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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1926/2453

第1926話:エンタメには熟成とタイミングが重要

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おお、来たか。精霊使いユーラシアよ」


 黄の民のショップにやって来た。

 族長フェイさんが手を広げて迎えてくれる。


「こっちどうなってるかな? フェイさんに聞くのが一番早いかと思って」


 『こっち』には色んな意味を込めている。

 移民が来ている開拓地の様子、カラーズ全体の景気や問題、輸送隊の調子、そして黄の民のこと。

 フェイさんの親族が何か問題を起こした、あるいは起こしつつあって、あたしに相談を持ち掛けるんじゃないかという話が以前あった。

 進展はあったか?

 言葉を選びながらフェイさんが言う。


「……我が黄の民は問題がないわけじゃないが、商売は順調だな」

「ふんふん」


 要するに、以前チラッと聞いた問題はそのまま残されている。

 が、あたしんとこへエンターテインメントとして回されるまでには、もう少し時間がかかるということだね。

 了解。

 エンタメには熟成とタイミングが重要なことくらい、あたしは理解しているのだ。


「輸送隊についてだが、インウェンの次の副隊長を選定しておきたいのだ。誰がいいと思う?」


 インウェンが専業主婦になったあと、とゆーことか。

 これは難しい。

 実際の交渉はもちろん、眼帯隊長をコントロールできる人じゃないといけないから。


「……輸送隊も規模が大きくなってきたから、副隊長は黄の民以外から選んだ方がいいと思うんだ」

「うむ、バランス的にはそうだな」

「輸送隊以外にやることがある人を抜くとすると、灰の民アレク白の民ケス緑の民ペーター、それから青の民の『陽炎』持ちの人が外れるかな」

「読み書き計算のできぬものは論外だろう?」

「それなー。黒の民二人は読み書き計算できるだろうけど、性格が他人と関わるの向いてなくない?」


 眼帯君と平隊員の間に入ってってのがどーも想像しづらい。


「密かに打診してみたが、副隊長の補佐ならということなのだ」

「副隊長補佐ってゆーポジションもありか。じゃあ副隊長は、性格としては赤の民ビルカが向いてる。開拓地移民で名前忘れたな、『訓練生』持ちの人でもいい」

「スティーヴか」

「そうだ、スティーヴ。この二人の読み書き計算能力は知らんけど、これから鍛えてさらに黒の民隊員の補佐があるということならいいんじゃないかな?」


 ビルカは赤の民らしく物怖じしないし、今は輸送隊員として自信を持っている。

 将来鑑定士をやりたいようだから、レイノスの商人と今まで以上に関わりを持ちたいだろう。

 『訓練生』持ちスティーヴは、移民の輸送隊員の中ではまとめ役格だ。

 将来移民の数が多くなってくることを考えると、彼が副隊長なのは納得できるし、タルガのトサ様と親交があったくらいなら眼帯隊長でも大丈夫だろ。

 

「うむ、副隊長も二人体制にするか」

「いいかも」


 正直カラーズ~レイノス間の輸送隊は、隊長よりも副隊長の方が忙しいだろうからな。

 二人体制は合理的だろう。


「米は手探りだが、移民の意見を聞く限り順調と言ってよい。用水路は秋には完成の見込みだ。その後製塩事業に入りたい、が……」


 何だろ?

 不安な点ある?


「塩は足りているのではないか?」

「あ、そのことか。違うんだ。移民が多くなったのに急には生産を増やせない関係で、塩に値上がりと買占めの気配があったの。だから足りない分を海の王国に融通してもらって、物価を抑えてるんだよ」

「魚人か。必需品である塩の生産を握られてるのは愉快じゃないな」

「うん。今はあたしが海の女王と話できてるからいいけど、必需品をいつまでも他所に頼るってよくないじゃん? カラーズと開拓地の分くらいはこっちで賄いたいね」


 頷くフェイさん。

 海の王国との塩の交易量は一定以上には上げない。

 人口がどんどん増えるとなれば、塩は足りなくなるのだ。


「じゃ、またねー」

「バイバイぬ!」


 よしよし、商売と産業はいい感じだな。

 白の民のショップへ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あっ、精霊使いさんいらっしゃい! おーい、ミラ!」


 あたしが来ることわかってたみたいだな。

 ミラ君がすっ飛んでくる。


「会えてよかった」

「お久しぶりです」

「話聞いた? シスター・テレサが今月一杯で『アトラスの冒険者』辞めちゃうんだ」

「聞きました。もう会えないかと思うと残念です」

「シスターからミラ君にプレゼントしたいものがあるって。これ」


 預かった包みを渡す。


「開けてみますね」

「スキルスクロールと手紙か。何て書いてある?」

「今後も充実した冒険者生活であることを祈っておりますと」


 涙声になるミラ君。


「スクロール開いてみなよ」

「はい」


 スクロールの封を切ったミラ君が魔力に包まれる。

 習得したスキルは……。


「盾の魔法『ファストシールド』かな?」

「わかりますか?」

「シスターは地元で、スキルスクロールの生産販売を行う会社を始めたんだ。この魔法のスキルスクロール、緑の民も作ってるんだけど、これはどうやらシスターの会社が作ったものだね」

「テレサさんの会社が……」


 シスターはさすがだな。

 こっちの世界に影響を及ぼさないもの、そしてミラ君の役に立ちそうなものということで、自社生産の盾の魔法のスキルスクロールを選んだんだろう。

 心遣いが泣けるわ。


「シスターも頑張るからミラ君も頑張れっていう激励だろうねえ」

「僕ももっと上を目指します。冒険者としても、白魔法使いとしても」

「あたし昨日チュートリアルルームでシスターに会えてさ。こっち来るの最後だってことだったけど、ミラ君のことは気にしてたぞ。御活躍をお祈りしてますと」

「ええ、きっと今以上に……」

「ブローン君ミラ君のコンビはうまくいってるのかな? ダンは何にも言ってなかったけど」

「まずまずだと思いますよ。のんびりやろうぜってことにしてますが」


 のんびりじゃなくて、『アトラスの冒険者』廃止前になるべくクエスト片付けてレベルを稼いだ方が将来のためなんだが。

 こんなところでパーティーメンバーのミラ君だけに話す内容じゃないしな。

 教育係のダンが『アトラスの冒険者』であるブローン君に言い聞かせるべき。


「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 昼まで時間がある。

 緑の民のショップであたしの魅力爆発なポスターを買っていくか。

 魔王島……は明日にして、魔境行こうかな。

黄の民のトラブルは何なんだろうな?

楽しめるやつだといいけど。

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