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2017/2453

第2017話:ヴォルヴァへイムに来てまで

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、ユーラシア殿」


 昼食後、ヴォルヴァヘイムにやってきた。

 守衛のサムさんも上機嫌だ。


「『遊歩』で飛ぶ練習してみたかな? どうだった?」

「ああ、相当愉快だな。自由に飛べるということは」

「どらどら、この美少女精霊使いに見せてみ」

「この通りだ」


 おおう、かなりの曲芸飛行ができるようになってるやんけ。

 でも調子に乗ってるとイシュトバーンさんみたいに頭ぶつけるぞ?


「今日もヴォルヴァへイムの中に行くんだな?」

「そうでやすぜ。サムの旦那も行きやすかい?」

「もちろんだ」

「ヴィル、この前行ったとこまで飛んで、ビーコン置いてくれる?

「わかったぬ!」


 掻き消えるヴィル。


「つまり、この前の続きから中央を目指すということか」

「うん。でもおっちゃんのレベル次第だな。ブラックデモンズドラゴンを相手にするかもってこと考えると、レベル最低五〇はないと一回攻撃耐えるのすらキツいんだよ」

「ほう、さすが災害級の魔物は違うな」

「はい。取得経験値の多い人形系がたくさん出ると、サムさんのレベルを上げられるので都合がいいのですけれど。どうしても運になりますねえ」


 ヴォルヴァへイムに人形系の魔物がいることはこの前わかった。

 ただどれほど遭遇するかはわからんのだ。

 人形系ハンターたるあたしの運に頼るしかない、何てね。


 赤プレートに反応がある。


『御主人、用意できたぬ!』

「よーし、そっち行くね」


 新しい転移の玉を起動し、ヴィルのところへ。


          ◇


「トロルね」

「トロルかー」


 この前最後に出た魔物が泣言地蔵だったから、もうちょっと強いのが出現するエリアに入ったかと思ったが。

 案外魔物の強さがアバウトだな。

 魔境みたいにきっちり魔物生息のエリアが分かれているわけじゃないみたい。

 魔力濃度にバラつきがあるのかな?


「結構な迫力じゃないか」

「まあね。低級巨人だよ。クリティカル頻発するから、あんまりバカにしたもんじゃないんだ。しっかりガードしててね」

「ガッカリしてたのは何故だ?」

「ドロップにほとんど期待できないから。なるべく経験値稼ぎたいんで倒していくけど、普段だと低級巨人はスルー案件なんだよね」


 レッツファイッ!

 以下略。


「簡単に倒せるんだなあ。惚れ惚れする腕だ」

「惚れるなんていやん。やっぱ何も落としていかないか。これがサイクロプスみたいな高級巨人だと、絶対に『巨人樫の幹』っていうレア素材をドロップするからまだマシなんだけどね」

「ボス、トロルメイジがいるね」

「この辺は色んなトロルがいる地区かな? ボスじゃないトロルメイジは初めてだね。倒すぞー」


 ザコを駆逐しながらヴォルヴァへイム中央部へ向かう。


          ◇


「しーめーたーぞー。デカダンス二体だ。あれは敏捷性がなくて安全に倒せるから、一番嬉しい人形系だよ」

「プロの言うことは重みがあるなあ」

「うちのパーティーでは真経験値君って呼んでるんでやすぜ。主に姉御が」

「そんな申告はいらないとゆーのに」


 普通に実りある経験からの薙ぎ払い!


「また複数レベル上がったようだ」

「デカダンスを狙って倒せるなら、レベル五〇くらいまでは一番楽で効率がいいよ。もっと上のレベルになるとさらに効率のいいやつを倒したくなるけど、なかなか難しくて。でもヴォルヴァへイムには泣言地蔵がいるから、乗り換えりゃいいよね。ドーラには泣言地蔵がすごく少ないみたいなんだ」

「普通は人形系なんか倒せないじゃないか。衝波属性の武器なんか見たことないって言われたぞ」

「あ、誰かに聞いたんだ? あたしも衝波属性付きの武器なんて、今使ってるこれ『アンリミテッド』のパワーカードと、もう一種類、伝説級の剣てやつしか見たことないな」

「伝説級って。やっぱり倒せない」

「不可能でもないんですよ。ドーラには天才スキル製作者がいるんです。人形系の魔物からダメージを取れるスキルを売ってるんですよ」

「スキルを、買う?」


 帝国ではスキルを買うのは一般的じゃないんだった。

 ちょっと理解しがたいことかもしれないな。

 

「帝国はスキルを覚えると登録しなきゃいけないらしいじゃん?」

「うむ。武器所持と使用が制限されているのと同じ理由だ。犯罪防止のためにある程度仕方のないことと思う」

「ドーラは無法地帯なので、攻撃魔法も売ってるんだよね」

「考えられないな。よく国が治まってるものだ」


 サムのおっちゃん首振ってるけれども。

 いや、スキルスクロールはどこでも売ってるわけじゃないよ?

 でもドーラには魔物が身近であるとゆー現実もあるわけで。


「例えば『ファイアーボール』のスキルスクロールは一〇〇〇ゴールドなんだけどさ。逆に言うと、初級魔法覚えたくらいでいい気になるやつがいない」

「アナーキーにはアナーキーなりのメリットがあるね」

「ふうむ、秩序も違うものだ」

「御主人の刑罰で治まってるんだぬ!」

「ユーラシア殿の刑罰? 何だそれは?」


 ヴィルったら余計なことを。

 聖女のイメージに反するから、あんまり言いたくないのに。


「魔法の葉って、食べるとすっごく不味いの知ってる?」

「知ってる。不味いというか苦いというかえぐいというか。新兵の時に一度訓練で食べさせられたことがあるんだが、あんな体験は二度としたくないな。あとになっても夢に見る」

「ドーラには魔法の葉青汁をデカいコップになみなみと注いで、犯罪者に飲ませるっていう刑罰があるんだ」

「誰だ、そんな無慈悲な刑罰思いついたやつは」

「あたしなんだなー。冗談で言ったらマジで採用されちゃって。『ユーラシアペナルティ』っていう俗称までついてるの。迷惑でかなわん」

「……しかし魔法の葉が不味いことなんて、帝国では騎士や兵士以外にはほとんど知られてないんじゃないかと思う。ドーラでは常識なのか?」

「常識ではないな。だからドーラの首都で啓発キャンペーンやってさ。魔法の葉青汁ってこんなものです、少し飲んでみませんかってやつ」

「ほお?」

「失神する人がたくさん出ちゃった。ある意味あれは伝説のイベントだったから、魔法の葉青汁の恐ろしさは思ったより知られてるのかも」


 どーしてヴォルヴァへイムに来てまで魔法の葉の話なんかしてるんだろ?

 話ってやつはどっちに転がるかわからんものだ。

 先へ進む。

ヴォルヴァへイムにも魔法の葉が生えてるんだわ。

クララがちょこちょこ採取してる。

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