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第2154話:紅葉珠は貴重

「ウタマロの嫁のことは一旦保留にしとくとして、こういうものを手に入れたんだ。どれくらいの価値のあるものだか、誰か教えてくれないかな?」


 ナップザックから渋い赤みが特徴的な魔宝玉、紅葉珠を取り出す。

 ボンボン父が驚いたような声を出す。


「紅葉珠ではないか。本物か?」

「ライオンを倒すとたまにドロップするんだよ。転移の間より向こうに白いライオンのいる洞窟があってさ。その白いライオンはドロップ率が高い気がする」

「ほう?」

「あ、長老」


 転移の間から先の話は、元戦士たる長老には興味深いようだ。

 あたしも有益な話を聞けるかもしれないからありがたいな。


「お主、転移の間から先へ足を延ばしたのか?」

「うん。今日は転移の間を確認しに来たんだけど、すぐ場所わかったからもう少し先行ってみようと思って。三つの転移ゲートの内の『小の試練』ってとこだよ」

「群れで現われるホワイトライオン、間違いないの。お主の言いようだと紅葉珠を複数持っているように聞こえるが?」

「五つ持ってるよ」


 ナップザックから全部取り出して見せる。

 結構知られているものらしいが、皆ビックリしてるな?


「……皇帝陛下への献上品にちょうどいいかもしれぬ」

「そんな価値のあるものなんだ?」

「村には一つ象徴として飾ってあるがな」


 えらい珍しいものらしい。

 おかしいな?

 いくらレアドロップといったって、ライオン自体は珍しくないじゃん。

 長老が言う。


「紅葉珠は洞窟に生息する獅子の魔物以外からのドロップは確認されておらぬ。そして獅子の魔物の生息する洞窟はここだけじゃ」

「あれ? じゃあ随分と貴重なものだね」


 ここでしか手に入らないのか。

 特産品じゃん。

 ガンガンライオンを狩って……いや、ライオンが絶滅しちゃうな。


「もう今は積極的に獅子を狩る戦士はおらんでな。ほぼ手に入らぬものとなってしまったな」


 長老の目が優しい。

 紅葉珠は獅子の民のものであるべきかもしれない。

 しかしいずれドーラに魔宝玉の展示を行う施設を作ると思う。

 観光資源として紅葉珠一個は欲しいな。


「我らの間では獅子の魂が結晶化されたものと言われておる。真の戦士にしか手にすることはできぬ、とな」

「真の聖女たるあたしが手に入れるのは当然だね。売ったらどれくらいの価値になるかな? あたしこっちのお金持ってないから、売ろうかと思ってたんだけど」

「さて、売りに出されるものではないでな……」


 ものの価値から換算すると、紅葉珠一個一〇万ゴールドくらいの価値みたいだな。

 帝国での黄金皇珠の売値くらいの価格?

 結構な大金なんだけど?


「……世に出てくるものじゃないんなら放出すべきじゃないな。個数絞ってありがたみを持たせるのがよさそう」

「それはそうじゃが……」

「ウタマロに一個あげる。必要だと感じたタイミングがあったら使って」

「よいのか?」

「いいんだよ。ウタマロが偉い人になったらあたしにもメリットがあるだろーが」

「ハハッ、現金な考え方だな。ありがたくもらっておこう」


 環境が人を作るということがある。

 ウタマロは会った時からなかなかの人物だとは思っていたけど、成人の儀の結果から周囲の人々にもひとかどの者と見られているようだ。

 ならばウタマロの取り得る手段も多い方がいい。

 紅葉珠も有効に使ってちょうだい。


 同時にウタマロを盛り立てることイコール村の利益&あたしの利益という構造を作ることに成功した。

 今後どうなるかわからんけど、ウタマロ並びに獅子の民とは共闘できるな。


「もし何かの事情で紅葉珠の数が必要になったら、相談に乗るからね」

「うむ」

「ところで代わりに洞窟で手に入れたアイテムとか買ってくれる? おゼゼがないのは不便で。魔法の葉がたくさんあるんだ」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「ここは爽やかでいいところだなあ」

「あんまり爽やかじゃないぬよ?」

「ヴィルにとっては不快かもしれないね。肩車してやろう」

「ありがとうだぬ!」


 シンカン帝国からの帰宅後、お肉を狩ってから『不思議の泉』の転送先にやって来た。

 聖風樹がたくさん生えてるところなので、ヴィルには居心地が良くない。

 でもいい子だね。

 よしよし。

 アトムが聞いてくる。


「先にたわわ姫を呼んできやすかい?」

「いや、あたしとヴィルで呼んでくるよ。あんた達はクララの指示に従って、挿し木によさそーな聖風樹の枝切っといてくれる?」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


 てくてく。

 ヴィルを肩車したまま泉の方へ。

 風が心地よいなあ。

 あったあった、ポツンと落ちてる鋼の斧。

 いつ見ても怪しいアイテムの鋼の斧を泉に放り込む。

 と、ごぼごぼザバーンと水面を割れるお馴染みの展開。


「あなたが落としたのは金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」

「たわわ姫こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あっ、ユーラシアさんではないですか」


 現われたのはやや重力に負けそうな、良く言えば柔らかさが男心を魅了しそうなおっぱいの持ち主たわわ姫だ。

 この世界を統括する女神様でもある。


「どうされたんですか?」

「この前もらってった聖風樹の枝あるじゃん? あれを帝国のヴォルヴァヘイムの近くに植えてきたんだ。苗作って植樹ってのをもう何回か繰り返すと思う。時々枝取りにくるね、とゆー報告」

「ユーラシアさんは熱心ですねえ」

「熱心なんだよ」

「ところでユーラシアさんはどうして聖風樹を欲しがってるのですか?」

「あれ、言ってなかったっけ?」


 ヴォルヴァヘイムの魔力濃度が高くて、巨大魔物出現の関連性がどうこう。


「ってわけなんだ」

「つまり聖風樹を植えておくとどうなるんです?」

「聖風樹の林ができると魔力濃度が安定して、巨大魔物が出現しなくなるんじゃないかっていう説があるんだ。たわわ姫どう思う?」

「もっともらしく聞こえますね。私は詳しいことは知らないのですけれども」


 うむ、そーだろーな。

 たわわ姫は女神様ではあっても専門家じゃないから。

 研究者みたいな所見は持ってないんじゃないかとは思ってた。


「今日ドーラは雨なんだ」

「そうですね」

「雨の日ずっと家にいると気が滅入るから、海の女王んとこに昼御飯食べに行くことが多いんだ。お肉だよ。たわわ姫も行かない?」

「行きます!」

「よーし、うちの子達と合流して行こうか」

あっちへ行ったりこっちへ来たり、あたしも忙しいことだ。

じまーん!

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