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2005/2453

第2005話:ブラボーと拍手喝采するほどえぐい

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 帰宅後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「いよいよ時代があたしに追いついてきたようでーすパチパチ」

『今度は何をやらかした?』

「やらかしてないとゆーのに」


 どーもサイナスさんのあたしに対する信頼性は低い。

 とゆーかいつもあたしが何かやらかしてるような言い方をする。

 あたしはあたしの都合を優先しているだけなのにひどい。


「あたしが世界の王になれそうな気配になってきました」

『君世界征服は面倒だって言ってたじゃないか』

「征服と統治は面倒だけどさ。逆に言えば、面倒じゃないなら王様やってもいいわけじゃん?」

『どこまで行ってもユーラシアの言い様は自分勝手だなあ。で、どういうことなんだい?』


 ドミティウス閣下を連れてガリアの王様のところへ行った。

 通貨単位統一についての話をしてきてうんぬんかんぬん。


「……ってことなんだよ」

『ほう? じゃあ帝国ゴールドとギルの統一までは、ほぼ決まりじゃないか』

「喜ばしいことだねえ。で、形式上のトップはあたしがいいんじゃないかって。可憐な少女の方がウケがいいから」

『……君が格好のトップだということも理解できるし、意外と可愛いところがあることも知っているが、何故か納得できないな』

「ええ? 何で? 意外とじゃなくて、絶対的に可愛いでしょ」

『君に期待されてるのは行動力や説得力だろ』

「そーなのかなあ?」


 美少女力は期待されてないのかなあ?

 一番自信のあるところなんだけど。


「ま、とにかく帝国とガリアの間で、ゴールドとギルを統一しようというところまでは合意を得られました。これまだ帝国とガリアの間の大雑把な草案なんだけど、通貨単位の名称はギルにして、今のゴールドの価値になりそう」

『要するに我々からすると、単純にゴールドの言い方がギルに変わるだけだな?』

「そうそう」

『現在のギル通貨圏でも、新ギルの価値が変わるだけか。受け入れやすいんじゃないか? それで貿易が楽になるなら利点が大変大きい』

「まあね。問題は各国の通貨割当量をどうするかってことの方なんだけど」


 勝手に新ギル通貨作った方が金持ちみたいなことになったら、すぐ通貨の価値が下落しちゃう。

 通貨単位統一組織に大国のバックアップと縛りが必要な理由だ。

 この辺は専門家にお任せだね。


『メリットの大きいことは賛成してくれる国も多くなるだろう? 国際関係上、他所と繋がりを持ちたい国ほど通貨同盟に加入したくなるだろうし』


 通貨同盟っていいな。

 名前候補にしとこ。


「サイナスさんの言う通りなんだけどさ。今んとこ絶対に加入してくれそうなのが帝国とその植民地、ガリアとその衛星国なんだよね。問題が天使国」


 天使国が参加してくれないと、ギルを統一する価値が半減してしまう。

 むしろ新ギルと旧ギルの間で混乱するまである。

 あ、ガリアの王様はとっとと新ギルに移行させたい思惑があったから、わざわざギルの名称を残すことに拘ったのかもな。


『天使国……アンヘルモーセンか?』

「うん。アンヘルモーセンにとってみれば、今のままでもテテュス内海のナンバーワン商業国なんだから、変えなくてもいいという考え方の人も多そう」

『通貨単位統一は、商業国にこそメリットが大きいはずだろう?』

「あたしも現場の商人は通貨単位統一に賛成の人が多いと思う。でもまあ保守派はどこにでもいるからね。ガリアの外務大臣さんによると、サラセニア事変以降、アンヘルモーセンの動きが鈍いようなんだ」

『それは何故?』

「首脳部の方針が割れてるからだと思う。方針が割れてるのは『全てを知る者』アリスに聞いてるから本当。天崇教布教を中心にテテュス内海で勢力拡大を望む一派、アンヘルモーセン・ダイオネア・ラージャで地固めをしようという一派、カル帝国及びガリアと友好を深めたい一派の大きく三つに分かれるの」

『地固め派が保守派だな? 要するに勢力拡大派が厄介なのか』

「厄介だね。勢力拡大派は必ずしも通貨単位統一に反対の考えとは言えないんだけどさ。帝国とガリアに主導権を握られることを一番嫌がる派閥じゃん? 言うこと聞かない可能性は最も高いんだよね」

『どうするんだ?』

「ヴィル連れてアンヘルモーセン国内をうろついてればどうせ天使に絡まれるから、やっつけて言うこと聞かせる」

『むしろブラボーと拍手喝采するほどえぐい』


 これに関しては同感だけれども。


『清々しいほどユーラシアらしい』

「あたしが考えたんじゃないんだって。ガリアの王様に文句言ってちょうだい。この前サラセニアで天使やっつけたことが、相当気に入ったみたいで」

『断らなかったんだろう?』

「効果は高そうなんだもん」


 即効性があるとゆーか。

 天崇教が天使の力を当てにしてるから、勢力拡大しようなんて考えるのだ。

 天使をへこませればクシュンとなるに違いない。


「とゆーわけで、三日後にアンヘルモーセンへ行くことになりました!」

『君、近い内にフェルペダも行くって言ってなかったか?』

「フェルペダも順調だと三日後なんだよな。でもその日フェルペダは上陸して挨拶するだけだと思う。アンヘルモーセンは帝国皇帝とガリアの王様の親書を渡すっていう名目なんだ。午前中に行って、午後にフェルペダってことになりそう」

『働くなあ』


 勤労少女だからね。


『黄の民のトラブルの方は?』

「バカみたいな話なんだよね。族長一族が捨てたイヌ七匹が野犬化して、群れで人を襲うみたいな事態になってるそーな」

『君が関わる事件にしては地味だな』

「まあねえ。でもイヌじゃ魔物除け効かないじゃん? ことの起こりはともかく、問題としてはバカにならんとゆーか」

『あんまりやる気ないだろう?』

「わかる? イントネーションがやる気なしだった?」

『いや、イヌはあまりおいしくなさそうだから』


 食べる気はなかったわ。

 あたしはイヌ好きだから、捨てた方が悪いのにわんちゃんが処分されるのが可哀そうなだけだわ。


「黄の民わんちゃんイベントは明後日なんだ」

『安定のイベント仕立てだなあ』

「アハハ。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はウルリヒさんを領地に送る日。

あちこちでイベントが動きそうな気配になってまいりました!

イベントだよイベント。

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