容量の八割ちょいくらい。

 八割を超えると急激に抵抗が強くなり、それ以上魔力を注ぎ込みにくいということがわかった。

 まああんまりぎゅうぎゅう詰めにしてパンクしても困るので、今後はキャパ八割を上限の目安にしようと思う。


「行ってきまーす!」


 ユーラシア隊出撃。

 ベースキャンプから出るときは出撃って気分だな。

 西方面のオーガ帯を大きく回る。


「クレイジーパペットは必ずダメージもらうのが嫌だねえ」

「逃げてしまうことも多くなりましたけどね」


 デカダンス以外の人形系の魔物は皆そうだ。

 やたらと素早くて逃げやすい。

 逃げずに向かってくる時は大体魔法を撃ってきて、これがまた高い魔法力のために痛いのだ。

 すっとろい真経験値君ことデカダンスだけはノーダメージで倒せるのだが。


「ウィッカーマンはさぞ、強いんでやしょうねえ」

「うーん、正直『メドローア』を連発で食うことは考えたくないね」


 最低でも盾役アトムが防御なしで『メドローア』連発に耐えられるようにならないと、ウィッカーマンとはとても戦えない。

 更なるレベル上げと耐性装備を手に入れることを念頭に置きたい。


「この辺にも見たことない素材があるねえ」

「イエスタデイのイエスタデイにもニューマテリアルがあったね。一度カードアトリエでメイカブルなカードを確認すべきね」

「早めに行きやしょうぜ」

「オーケー」


 パワーカードよりもレベル上げの方が重要だとは思うけどね。

 素材を見つけるたびナップザックに放り込む。


「ところでペペさん家って魔境のどの辺にあるんだろ?」

「今までそれらしきものはありませんでしたねえ」


 ドラゴンを吹っ飛ばすって話だったから、中央部に近いところかと思った。

 けど今まで魔法で変形したらしき地形がない。

 とすると魔境北辺か?

 いきなり魔法撃ち込まれちゃかなわん。

 オニオンさんに聞いて確認しなきゃいけないな。


「こんなもんかな。ドラゴン帯へ行こう」

「「「了解!」」」


 西奥のオーガ帯をある程度探ったから、魔力濃度の高い中へ足を向ける。

 ドラゴンの生息域へ行ったって、素材・アイテム採取とレア魔物狩り、やること変わんないんだけど。

 またデカダンスが出たぞ。

 普通に倒すと……。


「やたっ! 黄金皇珠ゲットだぜ!」

「……三体目でしたね」

「何が? あっ!」


 ほこら守りの村の肥溜めガールことマーシャの占いで出た『さんどめのしょうじき』か。

 やっぱデカダンス三体目で黄金皇珠をドロップするってことだったか。

 こういう当たり方するとつまらんなあ。


「一応、これでジュエルクエストはクリアできるね」

「まあクリアと言えばね」


 市場売却価格二万ゴールドの五割増の収入プラスクエストクリアの経験値と考えれば、もちろん悪くない報酬ではある。

 でもロマンじゃないんだよなー。

 あ、ペペさんが感染ったか?


 期限は妖姫の月つまり一一の月の末で、まだ一ヶ月以上ある。

 絶対にウィッカーマンを倒して、そのドロップを手に入れる。

 依頼者の鼻血が出なくなるまで搾り尽くしてやるのだ。

 いずれにしても期限ギリギリまで粘ることになるな。

ふむー、さすがに高級魔宝玉をゲットするのは難しい。

だけどぼろ儲けとゆー、甘美な響きに酔いしれたい。

やっぱウィッカーマンを倒して一攫千金を狙うべし!

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