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第2189話:おりいぶおいる

「美味いじゃねえか」

「美味いぬよ?」


 ビバちゃんの絵を描き終わったあと、フェルペダで昼食をいただいている。

 イシュトバーンさんがフェルペダ料理に感心してる。

 ヴィルは実際に食べてないのに御満悦だ。

 よしよし、いい子だね。


 ルーネが感心したように言う。


「私、シチメンチョウとハトはフェルペダで初めて食べました。大変美味しいです」

「そうでしょうそうでしょう! 肉は二本脚のものがおいしいのです!」

「その意見には賛成しかねるけど、フェルペダのシチメンチョウとハトが美味いのは事実だな。何でだろ?」


 あたしハトは捕まえて食べたことあるんだが、こんなに美味かった記憶がない。

 確かに育成ものは脂が乗ってるということはあるが……。


「調理法の違いだろ」

「おいしさを逃がさない技術があるんだろうね。でもこの風味豊かな油は何だろ? ニンニクとメッチャ相性がいいんだけど」

「オリーブオイルよ」

「おりいぶ?」

「実から良質の油が取れる木よ。カル帝国やドーラにはないのかしら?」

「聞いたことはあるな。トットンベック辺境伯爵家領ズデーテンにはあるはずだ」

「つまり比較的暖地向きの植物か。ドーラにも導入しなければならないねえ」

「では今日のお礼に、オリーブの苗を差し上げるということでいかが?」

「ありがとう! もらう!」


 また新しい有用な植物が手に入る。

 嬉しいなあ。


「絵は明後日には完成するよね?」

「おう」

「じゃ、三日後……はダメなんだった。四日後に完成した絵を持ってこっち来るよ。その時におりいぶもらうってことでいい?」

「わかりましたわ」

「油なら腐らない。ドーラでたくさん取れるようになったら、帝国にも輸出するからね」

「帝都でもこの味が楽しめるようになるのですね?」

「ズデーテンで作ってるなら、ヴィクトリアさんが詳しいかもしれないな。情報集めといてよ」

「わかりました」


 ルーネにも食の探求者としての心得を叩き込んでおかねばな。

 おいしいものが食べられるということは幸せなのだ。

 正直冒険者ってのはただ依頼をこなしてるだけじゃ退屈だと思う。

 レベルが上がったことによる広い意味での行動力向上を、どうプラスアルファのメリットに結びつけるか?

 冒険者の醍醐味はその辺にあるんじゃないかな。


「ハトとシチメンチョウは、カラーズに試験導入してみたんだ」

「ほお?」

「世界中に広がるといいのですわ!」

「何でフェルペダではお肉イズ鳥みたいな文化が発達したんだろうな?」

「二本脚の生き物の肉はおいしいからでしょう?」

「そんなことないわ! いや、二本脚が美味いことは否定しないけれども、四本脚だって美味いわ!」


 あれ? でもコブタマンは四つ脚だけど二足歩行だな?

 洞窟コウモリもコッカーも二本脚か。

 二本脚こそおいしい説ある?

 いやいや、草食魔獣は大体四本脚だ。

 騙されてはいかん。


 イシュトバーンさんが言う。


「昔から戦乱の地だったんだろう? 比較的簡単に繁殖できる鳥が発達したのはわからなくもねえな」

「なるほど。思いつかない視点だったわ。イシュトバーンさんやるなー」

「四つ脚を食わねえわけじゃねえんだろう?」

「四本脚は食べませんわ」

「フェルペダはどうかわからんけど、お隣のモイワチャッカではふつーに四つ脚の魔物を食べてるよ。あたしもエスケープゴートとキングヌーっていう魔物をおいしくいただいた」

「魔物を、食べる?」


 目が真ん丸になるビバちゃん。

 可愛いけれども、成人王族がストレートに感情を表に出すってどうなんだろうなあ?

 ビバちゃんに矯正しろってのはムダだから、『アイドル』を生かす方向ならまあありか。


「野蛮人なのですわ!」

「うーん、魔物食べたことない人は大体拒否反応を示すな。一度でも食べれば虜になっちゃうけど」

「虜になんかならないのですわ! 魔物は魔物ですわ!」

「ビバちゃんいいかい? 魔物か否かは、邪気があるかないかの違いしかないんだ。肉質の美味さとは全く関係がない」

「そうなの?」

「そーなんだよ。だから魔物を累代飼育して邪気を抜き、家畜化しようって試みもなされているのだ」

「ふうん。ちょっと食べてみたい気もしてきましたわ」


 ビバちゃんは実に素直だな。長所なのか短所なのか。


「じゃあ四日後にうまーい魔物肉をビバちゃんに食べさせてやろう」

「本当ですの?」

「おい、オレん家連れてこいよ」

「ビバちゃんルーネとうちの子達を連れて昼に行くよ。イシュトバーンさんとこの料理人は腕がいいから、おいしいものにありつけるよ」

「楽しみですわ!」

「せっかくだからドーラでしか食べられないものを食べさせてやりたいな」


 コブタ肉は決定として、ワイバーンの卵が欲しい。

 ただ焼いて塩振って食べるだけで美味しいし、まよねえずにもスイーツにも応用が利くから。


「ワイバーンの卵を持ってきてくれよ」

「イシュトバーンさんもそう思うよね? あたしもワイバーンの卵がドーラグルメには必須だと思うわ。絶対って約束はできないけど善処する」

「ワイバーンって飛竜のこと?」

「そうそう、よく知ってるね。いわゆる亜竜の一種で、真竜ドラゴンほど強くないけど、攻撃力はバカになんないな。グラディウスのおっちゃんくらいのレベルがあれば、一人でも勝てると思うよ」

「卵は食べられるのね?」

「絶品だぞ? ただワイバーンの卵はドロップアイテムだから、何体か倒しても絶対手に入るとは限らないんだよね」


 ワイバーン自体は珍しい魔物じゃないから何とか。

 雨降ったり急な用件が入ったりしませんように。

 ビバちゃんがため息を吐く。


「ドーラは本当に魔物が多いのね」

「ドーラでは、お肉はその辺を骨皮付きで歩いてるものだと言われているんだ」

「そのジョークをさもありそうに使ってるのはあんただけだからな?」

「えっ、ユーラシアさんだけが言っているのですか? ドーラ特有の言い回しだと思っていました」


 アハハ、ごめんよルーネ。

 あたし特有の言い回しだった。


「ごちそーさまっ! おいしかった!」

「満足だぬ!」

「帰っちゃうの?」

「何なんだあんたは。また来るぞぎゅー」


 ルーネとヴィルも合わせてぎゅー。


「おい、それ描かせてくれ」


 何を言ってるんだ。

 皆でぎゅーの絵はさっき描いたろーが。

 今日三枚も描いたのに、まだ右手が余ってるのかな?

ビバちゃんはメッチャ懐いたな。

おりいぶは要注目。

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