表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2009/2453

第2009話:魔物扱い

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「邪魔するぜ」

「やあ、精霊使い君、絵師殿、いらっしゃい」


 昼食後、イシュトバーンさんを連れて再び皇宮にやって来た。

 いつものサボリ土魔法使い近衛兵が言う。


「ノルトマン様とニライカナイ様が詰め所にいらしているよ」

「今日ニライちゃんの絵描かせてもらうんだ。美人絵画集帝国版のモデルとして」

「……幼女絵は想像できないんだが」

「え? 前の画集でも幼女絵はあったでしょ? 『マーシャ』とか『ペペ』とか」


 ペペさんは見かけ詐欺なだけで幼女じゃなかったか。

 知らん人は三八歳だなんて思わないだろうなあ。

 まあ細けえことはいーんだよ。


「画集は実際のモデルの人物を知ってるわけじゃないからね。まだ冷静に見られるというか」

「あ、そーか。あたしは全員に会ってるから、何でこの絵は実物通りなのにえっちになるのかって、不思議でしょうがないよ」

「ニライカナイ嬢も生きがいいだろ? 楽しみで右手が唸るんだぜ」

「ニライカナイ様の絵もエロティックになるのかい?」

「なるぜ」

「なるのかー。イシュトバーンさんの謎技術に仰天するといいよ」


 あたしもえっちなニライちゃんの絵って想像つかないけどな。

 最終的に購買者のニーズに応えた画集になればいいのだ。


「ウルリヒ様は?」

「エッセンミッテの宮殿に置いてきたよ」

「またすぐ帝都に戻っていらっしゃるのかい?」

「どーだろ? 聞かなかったな」


 フェルペダの訪問はあたしも行くから、何か事件が起きるかもしれない。

 と、積極的にフラグを立てにいく。

 フェルペダで大したことが起きなくたって、キールを帝国政府に移管する手続きがいるはずだ。

 領宰ティレスさんと国土大臣に丸投げするにしても、北部から魔物を駆逐して領に繰り入れる方の準備は自分でやりたがりそうだしな?

 だとすると、結構ウルリヒさん忙しいのかもしれない。


「おい、時々様子見にいってやった方がいいんじゃねえか?」

「そうだねえ。ヴィル、たまにはウルリヒさんを観察しといてくれる?」

「わかったぬ!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 ぎゅっとしてやる。

 マジでヴィルがいると助かるなあ。

 さて、そろそろ近衛兵詰め所だが……。


「……サボリ君にプレゼントだ」

「ん? 何をだい?」

「汚名返上のチャンスをあげよう」

「どういうことかな?」

「ニライちゃんが手ぐすねを引いて待ち構えているよ。以前足に撃ち込まれたことがあったでしょ?」

「そ、そういえば何となく殺気が……」

「お先にどーぞ」

「ええ?」


 何を慌てているのだ。

 あたしが先に入ったらサボリ君の汚名返上にならんだろーが。


「また脛払いだろうか?」

「どう来るかはわかんないけど」

「しかし撃ちかかってくることがわかっているなら……」

「いや、ニライちゃんも前よりレベル上がってるから、いい勝負だと思うよ。結構気合入ってるのが察せられる」

「緊張するなあ」


 イシュトバーンさんがニヤニヤしている。

 ヴィルは趣味悪い系の喜びの感情はあんまり好きじゃないみたいなんだよな。

 よしよし、あたしが肩車してやろう。


「もしやられたら骨くらいは拾ってやろう。減給ないし罰金を言い渡された場合の損失補填はできないけど」

「ええ? とんでもない災難だな……」


 すぐに回復魔法をかけてやるとゆーのにワクワク。

 サボリ君を先行させて声をかける。


「こんにちはー」

「ちぇすとおおおお!」

「どおおおおおおお!」


 リアクションを起こす間もなく脛を木剣で叩かれて悶絶するサボリ君。

 おお、ニライちゃんすごい。

 ニライちゃんが謝る。


「す、すまんぞなもし!」

「リフレッシュ! ダメだなー、前と同じとこ打たれるとは」


 サボリ君にまるで進歩が見られない。

 いや、ニライちゃんの進歩が目覚ましいのかな?

 近衛兵長さんが今にもサボリ君に罰金処分をくだしそーな顔してるから、ニライちゃんの方を褒めてフォローしとくか。

 イベントとしてまあまあ笑えたから、サボリ君が罰金食らうと可哀そう。


「ニライちゃんすごいぞ。今日のサボリ君はかなり警戒してたんだよ。なのに綺麗に撃ち込めたね。偉かったからぎゅーしてやろう」


 ルーネとヴィルも混ざってぎゅー。

 ハハッ、ニライちゃん嬉しそう。


「うむ。しかしユーラシアからはいっぽんがとれんぞなもし」

「あたしから一本取るのは諦めなよ。痛いの好きじゃないから、誰かを盾にしちゃう」

「俺を盾にするのはやめてくれよ!」

「これもお仕事の内だとゆーのに」

「ニライカナイ様、ユーラシアさんから一本取るのはムリですよ」

「そうだぜ。ドラゴン倒す方がよっぽど簡単だ」


 納得いってない様子のニライちゃんだが、護衛のプロである近衛兵をダウンさせるって相当だからね?

 ニライちゃんは才能ある。


「レベルの割に撃ち込みがやたら鋭い。踏み出しにためらいが一切ねえよな」

「それなー。間違って撃ち込んでも、あとで謝ればいいやっていう割り切りが素晴らしいわ。あたしも見習いたいくらい」

「あんたは遠慮しろよ! 間違ったら大惨事になるだろ!」

「大惨事になるぬ!」


 アハハと笑い合う。

 近衛兵長さんの表情が和らいだ。

 うむ、サボリ君の失態を誤魔化すことに成功したようだ。


「あちしはいきをころしてまっていたのに、ユーラシアにはなぜわかってしまうのだ?」

「冒険者は突然襲ってくる魔物やアクシデントを相手にしてるじゃん? だから経験を積んでいくと、段々潜んでる罠とか悪意みたいなのはわかるようになるんだよ」

「そうなのか? ぼうけんしゃはすごいぞなもし」

「最近ルーネを連れて魔物狩りすることがあるんだ。ルーネも頑張っててさ、危険を察知する感覚が研ぎ澄まされてきてるのがわかるよ」


 いや、ルーネは異常に成長早い気がするな?

 毎日冒険者活動してるわけでもないのに何でだろ?


「ルーネは何か特別なことしてるの?」

「ユーラシアさんが魔物の気配の探り方を教えてくださったじゃないですか。毎日お父様が帰ってきたり、家の中を歩き回ったりする気配を感じ取るようにしてるんですよ」

「お父ちゃん閣下を魔物扱いしてるとは知らなかった」

「あちしもととさまをまものあつかいすることにしたぞなもし」


 ノルトマンさんが目を白黒させとるがな。

 対照的にイシュトバーンさんは楽しそう。

ニライちゃんが小イベントを放り込んでくれたわ。

割と面白かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ