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第2227話:新『アトラスの冒険者』を立ち上げまーす

 ――――――――――三三五日目。


 灰の民の村まで飛んできた。

 もうアレク達がいるな。

 フワリと着地する。


「ウルトラチャーミングス参上!」

「参上ぬ!」

「姐さん、おはよう」


 アレクケスハヤテがちょっと呆れ顔だ。

 何ゆえに?

 アレクが聞いてくる。


「『ウルトラチャーミングス』って何?」

「あたしが『ウルトラチャーミングビューティー』で、ヴィルが『ウルトラチャーミングいい子』なんだよ」

「何それ?」

「カラーズ緩衝地帯に『JYパーク』と命名した帝都の名付け屋がいてさ。その子につけてもらった二つ名だよ」

「で、合わせてウルトラチャーミングス?」

「そゆこと。あたしとヴィルが大道芸人やる時のパフォーマンスネームだね」

「またわからない。大道芸?」

「いや、あちこち行ってると、突然芸を披露しなきゃいけない場面に遭遇するもんなんだよ。不思議なことに」


 本当かって顔してるけど本当だ。

 スリや痴漢が出た時とかその国の通貨を持ってない時とか。


「今日はありがとうね」

「あ、この転移石碑はカラーズに設置してあるのより小さいなとは思ってたけど、ユー姉のナップザックに入るんだ?」

「多分デス爺が考えてくれたんだと思う」


 地味に嬉しい配慮なのだ。

 ナップザックに放り込んでと。


「どーする? ハヤテも行く?」

「大丈夫け?」

「うちの子達も一緒だから大丈夫だと思うよ」

「それならおらも行きたいだ」

「姐さん、どうして精霊を連れていくんだ?」

「精霊使いとして格好つけなきゃいけない場面だからね」


 わかったようなわからんような顔してるけどそういうもんなのだ。

 自己紹介とゆーか身分証明とゆーか。

 エルもコケシ達を連れてくると思うよ。


 アレクがためらいがちに言う。


「大体のところはサイナスさんやお爺様に教えてもらったけど」

「うん。何が聞きたい?」


 『アトラスの冒険者』の廃止、あるいは新『アトラスの冒険者』発足についてだろう。

 アレクはどの辺が疑問だろうか?


「どういうことなの?」

「おお? 丸投げしてきたなあ。異世界が『アトラスの冒険者』を運営してきたけど、今月一杯でやめちゃう。だから後継組織を作るっていう流れだよ」

「それは知ってる」

「知らんのはどこだ。じゃあ新『アトラスの冒険者』は自薦でもなれるってことは?」

「そうなの?」

「レベル三〇以上で信用のできる人ってのが基準になりそう。あんた達も基準を満たしてるけど、転移の玉持ってるしお仕事が忙しいんでしょ? 二万ゴールド払って新『アトラスの冒険者』になってもメリットがないな」


 ま、人間自分の未来のことなんてわからんもんだ。

 興味があれば新『アトラスの冒険者』もどうぞ。


「エルさん……のことだけど」

「今の『アトラスの冒険者』のトップがエルの母ちゃんなんだ。異世界はまず間違いなくエルを取り戻しに来る。多分今月下旬のどこかで」


 三人の表情は引き締まったが、思ったほど驚かないな。

 エルかデス爺に聞いてたか?


「どこかにエルさんを隠すことはできないかな?」

「あたしも考えたけど、今はムリだと思ってる」

「どうして?」

「『アトラスの冒険者』の発足時に、向こうの世界の人が海の王国に挨拶に行ったそーな。いきなり転移してきたみたいだぞ?」

「えっ?」


 これは結構ビックリだろう。

 いきなり転移以上に、海の王国を把握してたことに対して。


「わざわざビーコンを置かなくても、遠隔で転移先を設定できるんじゃないかな。これは『アトラスの冒険者』の転送魔法陣の仕様からしても間違いなさそう。ヴィルのワープ並みのことはできると考えるべきだね」

「……」

「前はエルの居場所が割れてなかったけど、今は知られてるじゃん? ヴィルは一度マークしとくと相手が移動する船であってもそこに飛べるんだ」

「……つまりエルさんは既にマークされていて、どこに隠しても居場所はバレる?」

「可能性が高いね。とすると向こうの世界にエルを帰したくないとゆー、あたし達の目論見があからさまになるような行動は避けるべきじゃん?」

「まともだと向こうの科学技術に対抗しづらい。だから油断を誘いたい?」

「そうそう。ならばいらんことはしない。何だかんだで塔の村は冒険者が多くて守りが堅いからね」

「……」

「あんた達は動くな。異世界人に感付かれると勝てなくなっちゃう」


 こういう言い方はキツいだろうけど、聞きわけてください。


「姐さんには策があるのか?」

「あるよ。でも有効に使うためには情報が足りないな。情報を手に入れる努力もしてはいるんだけど……」


 管理者用の転送魔法陣で異世界『アガルタ』に行くことができる。

 いつどうやって攻めてくるのかがわかれば、カウンター食らわせてくれるわ。

 最低でもいつなのかを知れれば……。


「ま、とにかく行こうか」


 転移の玉を起動し、一旦帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、チャーミングなユーラシアさん。いらっしゃい」

「おっはよー、ポロックさん」

「おはようぬ!」


 ギルドにやって来た。

 やや表情の硬いギルド総合受付ポロックさん。

 『アトラスの冒険者』がなくなるとなると寂しいものがあるんだろうか。


「もう皆来てる?」

「半分くらいじゃないかな」

「先に転移石碑埋めちゃおう。どこに埋めればいいかな?」

「ハハッ、やることが早いね。こっちだ」


 ギルドの外へ。


「「「ユーラシアさん!」」」

「「「ユーラシア!」」」

「おおう、あたし人気者!」

「「「「「「「「そうでなくて!」」」」」」」」


 総ツッコミだ。

 実に気分がいいなあ。

 デミアンが言う。


「悪くないだろう。ユーラシア、説明してくれ」

「もう皆大体のところは聞いてるだろうけど、現行の『アトラスの冒険者』は廃止されまーす。ただ廃止になるとおまんまの食い上げなので、新『アトラスの冒険者』を立ち上げまーす。新組織はギルドの転移石碑から塔の村、カトマス、レイノス、カラーズ、魔境等各地へお出かけするシステムになるよ。詳しいことは全員揃ったところで説明するから、まず転移石碑設置するぞお!」

「「「「「「「「おう!」」」」」」」」

「設置はここにいるあたしの弟分アレクが詳しいから、その指示に従ってね」

「「「「「「「「おう!」」」」」」」」


 これでよし。

 ルーネとお父ちゃん閣下を迎えに行くか。

作中期間期限の一年間まで、残り一ヶ月を切りました。

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