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第2108話:『アイドル』がネックになる

「実は……」


 話し始めるネポスちゃん。

 うむ、つい虐めたく……構いたくなる子だな。

 生意気だけど素直な子だわ。


「リキニウスちゃんがオードリーを婚約者にしてから、あまり遊んでくれなくなってムシャクシャする。レプティスさんが察してあたしに会ってみろって言った。不満をぶつけてやろうかと思ったで合ってる?」

「どうしてわかるんだ!」

「そのまんまやんけ! あたしだってもうちょっと捻りを期待したわ! エンターテインメント舐めんな!」

「エンターテインメント?」

「ごめんよ。エンタメはあたしの事情だった」


 まーでもネポスちゃんがつまらなく思ってる理由はわかった。

 レプティスさんの意図としては、あたしがどこかへ遊びに行くのにつき合わせてくれ。

 いい経験させてやってくれってことみたいだな。

 しからば。


「つまりネポスちゃんは、やることや面白いことがないから怒れてくるわけじゃん?」

「うむ、そうだな」

「あたしは今からフェルペダへ行くんだ。ネポスちゃんも行く?」

「フェルペダ? とはどこだ?」

「ここ」


 地図を取り出して見せる。

 ネポスちゃんの従者が慌てとるけど、そんな必要ないぞ?

 どうせレプティスさんは、あたしに仕事を振った時点で外国行くくらいのことは予想の範囲内だろうしな。


「行きたいぞ!」

「よーし、じゃあ連れてってやろう。ヴィル、ビバちゃんと連絡取ってくれる?」

「わかったぬ!」


 掻き消えるヴィル。

 ネポスちゃんは相当不思議だったみたい。


「消えた?」

「ワープだよ。あ、ネポスちゃんはうちのヴィルが悪魔だってことは知ってたんだっけ?」

「お爺様に聞いた」

「悪魔がどの子もできるってわけじゃないんだけど、ヴィルはワープが得意なんだ。どこでも自分の好きなところに一瞬で飛べるってことね。そしてあたしもヴィルがビーコンっていう目印を運んでくれると、そこまで行くことができるんだよ」

「どこでも?」

「どこでも。だからヴィルがワープできるところならあたしも行けることになるね」

「ふうん。すごいのだな」


 すごいんだよ。

 赤プレートに反応がある。


『御主人! グラディウスだぬ!』

「えっ? グラディウスのおっちゃん?」


 予定と違うぞ?

 まあグラディウスさんでもいいか。

 モイワチャッカの状況を伝えられるし。


『ユーラシアだな?』

「そうそう、世界のどこへでも降臨する聖女のあたし」

『ちょうどいい。こちらへ来るのだろう?』

「行く。何人かお供がいるけどいいかな?」

『いいぬよ?』


 あ、ちょっと面白い。

 さすがヴィル。


『ハハッ、構わん。すぐ来てくれ』

「ヴィル、ビーコン置いてね」

『置いたぬ!』


 新しい転移の玉を起動、ルーネネポスちゃんその従者とともにフェルペダへ飛ぶ。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルとルーネ、それとビバちゃんも合わせてぎゅーする。


「何だ。ビバちゃんもいたんじゃん。グラディウスのおっちゃんと何してたの? 秘密の逢瀬? にらめっこ? 泣き相撲?」

「違うわっ!」

「ハハッ、その三択なのか。そちらの坊やが?」

「カル帝国の先帝陛下の弟の孫ネポスちゃんだよ。ネポスちゃん、こちらがフェルペダ王女のビバちゃんと宰相のグラディウスさんね」

「うむ、御機嫌よう」


 転移直後でしかも外国の王族と会ってるのに、意外とネポスちゃん堂々としてるやんけ。

 あっ、ネポスちゃんと従者がビバちゃんの『アイドル』の効果に当てられてる?

 まーいーや。

 大したことないから放っとこ。


「で、ビバちゃんとグラディウスのおっちゃんは何してたのよ? 秘密の逢瀬? 逢引き? デート?」

「違うのですわっ!」

「一択ではないか。いや、実はな。ユーラシアなら王女殿下に言い聞かせることができるかと思ってな」

「何を?」

「殿下は将来女王の座に就かれる身である。王配は重要であろう?」

「メッチャ重要だね。いいかい、ビバちゃん。将来首ちょんぱになるならないの半分以上は旦那さんで決まるんだぞ?」

「そ、そうなの?」


 脅えるビバちゃん。


「そうだとゆーのに。くれぐれも顔で選ぶなよ? 自分に足りないものを持ってる人を旦那にするといいよ。ビバちゃんの代わりに執務を行える人じゃないと話にならんぞ? 周りの人の意見をよく聞いて決めなさい」

「わ、わかったわ。でもどうしても生理的に受けつけない人だっているでしょう?」

「まあね。でもあたしは自分に合わない人を旦那にしろって言ってるわけじゃない。世の中に男は星の数ほどいるんだぞ? 能力があってビバちゃんと合う人がいないわけないじゃん。旦那さん候補だって一人じゃないんでしょ?」

「もちろん何人かいるらしいけど」

「じゃ、会ってみりゃいいよ。とゆーか自分の年齢考えろ。嫁き遅れにならない内に自分を売り込まないと」

「そこでユーラシアに聞きたいのだ。王女殿下の能力、どうにかならんか?」


 ビバちゃんが惚れてりゃ『アイドル』の効果は旦那に及ばないから問題はない。

 でもビバちゃんは絶望的に男を見る目ないから、その場合旦那は無能か、旦那に嫌われて夫婦として破綻するかどっちか。

 能力と相性で選ぶと夫婦としてはうまくいきそうだけど、『アイドル』の効果が執務に及んで政治が荒れるかもしれない?

 あれ、意外と面倒だな。


「……ビバちゃん借りるね。『アイドル』がネックになっちゃうわ。ドーラにあたしの信頼する鑑定士がいるから相談してみる」

「よろしく頼む。ユーラシアの用は何だったのだ?」

「お隣のモイワチャッカとピラウチがもう三〇年も戦争してるっていうじゃん? ところが両国が会談を行うことに決まったんだ。停戦に繋がるかもしれない」

「何? もしかしてカムイの発想か?」

「カムイ隊長を知ってるんだ?」

「それがしは元々モイワチャッカの人間でな。親しい傭兵も多いのだ」


 グラディウスさんのレベルは結構なものだ。

 魔物のいるモイワチャッカにいたからこそだったか。


「カムイは昔から戦争を止めたいという構想を持っていたぞ。ユーラシアは『アトラスの冒険者』のクエストでカムイと知り合ったんだな?」

「うん。今カムイ隊長は『神の親』になって結構な影響力を持ったから、会談が実現したってことなんだけど」

「『神の親』……なるほど、停戦のチャンスかもしれぬ」


 さて、本題だ。

『アイドル』自体はいい固有能力なんだけどなあ。

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