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2012/2453

第2012話:おっぱいコンビの片割れは

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「今日も美人絵画集帝国版が一歩前進しました! やったね!」

『順調だね。どこぞへイシュトバーン氏を伴い、モデルの絵を描いてきたということだな?』

「そうそう」

『何人目だったかな?』

「えーと、たわわ姫とあたしのおっぱいコンビでしょ? アデラちゃん、キリアナお姉ちゃん、ビアンカちゃん、ハンネローレちゃんに次ぐ七人目だね」


 七人ってことは、もう三分の一越えてるのか。

 マジで順調だな。

 ただし実はモデルの数が足りてないのだ。

 アンケートも一〇位より下は比較的年齢が上の夫人が多いみたい。

 イシュトバーンさんが首振ってたわ。

 まったく注文がうるさいんだから、モデル集めに苦労しちゃうわ。


『おっぱいコンビの片割れは君じゃなくて、踊り子のお姉ちゃんだろう?』

「そーゆーとこは流してよ」


 あたしにも夢を見させろ。

 まったく融通が利かないんだから。


『今日はどんな人だったんだい?』

「ニライちゃんだよ。ツムシュテーク伯爵家の御令嬢」

『ああ、覚えてる。スライムの子だな?』

「そうそう、スライムの子」


 スライムの子っていう言い方は何かもにょる。

 言いたいことはわかるけど。


「飼ってたスライムにガダルカナルって名前つけててさ。分裂して二匹になったら、ガダルとカナルって名前も分裂してた」

『どうでもいい情報を挟んでくるなあ』


 どうでもいいのが楽しいんだってば。


『スライムの子はまだ小さいんじゃなかったか?』

「五歳くらいかな。ヴィルとちょうど同じくらいの背の高さだよ」

『そんな小さい子のエロティックアートかあ』

「前回の画集でも幼児はいたからなあ。イシュトバーンさんの守備範囲は広いから、全然問題ないんだ。いや、でも年齢層上の女性はあんまり好みじゃないみたいだけど」

『そうなのかい?』

「実年齢じゃなくて見た目年齢だけどね」


 海の女王やアビーは一〇〇歳超えてるしな。

 見た目二〇代くらいまでならオーケーだと思う。

 奇麗な人でもおばさんって言いたくなる人は多分アウト。

 って何であたしはイシュトバーンさんの好みを把握してるんだ。


「イシュトバーンさんのいい女基準ってのは独特でさ。単に奇麗とか可愛いだけじゃなくって、プラスアルファが必要なんだよ」

『以前も言ってたな。しかしプラスアルファを持つ幼児なんて、かなりのレアケースだろう? それこそ幼女預言者のような』

「ニライちゃんは相当面白い子なんだよね。初めて会った時、死角から木剣持って撃ちかかってきたぞ?」

『ユーラシアなら撃ち込まれようが、どうってことないんだろう?』

「まあ近衛兵を盾にしたから。脛ひっぱたかれて、どおおおおおって唸ってた」

『息を吸うような自然さがひどい』


 決してあたしは悪くない。

 勤務中なのに無警戒に食らうサボリ君が悪いのだ。

 近衛兵長さんも減給処分にしそうだったわ。


『スライムガールが撃ちかかってきたのは何故だい?』

「スライムガールってダンテが言いそうなフレーズだな。兄様の敵だって」

『兄様とは?』

「以前リリーの縁談をぶっ壊せ、貴公子こてんぱんイベントっていうエンターテインメントがあったじゃん?」

『あったなあ、貴公子こてんぱんイベント』

「その三番目の相手、天才剣士ライナー君がニライちゃんのお兄ちゃん」

『ははあ、繋がりがあったのか』

「まー貴族の社会は狭いよね。たまたまニライちゃんに最初に会った時もイシュトバーンさんを連れててさ。即決でモデルとして採用だったよ」


 ライナー君より趣深いとゆーか。

 構い甲斐のある子なのだ。


「今日も木剣持って撃ちかかってきたぞ」

『ええ? かなり恨まれてるんじゃないか?』

「違うとゆーのに。あたしはとってもニライちゃんを可愛がってやってるとゆーのに。最近剣術を習ってるからさ。腕試ししたかったんだと思うよ」

『どうなった?』

「どうもこうも。同じ近衛兵を盾にした。脛叩かれて悶絶してたね」

『またか。近衛兵に恨まれるだろ』

「恨まれる筋合いはないわ。今日はニライちゃんが待ち構えているぞって、ちゃんと教えてやったわ」

『ちょっと待て。警戒してたのに撃ち込まれるのか? 近衛兵って訓練積んでるんだろう?』

「ニライちゃんがすごいんだよね。さすがに天才剣士の妹だけのことはあるよ」


 今からボクデンさんに鍛えてもらったら、ライナー君以上の剣士になれるかもしれない。

 でもニライちゃんは剣術バカになってもらいたくないしな。

 いろんな経験を積んで視野を広く持って欲しい。


「ニライちゃんたら近衛兵を悶絶させてることに満足すりゃいいのに、あたしから一本取れないのが不満のようで」

『ユーラシアから一本なんてムリだろう?』

「一〇年はムリだね」

『ほう、一〇年経てば可能性があると見るのかい?』

「うん。でも一〇年も撃ち込まれ続けると、近衛兵が死んじゃうかもしれないな。近衛兵詰め所殺人事件。ちーん」

『ジワジワと浮かぶイメージがブラックでえぐい』


 アハハ、確かに。


「あと今日はウルリヒさんを領地に送ってきたんだ。フェルペダ行きの用意とか領地改革とかに取りかかると思う」

『今はもう帝国政府の了承があるから、帝国東方領も発展するというわけだな?』

「わけだねえ」


 自分に直接利害関係がなくても、発展に関われるのは楽しい。


『フェルペダへは君も行くんだろう? 明後日だったか?』

「明後日だね。フェルペダの王女様は相当愉快なキャラしてるらしいんだ。今から楽しみで。王女様に会えるのは、多分もう一日あとになるだろうけど」

『君は楽しみが多くていいなあ。不敬罪には気をつけるんだよ?』

「フェルペダの法律は知らんもん。不敬罪っていう罪状があるかわかんない」

『身分制度がある国ならどこにでもあるよ!』

「そーなの? サイナスさんは物知りだな」


 でもドーラには身分制度がないもん。

 王族貴族にどういう態度を取るべきかなんてことを学ぶ機会がないよね?

 ドーラ人は基本的に無礼なんじゃないの?

 あたしだけに限ったことじゃないよ、きっと。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は黄の民のわんちゃんイベント。

不敬罪より不経済が気になっちゃう。

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