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第2105話:『神話級魔物を倒してプリンセスをゲットしました』

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使いじゃないか。いらっしゃい」


 フィフィを塔の村に送ったあと、イシュトバーンさん家にやって来た。

 美少女番警備員ノアが言う。


「どうしたんだ? おかしな時間じゃないか」

「昼食時間も夕食時間も外してるからっておかしい扱いとは、あたしを何だと思っているんだ」

「間違いないんだぬ!」


 アハハ、最近のヴィルは確実に拾うので偉い。

 ぎゅっとしたろ。


「ヘリオスさんとこの紙屋へ行こうかと思って」

「なるほど」


 あ、イシュトバーンさん飛んできた。


「いらっしゃーい!」

「あんたが客じゃねえか。絵か。絵の用だな?」

「ちげーよ。二日後ドジっ娘女騎士なんだから、もうしばらく右手を大人しくさせときなよ」

「お預け食ってるのが二人もいるじゃねえか。待ちきれねえんだぜ」


 わからんでもない。

 お預けの二人とは、おっぱいピンクブロンドとドジっ娘女騎士だ。

 字面から期待度大きいもんな。

 二人とも見かけは正統派の美人さんだし。


「ヘリオスさんとこ行くんだよ。本を刷ってくれっていう注文が入ったんだ。もう代金ももらってるの」

「帝国でか。どういうことだ? 自費出版ってことか?」

「ではないけど近いな。ビアンカちゃんの書いた本なんだ。五〇〇〇部刷って、全部一旦ヴィクトリアさんが引き取る。そこから本屋に卸すって感じ」

「ほう? 要するにヘリオスがリスクを負わなくていいってことだな?」

「そうそう。印刷屋のお仕事に専念してもらうってゆー案件」


 輸送コスト考えてもドーラで刷った方が安いっていう状況が続く限り、帝都から仕事が入りそう。

 ヘリオスさんも儲けてくれればいいよ。

 ヘリオスさんが砂糖産業にまで業容を拡大してくれると、ドーラの発展にダイレクトに繋がりそうだしな。


「今日は行政府に用はねえのか?」

「特にないな。次の移民いつ来るか聞きたいっちゃ聞きたいけど」

「ドミティウス殿下が『魔魅』持ちじゃなくなったこと、パラキアスに言ってあるか?」

「言ってない」

「殿下に対する印象が変わると思うぜ?」

「うーん、これ行政府の皆の前で言っちゃっていいものかな?」

「その問題があったか。じゃあオレの方から言っとくぜ」

「お願いしまーす」


 イシュトバーンさんに任せておけばいいだろ。


「ドミティウス殿下はその後どうだ?」

「昼前に会ってきたんだ。サッパリしたいい顔してたよ」

「そうか」


 あの顔見ちゃうと、お父ちゃん閣下は『魔魅』持ちじゃなくなってよかったと思わざるを得ない。

 つくづく固有能力って難しいな。


「行こうぜ」


          ◇


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 ヘリオスさんの紙屋にやって来た。


「おい、途中で新聞記者に会わないと物足りねえ気がするんだが」

「いや、実はあたしもなんだよ」

「わっちもだぬ!」


 ヴィルもだったか。

 新聞記者ズが絡んでくる時の感情は、ヴィルにとって心地良いものなのかもしれない。

 このくらいの時間だと、新聞記者ズはおそらく行政府へ行ってるんだろう。

 『ドーラ行政府だより』のネタをもらいにだ。

 お仕事熱心なのはいいこと。


「ああ、ユーラシアさんではないですか。それにイシュトバーン翁も。いらっしゃいませ」


 店主ヘリオスさんが奥から出てきた。

 バーナード君が店先にいないのはお使いか何かで出ているのかな?


「こんにちはー。お仕事の依頼でやって来ましたよ」

「ありがたいですな。どういったものでしょう?」

「これ表紙絵と原稿、あーんど前金で四〇万ゴールド。五〇〇〇部製本お願いしまーす」

「ああ、聞いております。帝国の皇女殿下からの注文ですな? 帝都の人口が多いとは言え、五〇〇〇部とはなかなか豪気ですな」

「そーなんだよ。今までないタイプの女性向けのお話じゃん? どれくらい売れるか読みづらいのに、いきなり五〇〇〇部もだよ。皇女様のおゼゼなんて国民の税金だからさ。売れないと税金ムダ遣いさせたことになっちゃう」

「おかしな心配だな、おい」

「何故かあたしにプレッシャーがかかるわ」

「かかるんだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 貴族の御婦人方のネットワークがあるから、一〇〇〇部くらいは売れると思う。

 社交シーズンが始まろうって時期に、流行りの話題に置いていかれるわけにはいかないだろうし。

 でも五〇〇〇部はどうだろうなあ?

 一般市民にかなり売らなきゃいけない勘定だ。


「表紙オレに描かせりゃよかったじゃねえか。右手が余ってるんだぜ?」

「何だよ右手が余ってるって。イシュトバーンさん男は描かないじゃん。恋愛ものだから、描くならカップルの表紙だぞ?」

「男は勘弁してもらいてえな」

「もー我が儘なんだから。わかってたけど」

 ダンとニルエをモデルにした表紙ならピッタリだったかもしれないなニヤニヤ。原稿を流し読みしていたヘリオスさんが言う。

「……これ、ドーラで販売してもいいでしょうか?」

「もちろん。販売価格の一割を作者に還元するなら」


 あれ、ヘリオスさんはドーラでも売れると見ているのかな?

 ちょっと意外だ。

 でもビアンカちゃん作みたいな女性向きの本もないと、客層が広がらないんだよな。

 ヘリオスさんが興味持ってくれるのは嬉しい。


「まず『神話級魔物を倒してプリンセスをゲットしました』というタイトルがポップでよろしい。内容もエピソードがコミカルですよ。言うほど女性特化の読み物とは思いません」

「そお?」


 あたし最終原稿読んでなかったわ。

 でも売る側本職の評価が高いことはいいことだ。

 『ケーニッヒバウム』にも売り込みやすい。


「店頭に十部程度並べて宣伝してみますよ」

「お願いしまーす。そーだ。スイーツレシピ集一〇冊買っていきまーす」

「レシピ集を?」


 不思議そうなヘリオスさん。


「思ったより部数出てますよ。輸出用としても追加注文いただきましたし」

「安いし内容が画期的だってことで、帝国で結構話題なんだって。皇宮の料理人は全員手に入れたって言ってた」

「絵が多くてわかりやすいだろ。字を読めねえ料理人にも配慮してるんだぜ」

「へー。知られてくるともっと売れるかもねえ。いや、でもこの本カラーズや塔の村にまだ入ってないみたいで」


 スイーツはどこでも食べられるのがいいと思うよ。


「さて、帰ろうかな。ヘリオスさんさよならー」

「バイバイぬ!」

もうレイノスでヴィルを肩車してても全然問題なさそう。

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― 新着の感想 ―
そんななろうみたいなタイトルの本を皇女殿下におすすめされたらお茶吹き出して処されてしまう……。
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