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第2109話:ビバちゃんを何とかしないと

 隻腕の傭兵隊長カムイさんの思惑と、戦争し合うモイワチャッカとピラウチの現状を交えて話す。

 グラディウスさんが元々モイワチャッカの人間なら、荒れ果てた国を何とかしたいという思いが痛いほどよくわかるだろ。


「長年の戦争で、モイワチャッカ・ピラウチ両国とも疑い合ってるじゃん? さらにゆーと、間に入る傭兵隊含めて三つ巴。せっかく会談が実現しても、ふつーに考えて実のある結果になりっこない」

「道理だな」

「だから帝国とフェルペダから立会人を出してくれないかって、カムイ隊長に頼まれたの」

「中立の大国を間に入れて、少しでも体裁を整えたいということか。会談はいつだ?」

「まだ日が決まってないけど来月の上旬。帝国からはドミティウス閣下とあたしが参加するよ。急なことで悪いけど、フェルペダからも誰か出してくれない? あたしが転移で連れてくから、移動は考えなくていいよ」

「面白いのですわっ! 私が出ますわっ!」

「「「えっ?」」」


 帝国とフェルペダは参加すること自体に意義がある。

 参加者に政治的な判断が求められるわけじゃないから、ビバちゃんでもいいっちゃいいんだが。


「ビバちゃん。大国フェルペダから王位継承権一位の王女が来たとなれば、結構歓迎されると思うんだよ。注意点は?」

「……フェルペダの次期女王の発言は重い。安請け合いしちゃダメってことよね?」

「よし、ビバちゃん偉い! モイワチャッカかピラウチ、あるいは傭兵達から何か要望が出るかもしれないけど、笑って流しなさい。それから機嫌悪くしないでね」

「私の機嫌? 何故?」

「『アイドル』の固有能力の効果は、どーもビバちゃんの機嫌に左右されるみたいだからさ。『アイドル』が変に作用して会談を壊してみなさい。えらいことになる」

「へ、ヘイト案件ね?」

「そうそう。要注意」


 モイワチャッカとピラウチにとってはえらいことだが、ビバちゃんにとって致命的ってことはないだろう。

 それにしても『アイドル』を何とかコントロールできんもんか?

 マルーさんに相談だ。


 グラディウスさんが言う。


「よし、我が国からは王女殿下とそれがしが参加しよう」

「ありがとう!」

「ええっ?」

「ええっ、じゃないわ。グラディウスさんがいれば楽だって。面倒なことは全部押しつけて構わん」

「そ、そうね」

「グラディウスさんが同行なら、ビバちゃんはマジで遊びに行くつもりでいいよ」


 グラディウスのおっちゃんが来てくれるならまず安心だ。

 フェルペダから現宰相と次期女王が参加するとなれば、モイワチャッカ・ピラウチ両国の会談への期待度も上がりそう。

 思ってる以上の成果が見込めるかも。


「日が決まったら連絡するね。ビバちゃん借りてくよ」

「バイバイぬ!」


          ◇


「思ったよりフェルペダは面白くなかったぞ」


 ネポスちゃん(推定九歳)がぶーたれる。

 ビバちゃんルーネネポスちゃんその従者を連れてカトマスにやって来た。

 今はビバちゃんの『アイドル』の効果が出てると思えないな。

 外だからか、あるいは外国に来てビバちゃんの気分が上々のせいか。


「ごめんよ。もうちょっと遊んでくるつもりだったんだけど、お仕事入っちゃったからね。あたしも食用ハトもらいはぐれたわ」

「食用ハト?」

「フェルペダの名物料理なんだ。ドーラでも増やそうと思ってるの」

「とってもおいしいですのよ?」

「ふうん。食べてみたかったな」

「楽しみが残ったと思えばいいよ。ところでここカトマスには、ドーラ一の鑑定士が住んでるんだ」

「マルーさんですよね?」

「そう。ネポスちゃんも固有能力持ちだから、調べてもらおう。期待してるといいよ」

「ぼくが固有能力持ち?」


 やっぱり調べてないのか。

 皇子皇女は皆調べてるみたいだけど、皇族から外れるとわざわざ調べなくなっちゃうようだ。


「固有能力って不思議な力なんだろう?」

「育てば便利に使えたり役立ったりすることが多いね。ネポスちゃんは何かの属性魔法使いだよ」

「そうなのか? ぼくは魔法なんか使えないけど」

「魔法系の固有能力持ちでも、最初から魔法使える人は僅かだよ。ルーネもレベルが上がって初めて魔法使えるようになったの」

「そうですよ。ネポス様も先が楽しみではないですか」


 ルーネがレベル上げようって言わないな。

 ネポスちゃん割と癇癪持ちっぽいから、魔法覚えると危ないと感じてるのかもしれない。


「ここだよ」


 魔女の館ことマルーさん家にとうちゃーく。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おやおや、アンタ達かい?」


 ニルエはいない。

 買い物かな?

 マルーさんにお土産のお肉を渡す。


「ありがとうよ。皇女様と、そちらの二人は初めてだねい」

「こっちの男の子がルーネのはとこのネポスちゃん。そっちの道化みたいなメイクしてる子がビバちゃん。フェルペダっていう遠く東にある国の王女様」

「アンタは当たり前みたいに高い身分の人を連れてくるねい。しかし王女?」


 あっ、マルーさん気付いたな?

 ビバちゃんの『アイドル』がヤバいってことに。


「王女とはどの程度の王女なんだい?」

「今の王様夫妻の唯一の子だよ。王位継承権一位」

「次の女王様ってことかい?」

「順調に行けば。あっ、順調だったら首ちょんぱだったわ」

「首ちょんぱは避けたいのですわっ!」

「アンタが連れてきた理由がわかったよ」


 眉を顰めるマルーさん。

 不吉な予感を察知したか、ぶるっと震えるビバちゃん。

 意外とカンがいいな。

 でもそんなにビクつかんでもいいぞ。

 解決策を聞きに来てるんだからね。


「メインイベントはあとかい?」

「うん。ネポスちゃんの固有能力を先に教えてくれる?」

「ふん。『土魔法』だよ」

「やたっ! よかったねえ」

「嬉しい!」


 火魔法や雷魔法を小さい子が覚えてると危ないけど、土魔法ならそう問題ないだろ。

 レベル上げしてやる手もあるな。


「発現度合いもごく普通だよ。特に注意することはないねい」

「ありがとう。今日ネポスちゃんが後頭部どついたインゴっていう近衛兵いるじゃん? 彼は土魔法使いだよ。色々教えてもらうといい」

「うん。先輩だな? そうする」


 ハハッ、ネポスちゃんニコニコしてるじゃねーか。

 やっぱ自分の知らない能力が明らかになると嬉しいんだろうな。

 さっきまでブーブー言ってたのがウソみたい。

 現金なもんだ。

さて、『アイドル』は何とかなるか?

でもドーラは一芸に秀でた人が多いから、こーゆー時は頼りになるなあ。

でもふつーの有能な文官とかがいないから困っちゃう。

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