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第2049話:冒険者はお仕事、損なことはやらない

 ヴォルヴァヘイム中央部に向かってひたすら歩く。

 確かに段々魔力濃度が高くなってきたけど、やはり魔力の動きを感じるってことはないみたい。

 魔境や『永久鉱山』とはちょっと違うところだな。


 守衛サムさんが聞いてくる。


「ユーラシア殿が精霊や悪魔を引き連れてるのは、やはり固有能力で?」 

「あたしは『精霊使い』っていう固有能力持ちでさ。悪魔は関係ないけど、精霊はそのおかげで一緒にいられるんだと思う。でも実はよく知らない」

「どういうことだ?」

「いや、だって物心ついた頃から、精霊が一緒にいるのが日常なんだもん。疑問に思わないとゆーか」


 灰の民の村には精霊何人かいるしな?


「最初は母ちゃんと二人暮らしだったな。クララを拾ってきて三人暮らしになったの」

「拾ってって」

「精霊では抜け出せない、魔力の罠というものがあるんです。それに引っかかってしまった時、ユー様が助けてくれたんですよ」

「あたしが四、五歳くらいの時だな。ギリギリ記憶にあるわ」


 考えてみりゃ、物心ついてからほぼクララと一緒なんだな。

 毎日が楽しい。


「そーいや何でクララは素直にあたしん家に来たんだったかな? あたし覚えてないわ」

「ユー様が飼う飼うって言い張ったんですよ」

「うん、捨て犬コントやった覚えはあるわ。じゃなくてさ。他にはノーマル人と暮らしてる精霊はいないじゃん」


 精霊は独立心が強いというか、灰の民の村にいた精霊は皆一人でポツンと暮らしていた。


「『精霊使い』の強制力だと思うんですけどね」

「やっぱ『精霊使い』のせいだったのか。そうじゃないかなーとは思っていたけれども。でも強制の気はなかったな。共生のつもりだったわ。ごめんね」

「いえいえ、いいんです。とても充実しています」


 フニャッとした笑いを見せるクララは可愛い。


「アトムとダンテは冒険者になってから仲間になったの。まだこの一年以内だよ」

「あっしも罠に捕まってたところを助けてもらったんですぜ」

「ミーはボスのトラップに絡め取られたね」

「違うわ、あたしの魅力の虜になったんだわ」


 アハハと笑い合う。

 おっと、何かがおいでなすったぞ。


「これも見たことない魔物だな」

「シンシャドウですね。霊系の魔物で、闇属性の攻撃を使ってきますよ」


 ヴォルヴァヘイムの魔物だけあって、強いことは強い。

 けど特に危険な感じはしない。

 おかしな攻撃はないと見た。

 ぼやっとした感じのそいつとレッツファイッ!

 何か食らったけど雑魚は往ね!


「リフレッシュ! ドロップはないのかー」

「ハハッ、ないのが普通なんじゃないのか?」

「このクラスの魔物と戦って見返りがないのは損な気がする」


 ま、今はサムさんのレベルを優先して『豊穣祈念』ではなく『実りある経験』を使ってるから仕方のない面はある。

 サムさんが聞いてくる。


「ヴィルちゃんは?」

「ヴィルはその後のクエストで仲間になったんだよ。『アトラスの冒険者』で支給される転移の玉の人数制限が四人でさ。五人になると都合悪いしヴィルは自分でワープできるから、メインの戦闘メンバーではなかったんだ。今でもだけど、連絡係や情報収集が本来のお仕事なの」

「でも強いんだろう?」

「まあまあ強いぬよ?」

「ヴィルもレベル九九でカンストしてるね。無装備でも闇魔法撃ってるだけでドラゴンに勝てるくらいの強さはあるよ」

「ほう」


 サムさんもヴィルの強さは大体把握してたと思うけど。


「でもヴィルまで総動員して、必死で戦わなきゃいけないような魔物がもし出たら逃げるわ。逃がしたくないとかの理由で、トリッキーな戦い方する時はその限りじゃないけど」

「ふうん、だから損得の話が出てくるのか」

「そうそう、冒険者はお仕事。損なことはやらない。危ないことはしちゃいけない」

「ヤマタノオロチ退治の勇士にはそぐわない言葉だと思うが、何でもかんでも戦うわけじゃないのは理解した」

「勇士じゃなくて聖女だとゆーのに」


 どうも誤解が広まっているのはいただけない。

 さらに先へ。


          ◇


「出たぞーウィッカーマンだ! ヴィル」

「了解だぬ! 『デスマッチ』を装備するぬ!」


 レッツファイッ!

 ウィッカーマンは逃げようとするが逃げられない! ダンテの実りある経験! あたしの雑魚は往ね!


「うぃーうぃーん!」

「おおお? いくつかレベル上がったようだぞ?」

「リフレッシュ! ウィッカーマンはメッチャ経験値が高いんだ」

「人形系の魔物ということはわかったが、その中でも特殊なやつなのか?」

「特殊ってわけじゃないな。ただ人形系の魔物の中では例外的にヒットポイントが多くて、四人以内でかつ一ターンでヒットポイントを削りきれないと逃げちゃうの。ちょっと前まで絶対に倒せないって言われていたんだ」

「えらく簡単に倒せたように見えるが?」

「変則的なことをしてるんだよ。まずあたしの『雑魚は往ね』は、自分のレベルより低い魔物は一撃で倒せるって効果なの。ウィッカーマンはおそらくレベル九九カンストで、普通じゃ『雑魚は往ね』は効かないはずだよ? でもあたしは固有能力『限突一五〇』のおかげでレベルが一〇〇超えてるから、たとえウィッカーマンだろうとイチコロ。ここまでオーケー?」

「了解だ」

「次にヴィルがウィッカーマン戦の時に装備してる『デスマッチ』。これは戦闘終了まで誰も逃げられないって効果があるんだ」

「こちらもか? 危ない効果だな」

「まあね。ところがウィッカーマンはこっちの人数が四人より多いと逃げようとするから、行動が封じられて攻撃が飛んでこない。安心して『雑魚は往ね』で退治できるっていう寸法なんだよ。これはアトムが考えたんだ」

「頭を使った作戦なのがすごい。さすが世界一の冒険者パーティーの一員だな」

「褒め過ぎでやすぜ、サムの旦那」


 アトム照れてやがる。

 普段アトムは頭脳プレーを褒められたりしないからね。


「ちなみに今のドロップが黄金皇珠と羽仙泡珠だったけど、羽仙泡珠の代わりにスーパーレアで鳳凰双眸珠を落とすことがあるんだ。鳳凰双眸珠は帝国で国宝になってるんだよ」

「ほう? 素晴らしいな」

「価値があり過ぎると迂闊に売れなくてすげえ迷惑なんだ」

「そんなセリフは初めて聞いたぞ」


 あたしは似たようなことよく言ってるけどね。

 もう少しで中央部に到達か。

さて、そろそろヴォルヴァヘイム中央部に到達するはずだ。

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― 新着の感想 ―
シンシャドウってことはシャドウがどこぞの監督によってリメイクされたモンスターか 人気の出ない失敗作っぽいけど
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