表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2018/2453

第2018話:魔物を狩り尽くすことは?

「フローラルなグッドスメルね」

「ほんとだ。メッチャいい匂いする」


 ザコを倒しながらヴォルヴァへイム中央を目指していると、どこからかいい香りが漂ってきたのだ。

 ヴォルヴァへイムは強い魔物が多い、危険なところであることは間違いない。

 怪しいっちゃ怪しいんだが、あたしのカンは警戒する必要はないと告げている。

 何だろう?


「右前方からでやすね」


 アトムが指差す。

 空気の流れの方向からするとそうだな。

 何があるのかな?


「草?」

「シソやミント、タイムの仲間の植物です」

「へー。やつらの仲間か。にしては香りが優しいね」


 ミントやタイムみたいにツンとする主張の激しさがない。

 香りは強いけれども、甘く優しい感じだ。

 ちょっと興味を引かれる植物だな。


「図鑑で見たことのない植物です。新種かもしれません」

「ハーブとしてユースフルね?」

「はい、私も大変有用だと思います。しかし……」

「うん、魔力量の問題があるか」


 皆が頷くが、守衛のサムさんはわかってないようだ。


「おいおい、どういうことだ?」

「あたし達は素材やアイテムだけじゃなくて、各地の有用な植物も探してるんだ。この草はハーブとして使える新種の植物っぽいんだけど、魔力濃度高めのところじゃないと育たない植物なのかな、って心配してるの」

「ほう? 冒険者ってそんなこともするんだな。素材を採取するのはわかるが、植物は意外だった」

「誰でもってわけじゃないけど、あたし達はむしろ使える植物を探すのがメインっていうか」


 ドーラを栄え富ませるために、有用な植物は必須だ。

 特に外国産のものをドーラに導入するなら、見つけてくるのはほぼあたし達の仕事になるからな。

 育てることができさえすれば、ハーブは即戦力になり得る。

 ミントやタイムの類なら、魔力濃度の問題さえなければ育てるのは難しくなさそう。


「たくさん生えてるから、根ごと多めに持って帰ろう。ヴィルは周り警戒しててね」

「「「了解!」」」「了解ぬ!」


 面白いものを見つけたから満足。

 栽培できるのを確認したら、ヴィクトリアさんとこにも持ってってやろ。

 先へ進む。


          ◇


「魔物を駆除すべきだ」


 守衛サムさんが搾り出すように言う。

 考え方はわかる、が?


「魔物による危険はなくなり、ヴォルヴァへイムは使える土地になる」

「うーん、ヴォルヴァへイムは生えてる植物からすると、あんまり肥えてる土地ってわけでもなさそうだけどな?」

「魔物がいなくなるだけで十分だ。本来帝都から北への街道はもっと発展していてもいいはずなんだ」

「まあねえ。あ、デカダンスだ。この辺は人形系が多いみたいだな。先に倒しちゃうね」


 実りある経験から通常攻撃。

 いつものやつ。


「ボス、ガルーダね」

「連戦か?」

「いや、どーだろ? あ、大丈夫だわ」


 その亡骸必要ないならくれないかって顔してる。

 グリフォンと同じで、ガルーダも餌付けできるな。


「よし、食べていいぞ」

「くおっ!」

「な、何だ?」

「ドーラにいるグリフォンも同じなんだけど、でっかい鳥の魔物は人形系魔物の亡骸が好物なんだ。あげると喜んで食べるよ」

「ええ?」

「グリフォンからはエサあげる代わりに羽毛をもらってるの。高級布団の材料になるんだよ。これ、グリフォンにかける専用の櫛」

「常識外過ぎる」


 常識の内だとゆーのに。

 有効利用だとゆーのに。


「……ガルーダの羽毛じゃダメなのか?」

「どーだろ? ちょっと羽を取らせてくれる?」

「くおっ!」

「了解の合図なんだな?」

「そうそう」

「完全に意思疎通できてるじゃないか」


 簡単なやり取りならね。

 櫛で梳いてやる。

 が……。


「……悪くはないと思うけどダメだな。グリフォンに比べると綿羽が随分大きい。これじゃ多分最高級品とは言えない」

「最高級品じゃないとダメなのか?」

「そりゃそーだ。リスクに見合った収入にならなきゃ、やってられないじゃん?」

「全然リスクを感じないんだが」


 気のせいだぞ?

 あたしが言うのは何だけど、ヴォルヴァへイムを舐めちゃいけないよ。

 ガルーダに別れを告げて歩を進める。


「ガルーダの羽毛布団は考えない方がいいとゆーことがわかった。グリフォンの羽毛布団売る時の煽りに使えるかな?」


 類似品のガルーダとはわけが違うぞって。

 わかってもらえなさそう。


「何でもかんでも経験値に変えるわけじゃないんだな?」

「御主人は大きな鳥の魔物は友達と思っているだぬよ?」

「聞き分けのいい子はね」

「ふむ、共存できるケースもあるのか」

「いや、ヴォルヴァへイムから魔物をいなくするのはムリだと思う」

「何故? ユーラシア殿のような冒険者を多数育成して、片っ端から狩りたてればいいではないか」


 しばしば大型魔物に頭悩ませる地に住んでいれば、そう思うのもムリはないが。


「魔力濃度が高い地域ってのは、魔物が自然発生しちゃうんだよ。ある種の魔物を狩り続けて、出現させなくするってことは可能かもしれないけど、代わりに他の魔物が出ちゃうぞ?」

「むう、難しいものだな」

「魔力濃度が高くなる原因をつきとめて、原因を排除することができるならイケるかもな。でも強い魔物が出現するところで魔力濃度をどうにかできるエリアは見たことない」


 『永久鉱山』や魔境で魔物を出なくするって、ちょっと考えられない。

 魔力の大循環説が本当ならなおさらだ。


「ただ冒険者を育成して魔物を倒したり素材やアイテムを回収しようとすることは、個人的には賛成だよ。経済が回るじゃん」

「経済を回そうという趣旨ではなかったのだが」

「経済的に重要な場所になれば、国も保守に予算を割いてくれるってことだよ」


 突然出現する魔物に対する策も、本腰入れて考えてくれるんじゃないの?

 初めて気付いたみたいな顔をサムさんが向けてくるけど、世の中損得で動いてるから。


「聖風樹植林で魔物湧きが落ち着けばベストだけどな。聖風樹自体が有用な木材になるし」

「ユー様、今日の道程はこのあたりまでですか?」

「そうだね。今日はこれで帰ろうか。ところでヴィル、ここってどこ?」


 地図で確認。

 ふむふむ、随分真ん中に近付いたじゃないか。


「よしよし、次回には中央部まで行けそうだね」

「武者震いがする」

「大丈夫だよ。おっちゃん今日も大分レベル上がったからね」


 新しい転移の玉を起動、一旦ホームへ。

確かにヴォルヴァへイムに出る魔物は魔境に近い。

ただどーも魔力の雰囲気が、魔境とは違うんだよな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ