第201話:だってドロップアイテム拾おうと思ったら邪魔するんだもん
「あー一匹逃げられたか、残念。リフレッシュ!」
ふははははっ!
絶好調だ!
敵が金のようだ!
魔境ドラゴン帯で人形系レア狩りを進めた。
もちろんドラゴンや巨人も見るのだが、強い上に乱暴らしいので近付かないようにしている。
相手にしているのはデカダンスとクレイジーパペットのみだ。
今日たまたまかもしれないけど、遭遇率がやたらと高かった。
金欠美少女には神様も味方してくれるのかもしれないな。
換金がすっごい楽しみなくらいには魔宝玉を得られている。
でもレベルが上がってくると、新経験値君が逃げるんだよなあ。
まあ真経験値君は逃げないからいいんだが。
さて、そろそろギルドに戻ってダンに借金を返済せねば。
「ボチボチ帰ろうか?」
「ボス、デカダンスがいるね」
「よし、じゃああれ最後にしよ」
「「「了解!」」」
真経験値君よ、透輝珠と化してくれたまえ。
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! あたしの攻撃! よーしオーケー!
「ドロップは、と……」
見慣れぬ輝きが?
さてはレアドロップかと思った途端、上空から黒い影が!
「レッドドラゴンです!」
ちょっと待てい、まだドロップ拾えてないんだぞ!
今までドラゴンは避けてきたが、散々人形系を倒しまくってレベルは上がってる。
アルアさんの工房で『暴虐海王』を手に入れたので、攻撃を当てさえすれば弱体化させられる。
一度ドラゴンの強さも体験しておくべき。
こりゃ敵わんということなら、クララの『煙玉』で逃げられる。
結論は……。
「交戦する! クララは『精霊のヴェール』、アトムは『アースウォール』、ダンテは『アダマスフリーズ』から入って!」
「「「了解!」」」
レッツファイッ!
ダンテのアダマスフリーズ! レッドドラゴンのファイアーブレス! かなり厳しいダメージだ! あたしのハヤブサ斬り・改! 『暴虐海王』の効果でレッドドラゴンの全ステータスを下げる! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り・改! アトムのアースウォール! クララの精霊のヴェール!
「ダンテ、『些細な癒し』!」
「オーケー、ボス!」
ダンテの些細な癒し! ある程度全員が回復する。あたしのハヤブサ斬り・改! もう一度ハヤブサ斬り・改! レッドドラゴンのカースドウインド! こちら全員のステータスが下げられる。くっ、『暴虐海王』分のアドバンテージがなくなったか? アトムのマジックボム! クララのリカバー!
「クララ、『デバフキャンセル』!」
「了解です!」
ダンテのアダマスフリーズ! レッドドラゴンの爪攻撃! アトムが受けるが、ワイバーンの比ではないダメージだ! あたしのハヤブサ斬り・改! もう一度ハヤブサ斬り・改! しめた! 一発がクリティカルだ。クララのデバフキャンセル! 弱体化を解除だ。アトムの地叫撃! ナイス判断、爪攻撃のために下へ降りて来たレッドドラゴンに大ダメージだ!
「混乱・即死はさすがに効かないか。クララ、『リカバー』!」
「了解!」
ダンテのアダマスフリーズ! あたしのハヤブサ斬り・改! もう一度ハヤブサ斬り・改! レッドドラゴンのファイアーブレス! 弱体化と『アースウォール』、『精霊のヴェール』の効果で全然痛くない。アトムのマジックボム! クララのリカバー! 『アースウォール』の効果は切れたが、かなり弱ってきたぞ。もうレッドドラゴンは飛べない。
「最後だ。全員で総攻撃!」
「「「了解!」」」
ダンテのアダマスフリーズ! あたしのハヤブサ斬り・改! もう一度ハヤブサ斬り・改! レッドドラゴンのファイアーブレス! 痛くないってば。クララのダンシングウインド!
「クオオオオォォォォォォ!」
断末魔の叫び声を上げ、レッドドラゴンがゆっくり地に倒れ伏す。
「リフレッシュ! さっきのデカダンスの魔宝玉を拾って速やかに撤収するよっ!」
「姐御、『逆鱗』取ってきやすぜ!」
「そうだった、アトム偉い!」
『逆鱗』はドラゴンの顎の下に一枚だけ生えているという一種の鱗で、貴重なレア素材でもある。
アトムが毟ってきたのを確認して皆に言う。
「戦闘を避けて帰還する。疲れたからギルドで夕御飯食べて帰ろ」
「「「了解!」」」
ドラゴン帯から出る。
最後思わぬ戦闘になった。
あたしのマジックポイントがなくなったわ。
帰り道でクララに聞く。
「デカダンスのレアドロップ、これ何だと思う?」
わかりやすくゴージャスな金色の塊だ。
ところどころ濃度の違いがあり、それもまた美しさを増している。
「黄金皇珠ですよ。お値段はわかりませんけど、大変な貴重品です」
いくらで売れるか楽しみだなー。
赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度良好ぬよ』
「今からギルドに行くからさ、先に行っててくれる?」
『わかったぬ!』
よしよし、ヴィルが一人でいることにもギルドの人達を慣らしておこう。
「ただいまっ!」
ベースキャンプに戻ってきた。
ドラゴン帯からだと帰りも結構時間かかるな。
一旦転移の玉で戻って、もう一度魔境に来てオニオンさんに報告するのが正しかったかもしれない。
あれ、何かオニオンさんが壁の魔道の装置見てる。
「……ユーラシアさん、ひょっとしてドラゴン倒しました?」
「え? うん。デカダンスがレアの魔宝玉落としたんだけど、拾う前にレッドドラゴンが襲ってきたから仕方なく倒したよ。『逆鱗』は手に入るけど、やっぱ強いから効率よくないね。人形系レアだけ狙った方がいいや」
オニオンさん、ふるふるしてんぞ?
「おめでとうございます! 魔境トレーニング、クエスト完了です!」
……ドラゴン倒しても終わりだったっけ。
「『龍殺し』の固有能力持ち以外で、魔境の魔物一〇〇体を倒す前にドラゴンを倒した『アトラスの冒険者』は初めてですよ!」
「そーなんだ?」
「そうですよ。大変な偉業です!」
いや、コーフンしてるとこ悪いけど、狙って倒したわけじゃないし。
「倒したって言ってもマジックポイントギリギリだったよ? もう一度って言われてもゴメンだし」
「御謙遜を!」
でもレベルが上がれば『雑魚は往ね』でドラゴン倒せるんだったっけな。
頑張ろう。
「新しい『地図の石板』が出ると思うから頻度は減ると思うけど、まだ魔境全然回れてないんだよ。また来るからね」
「お待ちしております!」
四日前、魔境に初めて来た時にはドラゴンは遠いなーと思ったけど、もう倒すことができたなんて信じられない。
皆の助けがあったおかげだな。
あたし達もこの方法論を皆に還元しないと。