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第2034話:メイクと交渉

「皆が私のメイクをやめろと言うのよ」


 交渉も無事終わって昼食をいただいている。

 先ほどの鳳凰双眸珠が一時的に帝国との貿易額が減る補償の意味合いがあることを、くだらないことで愚痴をこぼす目の前の道化みたいな王女はわかっているだろうか?

 とゆーか随分ビバちゃん懐いてきたな。

 つい三時間くらい前にあたしを殺そうと騎士をけしかけてきたこと、覚えてるよね?

 まーメイクが何ちゃらと同じでどーでもいいけど。


「そんなことよりお肉が美味しいね」

「ユーラシアさん。フェルペダで肉というと、鳥の肉を指すらしいですよ」

「ルーネはよく予習してて偉いな」


 可憐な女の子同士の方がいいということだろうか?

 あたしとルーネと道化ビバちゃんでワンセットだ。

 窓さえ開いてりゃルーネは、ビバちゃんの『アイドル』の効果をレジストするのにさほど苦労しないみたい。


 ビバちゃんが誇らしげに言う。


「フェルペダで肉は二本足のものと決まっているの!」

「なるほど、二本足って縛りだと大概鳥になりそーだなあ。でもでっかくて見たことないぞ? 何て鳥なん、これ?」

「既に取り分けてあるのはハト、そちらの大皿のはシチメンチョウね」

「「シチメンチョウ?」」


 ルーネも知らん鳥らしい。

 フェルペダ特産かな?

 しかしハトもでっかくね?


「食用の品種よ」

「食用で飼ってるハトの品種があるのか。フェルペダは鳥の肉文化が進んでいるな」

「そうでしょう!」


 メイクで一見わかりにくいけど、ビバちゃんってテンション高くね?


「ビヴァ様のお友達も同じようなメイクなのですか?」

「友達は……いないの」


 シュンとするビバちゃん。

 王女の友達候補なんて最初から高位貴族に限定されるだろう。

 で、ビバちゃんほど発現度合いの強い『アイドル』持ちでは、相手は崇拝者か端女みたいになっちゃうんだろうなあ。

 『アイドル』のレジストが可能なほど高レベルの令嬢なんてそんじょそこらにいるはずもなし、対等の友達なんてできっこない。


 人間とゆーものは他者との付き合いで磨かれるもんだ。

 ビバちゃんは相当頭おかしいことしてきたけど、考えてみりゃ情状酌量の余地はある。


「しょぼくれんな。あたし達が時々遊んでやるから」

「本当?」

「本当だとゆーのに。うちにはヴィルがいるからね。ここにも自由に遊びに来られるよ」

「ヴィル……その子は何なの?」


 あ、紹介してなかったな。


「悪魔のヴィルだよ。うちの子」

「御主人の家来だぬよ?」

「悪魔?」

「そうそう。ヴィルはワープが得意だから、世界中どこへでも行けるの。たまに連絡入れるよ。ヴィル、ビバちゃんのいる部屋わかるかな?」

「変わった匂いがするだぬ。多分わかるぬ」


 『アイドル』の効果は、悪魔にとっては変わった匂いなのか。


「ルーネはもうビバちゃんと普通に付き合えそうだね?」

「はい。『アイドル』の効果に対抗するコツがわかってきました」

「ルーネは優秀だなあ。最初この部屋を閉め切ってたのはビバちゃんの指示なんでしょ?」

「ええ」

「どーして?」


 何モジモジしているのだ。


「……素敵なおじ様達を私の虜にしたかったから……」

「あんた自身が好き好き光線を発してる場合は、『アイドル』の効果はないみたいだぞ?」

「知らなかったのだもの」


 危険な能力だから、かなり人との接触を制限されてたんだろうな。

 ビバちゃん自身も把握し切れてない部分が多いと見た。


「肝心な時に使えなくて、害ばっかりある固有能力なんですからっ!」

「害ばかりの固有能力ということはないですよね?」

「うん、かなり使える固有能力だと思う。人心を掌握するのが簡単じゃん」


 人の上に立つべき者が持つ固有能力として、かなり優秀なんじゃないか?


「恨みを買うばかりのように思えるのですけれど?」

「大分ヘイトを警戒してるね。いいよいいよ。恨みを買うのはビバちゃんの行動がなってないからだぞ? 『アイドル』のせいじゃない。これから努力すれば首ちょんぱは回避できそうだから頑張れ」

「どう努力すればいいのかしら?」


 教育係がいないのは厳しいな。

 どーすべ?


「……ビバちゃん苦手な人いない?」

「伯母様叔母様達と宰相は苦手ですわ」

「それだ。どうせ今までは逃げ回ってたんだろうけど、苦手な人に教えを乞いなさい」


 近しい人には『アイドル』の効果は薄いようだ。

 また自身の感情も影響するみたいだから、苦手と思っちゃうと効かないのかもな。


「でもメイクに文句言われるんですもの」

「おおう、メイクの話に戻るのか」

「あなた達は『アイドル』の効果がないのに、メイクに関して何も言わないんですのね?」

「そーゆー区別の仕方をしてたとはビックリだよ。いや、あたしはビバちゃんが奇抜な格好してようと利害損得に関係ないし」

「私は可愛らしいと思います」

「そうよねっ!」

「偉大な統治者になったら、メイクの様子から『星涙の女王』って言われるかもしれない」


 もっともビバちゃんが偉大な統治者になるなんて考えられんけれども。


「でもメイクに時間がかかりませんか?」

「二時間くらいかかるわ」

「マジか。時間のムダだわ。二時間メイクに使うくらいなら、首ちょんぱ回避のための勉強した方がよっぽど有意義だわ」

「そそそそそれもそうね」

「大体何で奇抜なメイクしてるの?」

「可愛らしいから」


 他の人と比較しないでよーく見りゃ可愛いと言えないこともないか。

 可愛いは正義だね。

 ルーネが言う。


「時間がかかるのは白塗りでしょう? では目の下の星模様に注力して、白塗りをやめればよろしいのでは?」

「……白塗りはやめようかしら」

「白塗りしなくなったら、変なメイクをやめろと言った連中と交渉するのだ。伯母様達の仰ることを聞いて白塗りはやめました。でもこの星は私の呪われた力を弱めるまじないなのです。お許しくださいと。となれば何て不憫なって、認めてくれるわ」

「ウソじゃないの」

「誰も損しないウソは方便とゆーのだ。違う理由でもいいんだぞ? 星を消すと私とわからなくなりますから、街を視察するのに都合がよいのですとか。良き女王となるための願掛けですとか。重要なのは言い訳じゃないんだ。相手に譲歩したとこを見せといて、自分の要求を通す練習」

「「勉強になります」」

「あんた達は素直だな。ごちそーさまっ!」

どーもあたしの目指す世界の実現のため、ビバちゃんに手を貸さねばならんことになった。

まーいいけれども。

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