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第2153話:つむじの巻き加減がそっくり

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 横柄な態度のボンボン父がいるところまでやって来た。

 取り巻きが一杯いるなあ。

 有力者には違いないんだろう。

 メッチャ小物臭がするけど。


「小物臭がするぬ!」

「こらヴィル。本当のことを言ってはいけません」

「ふん、この前の小娘だな?」

「この前の美少女精霊使いユーラシアだよ」


 何だその警戒するような目は。

 聖女たるあたしに向けていい視線じゃないだろーが。


「お前の出る幕はない! ウタマロには我が娘が似合いなのだ!」

「おっちゃんの娘とゆーのは、隣にいる子かな?」

「そうだ!」

「可愛い子じゃん。お父ちゃんに似なくてよかったねえ」

「何を言うか! 我とつむじの巻き加減がそっくりだと評判なのだぞ!」

「わからんわからん」


 何だそのつむじの巻き加減がそっくりってのは。

 聞いたことないわ。

 シンカン帝国ジョークかと思ったけど、誰も笑ってないし。

 あたしが相方務めてる漫才が滑ったみたいで気分が悪いわ。


 ボンボン父の隣にいるのは、おずおずとしたあたしと同じくらいの歳の女の子。

 押しの強いボンボン父とはえらい違いだ。

 確かにウタマロと似合いと言えば似合いの年格好ではある。

 が……。


「ウタマロは間違いなく出世する!」

「成人の儀で結構なライオンを持ってくるほど一目置かれるルールが厳密に適用されるなら、おっちゃんの言う通りなんだろうねえ」

「お前のようなどこのウマの骨とも知らぬ女は、ウタマロの伴侶に相応しくない!」

「えっ?」


 あれ? あたしが仮想嫁になってるじゃねーか。

 何でやねん。

 チラッとウタマロの方見たら、ボンボン父が全然聞く耳持たないから説得してくれ?

 了解。


「まず、あたしのことを理解しなさい」

「理解だと?」

「あんたはウマの骨って言ったけど、これでもあたしは放熱海より北では結構知られているんだ。放熱海以北で各国の通貨単位を統一しようという動きがあって、あたしはその組織のトップになる予定なの。『世界の王』と呼ぶ人もいる」

「せ、世界の王だと? 大口も大概にしろ!」

「本当だとゆーのに。あんたらでもおそらくは世界最高であるあたしのレベルに気付いてる人はいるんでしょ? 大体精霊や悪魔を配下に持ち、世界を自由に飛び回れる美少女がそんじょそこらにいてたまるか」


 大々的にふかしたった。

 半信半疑なんだろうが、あたしのレベルがわかるっぽいお年寄りには頷いてる人も多い。


「と、あたしのことを知ってもらうところまでが前提ね。結論からゆーと、あたしはウタマロの嫁じゃないでーす」

「ウタマロの嫁、ではない?」

「ウタマロに助力して有力者になってもらい、あたしの目指す繁栄する世界の構築を手伝ってもらおうってゆースタンスだぞ?」


 どよめく人々。

 あたしがウタマロの嫁ってのは、結構な説得力のある話として受け止められていたらしい。

 それ見たことかと嵩にかかるボンボン父。


「ならば我が娘がウタマロの嫁だ!」

「あり得る未来の一つだね」


 この話断っちゃっていいのかな?

 ウタマロを見たら頷いてる。


「でも愚策だぞ?」

「愚策だと?」

「ちなみにおっちゃんが成人の儀式の時提出したライオンの一部って何?」

「えっ……連獅子の頭だったな」

「連獅子よりすごい主様を丸ごと提出したウタマロは、おっちゃんより偉くなる可能性が高い。とおっちゃんは思ってるから、自分の娘を嫁がせようとしているで合ってる?」

「その通りだ!」

「誰も幸せにならないだろーが」


 おおう、群衆全員の頭に疑問符が見えるよ。

 ボンボン父が聞いてくる。


「誰も幸せにならない、とはどういう意味だ?」

「文字通りの意味だよ。ウタマロにはもっと国の偉い人から縁談が来るかもしれないと聞いた。普通に考えて、国の有力者と婚姻で結ばれた方が有利なんじゃないの? 少なくともウタマロにとっては」

「そ、それは……」

「この村にとってだって得にならないんだぞ? ウタマロが国に影響力を及ぼせるくらいの男になった方が、遥かに恩恵が大きいと思わない? おっちゃんの娘さんは確かに可愛いけど、たかが地元のお偉いさんの息女では重みが足りない。せっかく皇帝陛下まで注目してるくらいのチャンスなんだ。村としてウタマロを押し立てた方がいいと、あたしは思うね」

「「「「「「「「……」」」」」」」」


 村のこと、ウタマロのことを考えれば確かにな、って雰囲気になってきた。

 もう一押し。


「さらに言うならば娘さんも幸せになれない」

「何故だ!」

「だって娘さん、右後ろに立ってる男性と忍び愛だもん」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」


 真っ赤になる娘さんとその右後ろの男。

 可愛いよニヤニヤ。


「なななななな何故わかる!」

「わかるに決まってるだろ。あたしの超高感度ラブセンサーを舐めんな。ちなみに二人の相性は大変よろしいので、夫婦になると幸せになれるよ」


 ハハッ、決めつけたった。

 ラブラブしてください。


「とゆーわけで、ウタマロにとっても村の人にとっても娘さんにとっても幸せなことじゃないってのはわかってもらえたかな?」

「むむむむむ……」

「この期に及んでまだ悩むことあるのかよ? ゴリ押そうとしてるのはおっちゃんだけだと察しなよ」

「我の野望が……」

「野望言っちゃうのな? 嫌いじゃないけど往生際が悪い。おっちゃんにとっても決して幸せなことじゃないぞ? 村の発展の機会を潰したとかお父様のいけずとか、死ぬまで言われるんだから」

「わ、わかった。この話は諦める!」


 ようやくか。

 ウタマロに安堵の表情が浮かぶ。


「もういっぺん確認しとくけど、あたしはウタマロがこの村の人と結ばれるのが悪いと言ってるわけじゃないよ? でも国の有力者からアプローチがあるかもしれない。千載一遇のチャンスだってわかりきってるなら、その前にウタマロのお相手を決めて選択肢を狭めるのはバカのやることだろと思う。あたしはバカなことが嫌い」


 全員が頷いとるがな。

 村の意思が統一されたようで何よりです。


「どうやってウタマロをバックアップするかを考えるのが村のためじゃないかな。おっちゃんもあんまり強引に物事進めようと思わない方がいいぞ? ウタマロに話の通じない面倒なやつと思われると、老後寂しいぞ?」

「う、うむ」


 ざっとこんなもんです。

 話変えよ。

あたしの説得力の出番だったわ。

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