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第1918話:一番重要な問題

 魔物から得られる素材は、皆さんあんまり馴染みがないだろう。

 一応説明しておこう。

 これも勉強の内。


「これが『スライムスキン』だよ。医療に魔道に服飾にと、用途の広い素材。ノルトマンさんとこでスライム養殖して生産しようとしてるやつ」

「ノルトマン殿、そうなのか?」

「はい。ついては魔物飼育に関する法整備をお願いいたしたく、いずれユーラシア殿と施政館を訪れるつもりでした」

「ユーラシア君にチラッと聞いてはいるが」

「『スライムスキン』は色んなことに使えるけど、比較的丈夫で魔力をよく通すっていう特性があるんだ。どこかに魔力炉の集中管理施設を作って魔力を引くって時に、その導線材料の有力候補だと思うよ」


 こーゆー話題はお父ちゃん閣下も興味あるだろ。

 あーんどそれとなく個別魔力炉じゃなくて、魔力炉の集中管理の方へ思考を誘導しておく。

 魔力炉の小型化は難しいみたいだからな。

 でも予算を止められてはかなわん。


 ベン君がおずおずと指差す。


「おかしな魔物が出ましたよ?」


 振り返ってみると踊る人形が何と二体。

 ラッキーだなあ。

 ウルリヒさんが呟く。


「人形系の魔物か。滅多に現れないのだろう?」

「うん、ただここは地形のせいか割と多い気がする。でも二体も出るとはツイてるなあ。ルーネじゃ倒せないやつだからあたしが倒すよ」

「はい、お願いします」

「あれはものすごく敏捷性が高くて先手を取れないんだ。雷魔法『サンダーボルト』が二発飛んでくるから、しっかりガードすること」


 皆が頷く。


「ダンテヴィル、わかってるね?」

「ボス、オーケーね」「わかってるぬ!」


 レッツファイッ!

 踊る人形Aのサンダーボルト! ノルトマンさんが受ける。踊る人形Bのサンダーボルト! アトムが受ける。よーし、両方とも逃げなかったぞ。ダンテの実りある経験! あたしの薙ぎ払い!


「リフレッシュ! よーし、黄珠二個ゲット」

「きれいぞなもし!」

「今日の記念に、ニライちゃんとベン君に一個ずつあげようね」

「ありがとうございます!」「ありがとうぞなもし!」


 ウルリヒさんが疑問に思ったようだ。


「普通の『薙ぎ払い』じゃないか。どうして人形系が倒せるんだ?」

「武器の方に秘密があるの。物理攻撃に衝波属性を付与する特注品のパワーカードだよ」

「……なるほど、『薙ぎ払い』なら武器の属性が乗るという理屈か。計算されている」


 ハハッ、ウルリヒさん感心してら。

 人形系を倒すのに一番情熱を注いでたのは、おそらくうちのパーティーだからね。

 ランプレヒトさんも何か疑問があるかな?


「人形系はすぐ逃げるものだ。これほど大勢でいたのに二体とも逃げなかったのは偶然なのか?」

「偶然じゃないよ。ヴィル、おいで」

「はいだぬ!」


 ヴィルに装備させた『ド素人』のパワーカードを見せる。


「レベルが一になる? どういうことだ?」

「相手から見るとこっちのパーティー全員がレベル一に見えちゃうってこと。人形系の魔物は逃げる逃げないを、こっちのレベルで判断してるの」

「何と! つまりこのカードを装備していると、人形系は逃げない?」

「ことはないけど、逃げる確率がうんと減るんだよ。経験値の高い魔物だから逃がしたくないじゃん?」


 いや、あたしはおゼゼになる魔物だから逃がしたくないんだが。


「そんなカラクリがあるとは……」

「これ昔の職人が作った、今では作製法がわからないパワーカードの一つなんだ。多分人形系の逃走対策のために考案されたんだろうと思ってるけど、おいしい魔物を確実に狩るためだったのかもしれない。実際のところはどうなんだか」

「実にいい!」

「魔物に舐められる危ない効果だから、もしこれが手に入っても使用は推奨しない。うちでもレギュラーで使ってるわけじゃなくて、逃げて欲しくない魔物が出た時だけヴィルに装備させてるんだ」

「ストラテジックだ。実にいい!」


 『ド素人』もまた頭おかしいカードの一枚だ。

 こういう変な効果のパワーカードってまだまだあるのかなあ?

 ベン君とウルリヒさんが言う。


「じ、自分のレベルがわからなくなりました」

「恥ずかしながら俺もだ」

「レベルがいくつか上がるとわかんなくなるよね。ドーラではよくあることだから気にしなくていいよ。あたしもドラゴン初めて倒した時、自分のレベル知らなくてあとで確認したわ」

「常識外だなあ……」

「経験値の高い踊る人形が二体、さらにうちのダンテがかけてた『実りある経験』っていうスキルは、戦闘中の獲得経験値が倍になる効果があるんだ」

「つまり踊る人形四体分の経験値を取得している?」

「そうそう。レベルが低いといくつか上がっちゃう。確認してみようか」


 ニライちゃんベン君閣下ウルリヒさんが全員レベル九か。

 いいんじゃないかな。

 ランプレヒトさんもノルトマンさんもレベル上がったらしい。

 でもルーネが悲しそう。


「残念なことに、私はレベル上がらなかったです」

「レベル三〇にもなるとさすがに上がりづらくなるよね。ドーラには誰でも使える対人形系魔物の決定版的スキルが売ってるんだよ。やっぱレベル上げるためには人形系倒すのが必須だから、もし将来欲しくなる場面が来たら教えてあげるね」

「はい!」


 そんな場面は来ないって顔を閣下がしてるけど、口には出さない。

 ルーネの成長を考えてのことだろうか?

 あるいはルーネに反発されるのが嫌だからだろうかニヤニヤ。

 ランプレヒトさんが大喜びだ。


「やあ、ユーラシア君助かったぞ! 有意義な経験ができた。レベルも上がった。言うことない!」

「ニライちゃんもベン君もよかったかな? ドーラの冒険者の魔物退治はこういうものだよ。騎士や兵士の魔物退治はまたやり方が違うと思うけど、基本は同じだと思う。相手をよく見て、有利なポジションを取って、効果的な攻撃で叩こうね」

「はい!」「わかったぞなもし!」


 うんうん、実にいい子達だ。

 今日の経験が役に立つ機会があるかはわからないけど、経験って遊びというか余裕だと思う。

 人生のスパイスだよ。


「一番重要な問題が残っちゃったなー」

「重要な問題?」

「お昼御飯どうしよう?」


 さすがにこの人数だとギルドじゃ迷惑なんだよな。

 ランプレヒトさんが言う。


「我が邸で用意させてある!」

「やたっ! ランプレヒトさんありがとう!」

食料問題は重要に決まってるだろ。

食事事情は食料問題と言わない?

細けえことはいーんだよ。


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