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2002/2453

第2002話:本日のヴォルヴァヘイム探索はお終い

「ごちそーさまっ! いやー満腹だー」


 ドレイクの卵のおかげで豪華な昼食になった。

 たしかなまんぞく。

 守衛のおっちゃんも大喜びだ。


「素晴らしいな。こんなに美味い卵は食べたことがない」

「でしょ? ドーラにはワイバーンっていう似たような飛竜がいてさ。卵は高級食材とされているんだ。ドレイクの卵もほぼ味一緒だな」

「高級食材か。実によくわかるなあ」


 大きく頷くおっちゃん。

 獲れたてだから美味いってこともあるかもな。


「ワイバーンの卵は、上皇妃様にお土産で持ってきたことあるんだよ。そしたらほとんど一人で食べちゃったって言ってた」

「えっ? これ結構量があるだろう?」

「少なくとも二〇人前くらいはあるねえ」


 そういえば上皇妃様とは意外と絡みが少ない。

 まー旦那さんである陛下を失ったばかりだから、派手な活動してちゃいけないという事情もあるんだろうな。

 特に用もないんだが、またリリーと一緒の時に会うかもしれない。

 しょっちゅうヴォルヴァヘイムに来ることになったら、帝国産ドレイクの卵をお土産に持っていくのもオツなものだなあ。


「ところでおっちゃんの名前聞いてなかったな」

「今頃か。サムだ」

「サムさんね」

「サムの旦那、ヴォルヴァヘイム周辺に住んでるってのはどうなんでやす?」

「あたしも聞きたい部分だわ。一〇年に一度くらい結構な魔物出るって聞いたからさ。結構厳しくない?」


 魔物に慣れてるドーラ人だって、魔境クラスの魔物がいるところになんか住まない。

 ペペさん以外は。

 ため息を吐くサムさん。


「帝都と本土北部を結ぶ重要な街道沿いだろう? 商業的には悪くない位置なんだ」

「土も肥えてますよ」

「バット、ウォーターに苦労しそうね」

「いや、実は湧き水には不自由しないんだ。これもヴォルヴァヘイムの影響かもしれないが」

「ふーん、じゃあ問題は突然現れる大型魔物だけなんだ?」

「率直に言うとそうだ。しかしこの前のヤマタノオロチで心が折れちまった者も多い。移住したものも少なくないと聞いた」


 ドーラへの移民に含まれてるのかも。

 魔物に追われて魔物の多いドーラに来たんだったら因果だな。


「聖風樹の植樹により、本当に大型魔物の出現が抑えられるなら朗報なのだが」

「うーん、不確かな策に過大な期待をかけるより、現実的に魔物をどうにかする手段を用意しときたいんだけど」

「というと?」

「ヴォルヴァヘイムは素材を多く拾えるじゃん? 『アトラスの冒険者』の武器所持とヴォルヴァヘイムへの出張を認めてもらえるなら、大型魔物が出現した時にすぐ対応できるんじゃないかってこと」

「おお!」

「でも難しいかなあ?」


 帝国にとっては他国の武装集団がうろつくことになる。

 帝国で役職にも就いてるあたしが個人であちこち顔を出すのとはわけが違うしな。

 治安維持上、ちょっと許容できないと思う。

 『アトラスの冒険者』だって、神話級魔物と戦わなきゃいけないリスクは負えないだろう。

 結論、ムリだ。


「帝国にヴォルヴァヘイムで駐屯する対魔物部隊があって、普段は素材回収するってのが一番よさそう」


 もしデカい魔物が出現しても、すぐにあたしんとこへ連絡くれるなら早急に片付けますがな。

 という考え方なら、サムのおっちゃんをある程度ヴォルヴァヘイムの魔物と戦えるレベルにしとくことは当然の措置だわ。


「まーでも次デカい魔物が出るのって、おそらく随分先の話でしょ? 聖風樹含めて、研究と対策は進むと思うよ」

「うむ、そうだな」


 てかここの土地遊ばせとくのはもったいない。

 どうにかしたいもんだ。

 さて、もう一踏ん張りしますか。


          ◇


「出たぞ出たぞ。知ってる子だ」

「人形系だな?」

「そうそう。泣言地蔵」


 そろそろ今日の探索はお開きにしようかと思ってるところに出ました。

 黄色い人形系レア魔物。

 こいつはデカダンスよりヒットポイントが多いし、いい魔宝玉をドロップする。

 経験値もデカダンスより高いんじゃないかな?


「いつものでいくよー」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」

「何だ、いつものって?」

「あたし達は人形系魔物ハンターだから、セオリーがあるんだよ。こいつも風魔法使ってくるけど、キツいやつが連発で来るんだ。ガッチリガードね」

「心得た!」


 レッツファイッ!

 泣言地蔵のダンシングウインド二連! アトムとあたしがダメージを受ける。ダンテの実りある経験! あたしの通常攻撃! 泣言地蔵を倒した!


「うおおおおお? レベルがいっぺんに上がったぞ?」

「経験値高いからね」

「アンド、ミーがかけてるスキルはゲットする経験値をダブルにするね」

「サムさん、ちょっとこれ触ってみて」


 ギルドカードを触らせる。


「おめでとう。レベル三四です」

「三四? まさか……。今朝までオレのレベルは一〇だったんだが」


 唖然としてるけど事実です。

 ヴォルヴァヘイムの守衛なんだから、レベルは高くあるべきだと思うしね。


「いやあ、驚きだ。噂に違わない」

「いい噂だといいなあ」

「ハハッ。ところでセオリーとは何だ? 人形系を倒すのにはコツがあるのか?」


 レベルが二桁あった元兵士だと、下っ端ってことはないだろう。

 人形系が普通じゃ倒せないことは教わってるか。


「あたしの武器は衝波っていう、人形系にもダメージを与えられる攻撃属性がついてるからやっつけられるんだよ。で、武器とは別に、人形系を逃がさないことにコツがあるの」

「逃がさない? ああ、人形系は逃走する確率が高いと聞いたことがある」

「ヴィル、見せてあげて」

「はいだぬ! これだぬ!」

「カード? 『ド素人』……レベルが一となる? 何だこれは?」

「人形系はこっちのレベルを見て逃げる逃げないを判断してるんだよ。ヴィルにこれを装備させて戦闘開始すると、人形系レア魔物が逃げる確率が格段に減る」

「何とまあ」


 だから呆れるな。


「今日ゲットしたアイテムはうちのパーティーでもらうね。代わりにサムさんにはこれあげる」

「似たようなカードだな。『遊歩』?」

「一人限定だけど、実質マジックポイントの消費なしで飛べるようになるパワーカードだよ。飛行魔法はレベル依存だから誰でも使えるってわけじゃないんだ。でも今のサムさんは十分に使用するだけのレベルがある」

「本当か! ありがたい!」

「ここじゃ危ないから、戻って練習しよう」

権力者から見ると、高レベル者があちこちにいて刃向かわれたら大変って思考になるかもしれない。

まードーラはゆる過ぎる。

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