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第2079話:世にも珍しいドクロ

 ライオン達が亡骸を引きずっていくのを見ながらクララが言う。


「つまりここにはここ独自の知識がある。でも私達にはその知識を入手すべき方法がないということだと思います」

「わかるようでわからん。つまりどゆこと?」

「例えば異世界なのか、あるいは隔絶された地域なのか」

「わっちはここがどこかわかるぬよ?」

「ミーはわからないね」

「むーん?」


 ヴィルはホームをマークしてるはず。

 ホームとの位置関係からここがどこかを大体感知できるということだろう。

 でもダンテだって亜空間を隔てていればそれとわかるはずだ。

 とゆーことは、あたし達の世界のどこかではあるわけか。

 『世界最大のダンジョン』なんだから当たり前だったわ。


「意外なところにエンタメポイントがあるクエストだったな。もうちょっと謎を楽しみたい気がするから、答え合わせはしないでおこう」

「そうでやすね」

「先進むよー」


          ◇


「『蓄光石』?」

「へえ。暗く緑に光ってるやつは『蓄光石』でやす」


 歩きながら説明を受ける。

 『光る石』だけじゃなくて、光を集めて光る『蓄光石』というものも混ざっているらしい。

 だから洞窟なのに結構明るいんだな。

 目が慣れてきたってこともあるんだろうけど。


「『蓄光石』は素材扱いされてないんですよ」

「利用価値ありそうなのにねえ」

「ドーラには少ないでやすぜ?」

「アリトル持って帰るね?」

「そーだね。標本として少しだけ」


 たくさん持っていくとこの洞窟が暗くなりそう。

 ガリガリと穿ってナップザックに収める。

 誰かが研究してくれると面白そうな石ではあるな。

 ドーラにあんまりないんじゃ、使い道を考えても輸出品にはならんか。


「あまり素材の落ちてないダンジョンでやすぜ」

「ユーズドケイブだからね」

「うん。人が入るから持ってかれちゃうんだろうな。いよいよもって面白みがない。今のところこのダンジョンの魔物やアイテムの知識があたし達にない、ってとこしかエンタメポイントがないな」

「『世界最大のダンジョン』ですよ? 奥まで人が入るとは到底思えません」

「じゃ、歩きづらくなってからが本番か」


 いや、だから奥が愉快とも限らんのだけど、採取できる素材は多いんじゃないかな?

 あ、またライオンか。

 茶色いやつ一頭だ。


「赤いライオンは群れで現れるみたいだけど、こいつは単体で現れるのかな?」

「そういう性質なのかもしれませんね」

「あたしは聖女だからムダな殺生はしたくないんだよな。話通じるかな? おーい、あんたいいかな? あたし達はあんたのエサじゃないし、あんたもあたし達の御飯じゃない。ユーシー?」

「がうっ!」

「ダメだ。言うこと聞かない。ぺいっ!」


 手首を閃かせてライオンの首を刎ねる。


「またつまらぬものを斬ってしまった。タダ働きはマジで勘弁してもらいたい」

「聖女だからムダな殺生しないんじゃなかったでやすか?」

「物事は多面的に捉えたいね」

「アローンライオンはキカンボーね?」

「種の違いかもしれないけど、他にエサがあるかないかも大きい気がするな」

「検証しながら進みましょう」

「検証するたびタダ働きの気配」

「タダ働きだぬ!」


 アハハと笑いながらさらに先へ。


          ◇


「結論としては、どのライオンもあんまり頭よくない。とゆーかバカだ」


 このダンジョンで今までに遭遇したライオンは三種。

 群れで現れる赤いライオンと、単体で現れる明るい黄褐色のライオン、身体の大きい黒っぽいライオンだ。

 黒いライオンはレア種のような気がする。


「どいつもこいつも、他にエサがないとこっちをエサ扱いしてくるじゃん。グリフォンみたいに待てができない。何故学習しないのか」

「姐御、向かってくるやつは倒しちまってやすから、学習の機会がないでやすぜ」

「なるほど、学習の機会を奪ってしまっていたか。でもライオン以外の動物や魔物に遭わないなー」


 ライオンのエサとなってる何かがいるはず。

 ところどころに開いている穴から気配は感じるんだが、姿を見せないのだ。


「ライオンが最上位の捕食者なんでしょう。このダンジョンを堂々と歩くのはおそらくライオンしかおらず、弱者はすぐ姿を隠す習性がある。ライオンにとって出遭ったものはエサ、という認識なんでしょう」

「ライオン同士が出遭うとどうなるのかな? エサ対エサの戦い?」

「バトルを避けるサインがあるのかもしれないね」

「あたし達はそんなサインを知らんからバトルになるのか」


 そー考えると、あたし達の方がもの知らずで無法なことをしているように感じるな。

 いや、特にライオンに対して悪いとかは思わんけれども。


「この辺まで来ると素材が多いでやすね」

「うん。ほとんど人が来ないんだろうな」


 ゴツゴツしてたり暗いところがあったりして歩きづらい。


「シンプルなダンジョンね?」

「今のところはね。広い狭いはあっても、基本的に一本道だしなあ。ずっとそうとは限らんけど」


 何たって世界最大のダンジョンという触れ込みなのだ。

 このままずっと単調さが続くとは思いたくないけど、ちょっと飽きてきた。


「あ?」


 何かに蹴躓いた。

 骨?


「姉御が躓くなんて珍しいでやすね」

「メスらしいだなんていやん。そんなに色っぽかった?」


 冗談はともかく、いかに歩きにくいとはいえ、あたしが躓くなんてことがあるとは?


「きっとキーアイテムだからだな」

「どう見てもモンスターのスカルね」

「どう見てもドクロだけど意外と違うのかも。全知全能!」


 頭の中に浮かぶ文字。


『名称:プライベートライオンの頭骨』

「うわ、やっぱただのドクロだよ。しかも説明なしだ。プライベートライオンってどのライオンかな?」

「この頭蓋骨は大きいですから、あの黒いやつではないでしょうか?」


 おそらくレアライオンのドクロだから、今後何かのきっかけになる?

 考え過ぎか?


「このドクロは持ってこーっと」

「やはり気になりやすか?」

「少しね。特にイベントに繋がらないようだったらフクちゃんにあげよう。あたしが躓いた世にも珍しいドクロとして」


 欲しがらないかもしれないけど。


「今日はここまでにして帰ろうか。ヴィル、この場所覚えといてくれる?」

「了解だぬ!」


 次回は転送地点から今日とは反対側へ向かうつもりだが、いずれ奥へ行く時はここから進もう。

 転移の玉を起動して帰宅する。

どーも正体の掴めないダンジョンだな。

お楽しみはこれから。

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