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2010/2453

第2010話:ニライちゃんの絵はせくしいぞなもし

「さて、ニライカナイ嬢。そろそろ絵を描かせてもらっていいかい?」

「わかったぞなもし!」

「どんなポーズにする?」


 ふむふむ、木剣を持たせるのか。

 一番ニライちゃんらしいもんな。

 おお、上段に振りかぶった構えか。

 今にも撃ち込んできそうな、気合の入った構え。

 メッチャ決まってる!


「ニライちゃんカッコいい!」

「カッコいいぬ!」

「ありがとうぞなもし!」


 ノルトマンさんも満足げだ。

 イシュトバーンさんが描き始める。

 最初はどうってことないのに、いつの間にか商品価値と周りで見物している男どものボルテージが上がってしまう謎絵だからなあ。

 あれ? ルーネがソワソワしてるな。

 どーした?


「私はどんなポーズで描いてもらえるんでしょうか?」

「あたしも興味あるな。イシュトバーンさん、どうなの?」

「まだ決めてないぜ。皇女殿下が何を求めるかにもよるな」

「ルーネが何を求めるか?」


 イシュトバーンさんったら、えらく難しいこと言い始めたぞ?

 どゆこと?

 この美女絵って深いテーマがあったりするの?


「自分の好きなことをやってたり、信じた道を行く女は美しいんだぜ。オレは美しい女を描きてえんだ」

「おおう、なるほど」

「その通りです!」


 イシュトバーンさんの謎技術は、煩悩だけで作られているわけじゃない。

 信念だか哲学だかに支えられてるんだなあ。

 逆に言うと、どう頑張ってもイシュトバーンさん基準の美しい女にならないモデルは描きたくないとゆーことか。

 単なる我が儘と何が違うのか、よくわからんな?


「ユーラシア殿、少々よろしいですかな?」

「何だろ?」


 近衛兵長さんとノルトマンさんの両方か。

 結構真剣な表情だな。


「先ほどの罠や悪意みたいなのはわかる、という話ですが」

「うん。やっぱいっつも魔物に不意を突かれるかも、罠が仕掛けられてるかもっていう環境に身を置いてると、注意力は養われるね。冒険者の優れている部分だと思う」

「やはり……」

「察知する力は、騎士や近衛兵にも必須なのではないかと思いましてな」


 何を鍛えるかにもよるからな?

 レベルが上がれば多少は補いがつくし。


「でも近衛兵長さんやノルトマンさんならわかるでしょ?」

「ある程度は察知できますが……」

「ユーラシア殿は別格としても、ルーネロッテ様はユーラシア殿が褒めるレベルに達しているのでしょう? ニライカナイ嬢にしてやられたインゴもそうですが、近衛兵にそうした意識が足りてないのではないかと思うのです」

「騎士も同じですな。ランプレヒト団長に知られると叱られそうではありますが」

「ユーラシア殿はどう思われます?」

「むーん?」


 そりゃ危険に対して敏感であるに越したことはないだろうけど、騎士や近衛兵に必須かって言われるとどーだろ?

 いや、見ただけで怪しいやつがピンとくる能力は、警備する人員に必要な気がするな?


「……どこまで身につけておかなきゃいけないかはわかんないな。あたしも帝都に来るまで、冒険者が敏感だって意識したことなかったし」

「何と、そうなんですか?」

「うん。ドーラには警備兵くらいしかいなくて、軍隊がないんだよ。帝国で初めて軍隊を見て、同じ戦闘職でも冒険者と騎士さん兵隊さんは違うなって思い始めて」

「ユーラシアさんは言っていましたよ。同じレベルの騎士と冒険者が一対一で戦えば騎士の勝ちだと。でも違和感をキャッチする力は冒険者が上だと」

「ルーネは皇女っていう身分だから戦闘力が全てじゃないじゃん? 危険を察知することの方が重要だと思うけど、騎士や近衛兵はなー」


 ルーネには冒険者修行はすごく有効だと思う。

 騎士や近衛兵は求められてることが違うからどーだろ?

 考え過ぎじゃないかな。


「レベルを上げるだけでなく察知力の向上も見込めるならば、対魔物訓練を増やすべきだと思うのです」

「ドーラ人なら正しいだろうね。だけど帝国は近場に適当な魔物がいないから、遠征しなきゃいけないじゃん? 費用対効果の問題があるよ。今のままで十分平和なんだから、これ以上税金使う理由を捻り出せる?」

「「……」」

「どうしても必要なら、軽いいたずらを導入すればいいよ」

「いたずら?」


 わかんないか。


「例えばだけど、飲み物にワサビ入れとくとかケガしない程度の落とし穴掘っとくとか、それこそニライちゃんみたいなちっちゃい子に脛叩きさせるとか? そーゆーのを外部の人に委託して、忖度なし無差別でやらせるの」

「ほう、面白いですな」

「油断してるやつはひどい目に遭うのだ。これならあんまりおゼゼかかんないしね」

「私がやりたいです!」

「ルーネのレベルで脛叩きするとシャレになんないからダメだってば」


 何でもやりたがるんだからまったく。

 ……あたしもやりたいな。


「よし、描けたぜ。ニライカナイ嬢、御苦労だったな」

「ありがとうぞなもし!」

「おおう、知らん間に終わっちゃってたか。どらどら?」


 凛々しい系のポーズなのに表情が色っぽいぞ?

 加えて全体から滲み出るえっちさがイシュトバーンさんクオリティ。

 さすがだなあ、大人っぽい絵というわけじゃないのに、何でこうなるんだろ?

 近衛兵長さんもノルトマンさんも目が点になってるがな。


「これは……」

「せくしいぞなもし!」

「ニライちゃんどう? 気に入った?」

「きにいったぞなもし!」


 ノルトマンさんが汚物を見るような目をイシュトバーンさんに向けてるけど、イシュトバーンさんはどこ吹く風だ。

 しょうがないなあ。


「まーノルトマンさんは納得いかないかもしれないけど、これ描かれる方は嬉しいんだよ。誰も文句言うモデルさんいないの」

「私も描いていただいた時誇らしかったです」

「誇らしいんだぬ!」

「……そうですか?」


 そーですよ。

 ニライちゃんも絵をガン見してるでしょ?


「ユーラシア、いつごろがしゅうはでるのだ?」

「まだ決まってないけど、今年中には出すよ。これお礼ね」


 透輝珠を渡す。


「ありがとうぞなもし!」

「ユーラシア殿、スライム牧場へ挨拶と契約に行かねばならないのですが、もう少し決め事が整ってからの方がよかろうと思います。秋になったら伺うとお伝え願えませんかな?」

「りょーかーい。伝えとくね」


 よし、本日のミッションはお終い。


「じゃ、またねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

またしても謎絵炸裂。

今回の画集はオードリーも幼女枠だな。

オードリーはニライちゃんより年齢が上だから、違った感じになるかな?

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