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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第218話:『コピー』

 あたしが紙に書きつけた二つの案を見せる。


「こ、これは……」


 あたしを囲む一同の顔色が変わる。

 第一案は『無乳は固有能力』なる、ハオランの発した禁断の言葉なのだ。

 検討せずボツにするには、あまりにももったいないパワーワードだと思ったから。


「……第一案はありですか? いささか刺激が強いのでは?」

「永遠に闇に葬る言葉だったろう? エルが死んでしまうぞ!」


 うむ、あたしだって無条件に『無乳は固有能力』が通用するなんて思ってない。

 もちろん確認してからね。


「コケシー、もう『レイズ』使える?」

「まだです」


 コケシはまだ蘇生魔法を使えなかったか。

 残念だなー。


 同じ固有能力持ちでも、魔法の習得スピードは各人で一定ではない。

 コケシはクララより少しレベル高くなってから白魔法を覚えていくみたいだな。

 かくしてハオランの問題発言は、エルの目に触れることなく廃棄された。

 めでたくもありめでたくもなし。


「となれば自動的に第二案になるの」

「そーだね。パンパカパーン! はい、では先ほどのエルさんの『君達はボクをどんな目で見てるんだ!』という発言に対する、我々の公式見解を発表させていただきます。レイカさん、お願いしまーす!」


 緊張するエルにレイカが声をかける。


「『生温かい目で見ている』だ」


 エルがあからさまにホッとした表情を見せる。


「な、なあんだ。皆優しいじゃないか。もっとひどいこと言われるかと思ったよ」

「誰も蘇生魔法使えないんだからしょうがない」

「え? 気になるじゃないか」

「そーゆーフリがエルの途轍もなく優秀なところだぞ。あっ、じっちゃんが『レイズ』使えるわ。おーい、じっちゃーん!」

「やっぱりやめてええええ!」


 いつの間にか他の冒険者の多くなった食堂に、エルの絶叫が響き渡る。

 今日も楽しかった。

 リリーが早く馴染むといいな。


          ◇


「ただいまっ!」


 我が家に帰宅、うちの子達にリリーのその後について報告する。


「お帰りなせいやし。いかがでやした?」

「掴みはバッチリだな。エルやレイカももちろんあたしも、リリーと歳が近いじゃん? 貴重な関係だと思うんだよね。やっぱ冒険者は男性優位の商売だから」

「アイシンク、ボスが仲介してるならモーマンタイね」


 これでリリーも大丈夫だろ。

 一方で塔の村にとってもメリットが大きい。

 実力ある冒険者が入れば素材の回収効率も上がるからな。


「いやー、至急のクエストがつつがなく終わってよかった。明日、バエちゃんとこ行こう。今から連絡してくるね」

「姐御、至急のクエストがあるということは、いつも頭に置いとかなければいけやせんぜ」

「わかってる」


 今まで至急のクエストなんて聞いたことなかったしな?

 あんまりないケースなんじゃないだろうか。


「さて、行ってくる!」

「あっ、ユー様。ステータスアップ薬草のスープだけでもいかがですか?」

「ありがとう、もらう!」


 クララはこういうとこ気付くのがさすがだな。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 チュートリアルルームにやって来た。


「ユーちゃん、いらっしゃい」

「明日の夜、御飯食べにきていいかな?」

「もちのろんよ。カレーにする?」

「いや、明日は趣向があるんだ。うまーい非売品の塩を手に入れたんだよ。焼いたコブタ肉にかけると絶品」

「じゃあ焼き肉ナイトね?」

「実にいい響きだなあ。お肉と塩は持ってくるからね」

「うわー楽しみぃ!」


 バエちゃんがクネクネしている。

 本当にお肉が好きだなー。


「あっ、そうだ。ユーちゃん、ドラゴンスレイヤーになったんだって?」

「なった。でも狙ってたんじゃなくて弾みだったんだ」

「貴重なアイテム取るのをレッドドラゴンに邪魔されたから、あたしの行く手を遮る愚かなやつめって倒したとか聞いたよ?」

「あはは、大体そんな感じ」


 あれ? ドラゴンスレイヤーっぽいエピソードになってる気がする。

 ソル君辺りが忖度してくれたんだろうか?


「借金持ちだったからしょうがなかったんだよ。そのアイテム、二万ゴールドで売れたんだ」

「二万ゴールドもすごいけど、借金ってどうして? ユーちゃん結構稼いでるでしょう?」

「だからいい女にはお金がかかるんだってば」

「あはははははっ!」


 笑い過ぎだろ。


「ユーちゃんにプレゼントがありまーす!」

「ありがとう、もらう!」


 どうしたバエちゃん。

 何か焦ってるけど。


「ちょ、ちょっと待って。盛り上がりとか考えて?」

「考える!」

「そ、そお?」


 腑に落ちないようだが、話を続けるバエちゃん。


「私の仲良くしてる精霊使いの冒険者がドラゴンスレイヤーになったんですよって、上司のシスター・テレサに報告したら、すごく喜んでくれたの。ささやかながら記念品を贈りましょうって。これ、どうぞ」


 祝ってくれるなんて嬉しいなあ。

 プレゼントとして形になるのはもっと嬉しいけど。

 何だろう?

 あ、パワーカードじゃん。

 説明を確認する。


「『刷り込みの白』……聞いたことのないパワーカードだな。スキル:『コピー』? つまり『コピー』っていうスキルを使えるだけのカード?」


 バエちゃんが頷く。


「かなり珍しいパワーカードのようよ。おそらく世界にこれ一枚しかないんじゃないかって。『コピー』の使い手も確認されていないわ」

「ふーん、オリジナルのスキルかもしれないな。『コピー』ってどういう効果があるの?」

「ええと、直前の味方の行動を繰り返すバトルスキルだって。装備の効果も複写されるそうよ」


 ……とゆーことは例えばアトムに装備させたとすると、あたしの『あやかし鏡』装備による『ハヤブサ斬り・改』×二をまんま『コピー』するのか。

 嵌れば強いな。

 やりようによってはドラゴンもあっという間に倒せるかも。

 だが……。


「相当使い方の難しいカードだねえ」


 何かの拍子に攻撃順が変わるとグダグダになる。

 こんなの装備してるのは強敵が相手の時だ。

 『刷り込みの白』を装備するために他のカードを外してるんじゃ、一旦思惑が外れた場合、戦闘中の立て直しはムリだろうな。


「あら、使い方を考えるのはユーちゃんの仕事よ?」

「うん。面白いカードをありがとう」

「あ、面白いんだ。よかったあ」


 バエちゃんがニッコリ笑窪を作る。


「今日は帰るよ。明日楽しみにしてて」

「わかった。またね」


 転移の玉を起動して帰宅する。

実に変わったパワーカード、というかスキルの方が振り切れてるんだな。

カード『刷り込みの白』とその実装スキル『コピー』か。

実際に使用する機会があるだろうか?

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― 新着の感想 ―
この手の能力、運営の想定してなかった運用で悪さする未来しか見えない。
[一言] デトネーション連発でしょ、やっぱり
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