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第2276話:結界予想外

「メッチャヤバいなー」

「メッチャヤバいぬ!」


 ルーネヴィル新聞記者トリオイシュトバーンさんとともに、ダールグリュン家邸へやって来た。

 王都にしては珍しく、他の家からかなり離れたところにポツンとある丘の上の一軒家だ。

 いやもう抜群のロケーションだわ。

 もちろん庭も広い。

 遠くから見た時は洒落た家だなと思ったが……。


「ユーラシアさん。新聞記者さん達が言ってたことわかります。不安を掻き立てられるような感じがします」

「そーだね」


 近寄ってみたらすごくぞわぞわするのだ。

 いたたまれないとか祟りとか言うのもよくわかるわ。

 これがダールグリュン家か。

 ふーん、面白い。


「おい、精霊使い。これどうなってるんだ?」

「イシュトバーンさんが不安そうなのは珍しいね。魔境とどっちが怖い?」

「そんなのと比較するんじゃねえよ!」


 アハハ。

 あれ? 皆笑わないがな。

 ビビんなくても大丈夫だとゆーのに。


「ねえ、ユーラシアさん。帰りましょうよ。気味悪いです」

「クリームヒルト様を画集のモデルにするのは諦めましょう」

「会ってもみずに諦めるわけないだろ。いや、大丈夫。セキュリティ意識が高いだけだから」

「「「「「セキュリティ?」」」」」

「これ一種の魔道結界だよ。多分外から異物を侵入させないことに特化したやつ」

「ほお、これが魔道結界か。大したものじゃねえか」


 感心するイシュトバーンさん。

 マジで大したものだ。

 個人宅レベルで魔力炉を設置してるってことだもんな。

 魔道研究所に強力なコネがあるということであり、莫大な資金を持つということの証明でもある。


「でも魔道研究所に行った時に、ダールグリュン家邸に魔道結界なんて話は聞きませんでしたよ?」

「パーソナルな話だからじゃない? それともどこで何してるかってのは秘密なのかもしれないな。ヴィル、これ中に入れる?」

「ムリだぬ」

「高位魔族も入れぬ鉄壁のセキュリティだよ。ほら、記事ネタ一つできた」

「「「そうですねっ!」」」

「でも困ったな」

「何がですか?」

「ヴィルに当主のオズワルドさんなりクリームヒルトさんなりの部屋を突き止めてもらってさ。門前払い食らったら直に連絡取るつもりでいたんだよ。その手が使えなくなっちゃった」

「どうするんだ?」


 どーすべ?

 まさかこんなことになってると思わんもん。


 しかしバアルはクリームヒルトさんの娘シシーちゃんのことを知っていた。

 つまりシシーちゃん誕生当時、魔道結界はなかったとゆーことだ。

 その後に導入されたのなら、やはり娘の存在を隠すためと考えるのが妥当だな。

 シシーちゃん関連については有力な交渉材料になることが決定。


「門前払いされるわけにいかなくなったぞ? 慎重にプランを練らねば」

「要するにパワープレイだな?」

「まあそう」


 ルーネと新聞記者トリオがワクワクしてるがな。

 パワープレイとは言っても、大立ち回りにはならないとゆーのに。

 期待してるところ悪いけど。


 さて、ここが正門か。


「そこの者達止まれ!」


 門番さんに声をかけられる。

 うむ、ダールグリュン家への忠誠度が高い人と見た。

 感心感心。

 しかし丸っきり話の通じない人でもないな。

 何がなんでもあたし達をシャットアウトするとゆー意思はなさそう。

 やりやすい。


「目に見えぬ壁が張り巡らされている。そこよりこちら側に近付こうとすると危険ゆえ、その場から用件を話してくれ。よろしいか?」

「はーい、わかりました」

「名と何用かを聞かせてくれ」

「あたしは施政館参与のユーラシアだよ。こちらから順に悪魔のヴィル、クリームヒルトさんの姪のルーネロッテ皇女、絵師のイシュトバーンさん、新聞記者三人ね」


 美少女精霊使いって名乗らねえのかよって顔をイシュトバーンさんがしている。

 今日は政府の役人アピールした方が都合が良さそうだから。


「ルーネロッテ様と……ユーラシア? あのヤマタノオロチ退治の?」

「そうそう。よく御存じで」

「して、当家に何用だろうか?」

「門番さんは『女達』っていう画集のことは知ってるかな?」

「もちろん。大変な話題になっているからな」

「その帝国美女版を作ろうという企画が進行しているんだ。誰をモデルにしたらいいかっていう新聞購読者アンケートで、クリームヒルトさんが上位にランクされているんだよ。ぜひ描かせてもらいたいから来たの」

「なるほど、合点した。しかしダールグリュン家は静かな生活を望んでいる。その手合いは断るよう、主人から申し渡されているのだ」


 明確な拒絶だ。

 姪のルーネがいても入れてもらえないか。

 新聞記者がいるからダメとか、そういうんじゃないな。

 速やかに作戦変更、切り札を切れ!


「申し訳ないがお帰り……」

「っていうのが表向きの理由」

「表向きの理由……?」


 門番さんが疑惑に満ちた目になる。

 ルーネ新聞記者トリオイシュトバーンさんは好奇心に満ちた目になってきたけれども。 

 さて、ここからが入れてもらえるか否かの勝負だ。

 

「裏の理由は何だ?」

「今からあたしが言うことを、当主のオズワルドさんかクリームヒルトさんに伝えて欲しい。可愛い荷物にお悩みですね。その荷物は、時間が経つに連れて解決が困難になっていくことはおわかりかと思います。今ならルキウス陛下に近いあたしが力になりますよ、と」


 門番さんが驚愕の表情になる。

 通じたな。


「ユーラシア殿は何を……」

「おっとそこまで。あたしはもちろん御当家について知ってることは誰にも言ってないし、これからも言わないよ。さらにあたし達が今日これから知ることは、問題が解決するまで外に漏らさないことを誓います。どう?」

「少々待たれよ!」


 屋敷の中に駆け込んでいく門番さん。

 やることはやった。

 イシュトバーンさんがえっちな目でニヤニヤしている。


「おい、どういうことだよ?」

「だからまだ言えないんだってば。我慢することも覚えなよ。いい歳なんだから」


 不意に背中を撫でられるような不快な感覚が消える。


「あっ、魔道結界が外されましたか?」

「よーし、入れてもらえるな。作戦成功だ。記者さん達、今から知ることは人死にが関わってる。下手に記事にしたら記者さん達も消されるから注意だぞ?」

「「「えっ?」」」


 冗談じゃないんだってば。

 門番さんが戻ってきた。


「お入りくだされ!」

ここまでオーケー。

続く(笑)。

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― 新着の感想 ―
何故か秘密を知られていると言う、相手側のホラー展開!!
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