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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1939/2453

第1939話:刺さるなあ

「……ふうむ、帝都は平穏か」

「全く問題ないね。プリンスルキウスが皇帝になって、滑り出し順調っていったところ」


 衛兵長さん一家レイカパーティーとともに、ギルドからレイノスに向かう途中だ。

 ヴィルがふよふよ飛んでついて来る。

 衛兵長さんはラグランドから帝都に着いてすぐドーラに向かった模様。

 奥さんに多少は皇帝選直前の様相を聞いただろうけど、あたしほど詳しいわけもなし。

 自然と話題は皇帝選についてになった。


「プリンスルキウスとドミティウス殿下が一騎打ちみたいな状況だったんだ。さっきドミティウス殿下と会ったからわかると思うけど、特に遺恨もなくスッキリ片付いた印象だね」

「皇帝選にセウェルス様は出馬されなかったのだろう?」

「しなかった。セウェルス殿下は衛兵長さんと面識あるって話だったっけ。どこぞで療養してるみたいだよ。セウェルスは皇帝選に参加できぬってヴィクトリアさんが言ってたから、相当精神と身体が弱ってたんだと思う」


 レイカが聞いてくる。


「ヴィクトリアさんというのは?」

「先帝陛下の第一皇女だよ。今話に出てたセウェルス殿下の同腹の姉ちゃん。ちなみにセウェルス殿下は、皇帝選時には皇位継承権一位だった」

「皇位継承権一位の皇子が皇帝になれないんですね?」

「あたしもセウェルス殿下に一度だけ会ったことあるけど、昼間っからメッチャ酒臭かったぞ? 言うことも脈絡がなかったし、あんなのが皇帝になっちゃダメだわ。皇位継承権に拘らず新帝を決めようとした先帝陛下は偉かった」

「そうか、セウェルス様は……」


 衛兵長さんはセウェルス殿下と同じ私塾に通ってたという話だったか。

 思うところはあるかもしれんけどな。

 レイカが笑う。


「ユーラシアはどこにでも踏み込むなあ」

「商売に絡むから、色んな人と知り合いになりたいんだよね」


 いや、商売関係なくても色んな人と知り合いたいな。

 何故ならそこにエンタメがあるから。

 あたしの習性なのかしらん?


「ここの小高いところ越えると、ほら、見えるでしょ?」

「ふむ、レイノスか」

「道筋は大丈夫だけど、ちょっと山側に逸れると魔物が出るって話だよ。注意ね」

「魔物……」


 衛兵長さんが何か考えているようだ。


「冒険者は危険な職業だろう?」

「うーん、レイカ達はどう思う?」


 あたし個人としては、ドーラじゃ魔物との戦い方を知らず、レベル低い方が危険くらいの意識がある。


「私の周りの冒険者は、皆ダンジョンに入って魔物を倒し、素材やアイテムを回収してくることを生業としているんだ。依頼を請けて解決する、という冒険者とは違うと思うが」

「うむ、拝聴しよう」

「どういう魔物が出る、どうすれば勝てるという情報が豊富なんだ。無謀なことをしなければ危険だとは思わないな」

「何も知らないルーキーの内は危ないと思いますよ。でもレベルが二桁を超えると彼我の実力差がわかるでしょう? 危ないところにわざわざ突っ込んでいかないですから」

「普通だ」

「ってなことを経験一年にも満たない冒険者がえらそーに言っちゃえるくらいには、ちょろい職業ではある」

「経験一年未満? まさか……」


 相当驚いたみたいだな。

 でも事実。


「ユーラシアでもまだ一年経ってないだろう?」

「もうすぐ一〇ヶ月かな」

「ユーラシアさん、冒険者始めて六〇日くらいでレベルカンストしたって噂がありますけど」

「初めての時はそうだったね。あとでレベル一に戻ってレベル上限が一五〇になっちゃって。改めてレベルカンストしたのはつい二〇日くらい前だな。まさに人生色々」

「非常識だ」

「非常識だな」

「刺さるなあ」


 ハオランの一言だけでくるのに、衛兵長まで乗っかるがな。

 あたしは非常識じゃないわ。

 さて、レイノス西門だ。


          ◇


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ。あ、坊っちゃん」


 ヘリオスさんの紙屋にやってきた。

 そーか、ジンは坊っちゃんなんだな。

 レイカが言う。


「ヘリオスさんはおられるだろうか? 私達のパーティーも全員レベル四〇を超えたので、一度挨拶に伺いたいと思ったのだ」

「呼んでまいります。しばらくお待ちください」


 上級冒険者とされるレベル三〇のラインを遥かに超えている。

 一人前を名乗ってもいいだろうということで、会うことを望んだんだな。

 食堂が空いてなかったから来たなんて言ってたけど、ちゃんとした理由があったんじゃないか。

 ヘリオスさん出てきた。


「これは大勢で」

「父さん、パーティー仲間のレイカさんとハオランだよ」

「こっちは新大使ホルガーさんのお付きの武官ジェスパー衛兵長とその御家族ね」


 握手。

 いい雰囲気だな。

 あれ、何お互いモジモジしてるんだよ。

 しょうがないなあ。


「挨拶しに来たんだって」

「冒険者として身を立てたから結婚するということか」

「「「「えっ?」」」」


 予想外でござる。

 あたしが言いたいセリフなのに。

 ヘリオスさんってこういうこと言う人だったんだな。

 確かにやること早い人っていう印象はあったけど、性急というか何というか。

 レイカの父ちゃんカグツチさんと性根が似てる。


「レイカさんとは恋仲じゃないんだ」

「ハハッ、今決めることじゃないだろう? ユーラシア殿でもいいんだし」

「そーきたか」


 紙と本と新聞に関わる商人で、サトウキビ栽培にも口出せるかもしれない立場か。

 あれ、ジンの嫁って条件的に悪くないな?

 ヘリオスさんが聞いてくる。


「『フィフィのドーラ西域紀行珍道中』の増刷が連続でかかるんですよ。ドーラでの売れ行きも悪くはないんですが、帝都ではそれ以上に売れてますか?」

「表現として『史上最大』が相応しいか『空前絶後』が相応しいか悩むって程度には売れてるみたい。狙い通り」


 具体的な部数は知らんけど。


「ふむ、まだ売れそうですな。『輝かしき勇者の冒険』と『簡単スイーツレシピ集』も近日発売です」

「あっ、レシピ集は帝国で反響ありそう! 宣伝してくるよ」

「こちら刷り上がったものを差し上げますので、よろしくお願いします」

「『輝かしき勇者の冒険』はハリーに一冊あげようね。誰かに読んでもらいなさい」

「ありがとうございます!」


 衛兵長さん一家も嬉しそう。

 さて、レイカ達とヘリオスさんは積もる話もあるだろうから、あたし達はこの辺でお暇するか。

あちこち連れ回したら、衛兵長の奥さんの表情が和らいできた。

いや、慣れないことで疲れたのかもしれんな?

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